傘道
2025-04-07 22:38:57
1515文字
Public ビリイト
 

貴方の××でいたい

znzrの🔫🔦小説です。🔫がまだ郊外いた頃の🔦片想いの話です。
相互さんからおすすめいただいた曲から書きました。
ベッターのバックアップです。

道具や見せ物のはずだった。
地下闘技場から郊外へ場所が変わっただけで道具として変わらない。
それが俺の存在意義だと思っていた。
だから声をかけた少女達に反応しなかった。
期待して突き落とされるのは御免だった。


雨の中、決闘を終えたライトはただ立っていた。
このまま雨に打たれて、消えてしまいたい。
そんな風に思っていたかもしれない。
「おい!ライト!」
遠くから自分を呼ぶ声が聴こえたが無視した。
道具は役目を果たしたのだ。
早く仲間の元に行かせてくれ。
楽にさせてくれ。
そんなことを思いながら雨粒が降り注ぐ曇天を眺めた。
「ライト!」
ライトの肩を機械人が掴み揺さぶる。
虚ろな目をしたライトがようやく空から目を離した。
「こんなとこで突っ立っていたら風邪ひくぞ!帰るぞ!」
帰る?
俺に帰る場所なんてない。
強引に赤いマフラーを付けた機械人がライトを引っ張っていく。
そうして連れてこられたのは機械人、ビリー・キッドの拠点だった。
「とりあえず風呂入るぞ。」
子供のように万歳をさせてビリーはライトの服を脱がせて浴室に連れて行った。
温かいお湯の粒がライトに降り注ぐ。
それがシャワーと気づいた時には、ビリーは優しい手つきでライトの髪を洗っていた。
泡が排水溝に流れる光景が、どこか現実味がなかった。



「下着新品のやつあってよかったぜ。さ、髪乾かすからな。」
自分が渡した下着を履いたライトを目の前に座らせたビリーはドライヤーを片手に持っていた。
…………あつっ。」
ドライヤーの電源を入れると、ビリーがライトを見つけてから初めてライトは声を出した。
ドライヤーが近すぎたのだ。
「あ、悪い。こういうの慣れてなくてよ
ドライヤーを少し離し、焦ったいほどゆっくり深緑色の髪を乾かしていく。
……なんでここまでするんですか?」
ずっと疑問に思っていたことを口にする。
「なんでってお前は俺の大事な後輩だろ?」
後輩。
その短い単語が何を指すのか、思い出すのに時間がかかった。
そうだ、ビリーはチャンピオンで自分の先輩だった。
つまりビリーから見たライトは後輩なのだ。
「先輩は後輩を大切に思ってるんだよ。」
優しく深緑色の髪を撫でた先輩の手に後輩は泣きそうになった。
その言葉が嘘じゃないことが行動や優しさから痛いほど感じた。




それからライトの生き方は変わった。
自分が道具ではなく、ビリーの後輩であると認識するようになった。
話しかけた少女達に反応するようになった。
チャンピオンとしてビリーの背中を追った。
照れ隠しで先輩からパイセンと呼ぶようになった。
構ってほしくて生意気な後輩を演じた。
ずっとこのまま一緒に居るんだ。
心の底からそう思っていたのに
なのにビリー・キッドは郊外から去った。
チャンピオンの証である赤いマフラーをライトに託して。
どうして?
どうして一緒に居てくれない?
どうしてここに居ていいんだと教えてくれたのに去ってしまう?
醜く縋っていたらここに居てくれたのか?
ビリーが居なくなって気づいた。
どれだけ自分の中で大きな存在だったのか。
どれだけ大切だったのか。
そして気づいてしまったグロテスクな感情。


俺が泣いていると気づいて、去ったことを後悔してほしい。
俺と過ごした日々を思い出して、温かさを教えてくれたことがトラウマになっていればいい。
俺と一緒に居て。

それは黒い黒い恋の感情だった。


ライトはビリー・キッドに恋をした。
そして心の底から願う。
彼の一生の後悔になって、心の中で影のように添い続けることを。



『貴方の後悔でいたい。』