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望月 鏡翠
2025-04-09 00:45:48
1142文字
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日課
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#1677 「シーツ」「じゃがいも」「アンモナイト」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題話
おじさんは仕事をしないで毎日何をしているの。
今思うと大人にそんなことを聞いてはいけなかったけれど、私は当時子供だったのでそんな良識はまだもちあわせていなかった。
父親が仕事に集中するために、夏の間だけ過ごす山中の別荘は、私にとっては退屈な場所だった。友達はいないし、遊ぶ場所もない。家の中でうるさくしてはいけなかったし、山や川は危ないから子供だけで遊びに行ってはならなかった。
地元の人たちが、夏の間だけやってくる余所者に向ける目は冷たかった。
私がそのおじさんに引きつけられたのは、たぶんおじさんもそこの地域の人たちにとって余所者だったからだ。それに両親とも親しかったから、おじさんの家に遊びに行くことは禁じられていなかった。
その日は、母親は物置にしまいっぱなしになっていたシーツを、一斉に洗って洗濯するのに忙しく、布の向こうに薄青い影になって見えたり隠れたりしていた。
到底私のために、川や山まで一緒に行ってくれそうにはなかった。
目の前の道を、おじさんは長靴を履いてリュックサックと帽子とあとは知らない諸々の道具を背負って歩いていくところだった。
川に行く服装だと思った。
「ついて行っていい?」
私は声をかけた。
「お母さんがいいと言ったらね。あとは肌が出ない服をちゃんと着てくること」
そうして、私はようやく川に出かけることができた。
おじさんは仕事しないで何をしているの。そんな疑問が口をついて出てしまったのは、その時である。大人は昼間はみんな忙しいのだ。どうして私を連れて川に来てくれたのか、不思議で仕方がなかったのだ。
怒られてもおかしくなかったと思う。しかしおじさんは笑って、おじさんが何をしているのか見せてあげようと言った。
川にたどり着くと、じゃぶじゃぶと水の中に入って行った。
川床の石を拾い始める。
「これとかいいんじゃないかな」
おじさんが川底から拾い上げたのは、じゃがいもみたいな丸くて白っぽい石だ。他と何か違うところがあるようには全く思えなかった。
いいとか悪いとか、何をいっているのか全然わからなかった。もしかしたら変な人なのかもしれないと私はようやく気がついた。
おじさんは岸に上がってくると、それを大きくて安定した石の上に乗せる。破片が飛ぶかもしれないから、離れていなさいと言われた。言われた通りに少し離れると、ハンマーを叩き下ろす。
石は真っ二つになる。
中には虹色のカタツムリみたいなものが入っていた。宝石みたいにピカピカしていた。
「これ何?」
「アンモナイト。この色が見れるのは今だけだ。空気に触れたら茶色くなってしまう」
そのときおじさんからもらったアンモナイトは、今でも私の宝物だ。
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