ritsuritsuka
2025-04-08 21:31:22
1784文字
Public
 

ぱんだゔぁわんこ

転生ヨダ♀とかわいいわんこたち。
ヨダが♀なのは趣味です。

 パンダを拾った。
 ではない、パーンダヴァを拾った。
「パンダの方がよかったなァ」
 ボールを右手のスナップを効かせて投げる。
 風のように飛んでいったモフモフの仔犬が、仔犬らしからぬ跳躍を見せて空中でキャッチした。
 つぶらな目を輝かせ、ドゥリーヨダナのもとへボールを咥えて駆け戻ってくる。尻尾が扇風機の羽のように回っている。
 ほめて、撫でて、もういっかい投げて!!
「あーよしよし、偉いぞ、ビーマ」
 全身で訴える仔犬を褒め、撫で、また投げる。
 ドゥリーヨダナの部屋は一般的な一軒家くらいのスペースがあるので、仔犬が走り回っても余裕がある。それをいいことにドゥリーヨダナとエンドレスボール投げに興じる“ビーマ”の体力は無限で、ドゥリーヨダナの右手の方が先にギブアップしそうだ。
「ビーマ、ビーマよ。妾様そろそろ手が疲れた」
 聞いちゃいない仔犬がドゥリーヨダナへボールと一緒に突っ込んでくる。
 膝の上で踊るようにはしゃぎ続けるビーマを嗜めるように、別のモフモフが短い手でビーマの頭を叩いた。
 それに反応したビーマが標的を変える。
 叩かれたのを構ってくれると判断したビーマはボールを放り出し、そのモフモフ──ドゥリーヨダナはユディシュティラと呼んでいる──に挑みかかった。
 モフモフとモフモフがモフモフしているのをぼんやり眺めていると、床に投げ出していた左手に柔らかいものがそっと触れた。
 見ると、第三のモフモフが、ビーマが放り出したボールを咥えてドゥリーヨダナの手に乗せていた。
……回収してきたのか。おまえは賢いなぁアルジュナ」
 真っ黒な目がドゥリーヨダナをじっと見つめている。なんとなくボールを気にしている気がしたので投げてやると、パッと目を大きくし、即座にボールを追いかけた。
 華麗なフォームでキャッチし、ドゥリーヨダナのもとへ戻ってくる。投げる。取ってくる。また投げる。取ってくる。
 黒い尻尾がぴるぴる揺れている。
…………
 ほめてください、撫でてください。もう一度投げてくれますか?
 そう言われているようで、ドゥリーヨダナは抗えず、アルジュナのためにボールを投げる機械と化した。
 こんなはずではなかったのだ。
 そもそも犬を飼う気などなかった。
 何かを愛でたいなら大勢いる弟たちや友を呼べばいい。前の世と変わらずドゥリーヨダナを愛している彼らを構うのは楽しい。
 だがドゥリーヨダナは出逢ってしまった。
 曇り空の夕方、粗末な箱に入れられ、哀れに放り出された、仔犬の姿のかつての怨敵に。
 ビーマと思われる犬はきゃんきゃんと鳴き続け、アルジュナはじっとドゥリーヨダナを見つめ、ユディシュティラは自らの体で弟たちを温めようとしているように見えた。
 寒い日だったのだ。狙ったように雨が降ってきて、仔犬どもの毛が濡れて、あたりにはドゥリーヨダナしかいなかった。
 ここで見捨てては寝覚めが悪すぎる、おのれパーンダヴァと罵りながらドゥリーヨダナは三匹を連れて帰った。
 他の名も思い浮かばず、そのまま宿敵の名で呼ばれるようになった仔犬たちはドゥリーヨダナによく懐いた。そうなると情も湧くもので、よその里親に出されることもなく、パーンダヴァ三兄弟はドゥリーヨダナの家でぬくぬくと暮らしている。
 また飼い主と遊びたくなったらしいビーマとそれについてきたユディシュティラ、ボールと共に戻ってきたアルジュナにまとわりつかれる。
「パーンダヴァどもを手中におさめたと思えば、んぷ、まぁ、世話くらい、してやっ、ても、ンフ、かまわ……ええいやめんか、やーめーんーかー」
 三匹のモフモフが前後左右からぶつかってくる。特にビーマに顔をべろんべろん舐め回され、ドゥリーヨダナは両手でビーマを引きはがした。
 ビーマは両脇を持たれたまま手足をわちゃわちゃさせ、空中を舐めている。
「ビーマおまえ、犬になるとただの阿保だなぁ」
 しかし馬鹿な子ほどかわいいとも言う。
「もう少ししたらドッグランにでも連れていってやろうか」
 すっかり絆されたドゥリーヨダナが、何もわかっていなさそうな顔の仔犬たちにそんな約束をする。
 そのドッグランにて、カウラヴァ(犬)を連れたパーンダヴァ(ヒト)と再会することになるのだが、それはまた別のお話だ。