傘道
2025-04-07 22:13:29
942文字
Public ハルイト
 

一分一秒でも

znzrの🏹🔦小説です。少し🏹の秘話ネタバレがあります。
ベッターのバックアップです。

一分でもいい。

一秒でもいい。


僕が無敗のチャンピオンと恋人になった理由は知的好奇心だ。
傭兵団のこと。
地下闘技場のこと。
そして現在のカリュドーンの子のチャンピオンのこと。
どんな人物なんだろうと知れば知るほど興味が湧いて。
この気持ちが何なのか?
彼がどんな人なのか?
もっと知りたくなって、とりあえずと言ったら変だけどお付き合いすることにした。
付き合ってから分かったのは彼には可愛い一面があるということ。
うっかり僕の採血後の内出血を見て引き攣った顔。
僕が怒っていると勘違いした瞬間にぎこちなくなる言動。
ロリポップキャンディを二つ咥えるお茶目な姿。
これは恋人になって初めて知ったこと。
でも恋人になって初めて知ったことはこれだけじゃない。



それは僕の体調が芳しくなくて、デートの約束を守れなかった時に知った。
うっかり電話で咳をしてしまって。
大したことはないって強がりも彼には効かなくて。
郊外からバイクかっ飛ばして僕のお見舞いに来た。
強風で乱れた深緑の髪も整えずに僕の家に来て、サングラスを外して僕の姿を見た。
光に慣れるように、ちゃんと僕が生きていることを認識するように何度も瞬きをして。
ふらふらとベッドのそばに来て、僕の手を握りしめた。
「よかった」
そう安堵の言葉を溢したのに、瞳は不安で揺れていて。
傭兵団の件は知っていたけど、この時に「あぁ、この人は失うのが怖いんだ。」って知った。
もう何より失うことが怖くて。
だから僕が死んでしまう失うのが怖くて怖くてたまらないんだって気づいた。
僕としては同じくらい自分も大切してほしいんだけどね。


恋人になった今なら思う。
この人僕が死んだらどうなるんだろうって。
少なくとも未練として僕の中で残り続ける。
発作が起きて、激痛の中でも失う恐怖で揺れるあの瞳が目に浮かぶだろう。
感覚を失っても、彼のことを思い続けるだろう。

だから神でも悪魔でもいい。


一分でもいい。

一秒でもいい。

僕を彼のそばに居させてください。

一分でもいい。

一秒でもいい。

彼が笑顔でいる時間をください。

一分でもいい。

一秒でもいい。

彼が再び大事なものを失う時間を遠ざけてください。