望月 鏡翠
2025-04-09 00:13:40
887文字
Public 日課
 

#1676 「顔見せ」「兄ちゃん」「型込機」

#毎日最低800文字のSSを書く/三題話


 食事会が来週に決定した。
 楽しいものではない。もう直ぐ家族になる人と、初めて顔見せなのである。今まで一人っ子としてやってきたのに、急に兄ができると聞いたら、内心は複雑だ。
 確かに、兄弟がいたらなと思ったことはある。でもこの年になってしまうと、家族よりも見知らぬ他人っぽさが先行してしまう。お互いに気を使って気まずいんじゃないだろうか。
 会う前からそれを心配していた。初対面だったら、お互いに適度な距離を保っているから、軋轢が生まれることなく、いい雰囲気になってしまうんじゃないだろうか。
 それでうまくやっていけるんじゃないかと両親が判断して、家族になって、同じ家になってから、相手の生活習慣でどうしても許せないものがあるなんて発覚したらどうなってしまうんだろう。
 両親に気を遣わせたくない。
 俺はガキなりに胃を痛くしながら、食事会の当日を迎えた。ちゃんとした店に行くための服なんて持っていないから、制服を着ていくことになる。
 父になる人には、会ったことがある。父親がどんなものなのかよくわからないけれど、悪い人ではない気がした。部屋が違うからいいや、とも思った。
 新しい家は、子供部屋という括りなんだろうか。二人で別の部屋にしてくれるだろうか。俺は不安がいっぱいだが母は恋人とのデートだからうきうきとしている。
 父がいて、その少し後ろに兄になるのかもしれない人がいる。
 俺たちは食事をした。
 和やかな雰囲気だった。家族になることができるかどうかは、よくわからない。喧嘩はしないと思った。
 家に帰ってから、母親から話があった。食事に行く前はあんなに嬉しそうだったのに、真剣な顔をしていた。俺は何か粗相をしてしまったんだろうか。
「お兄ちゃんのことなんだけど」
「うん」
「ちょっとあなたには合わないかもしれないと思って、作り直すわね」
「え、別にいいよ」
「大丈夫。型込機に詰めればすぐだから」
 別にあのお兄ちゃんでもよかったと思うけど、新しいお兄さんが俺にぴったりだとは限らないわけだし。俺は釈然としないまま、新しい兄と会う予定を決めた。