sousakuyamamusume
2025-04-07 19:29:34
957文字
Public 一次創作
 

彼岸警邏隊5

スギナとツルギさん

 射撃訓練場では耳を守るために防音ヘッドギアを装着する。その上、意識を集中させて撃つ。他のものが見えないように。自分の雑念に邪魔されないように。……感情を切り捨てる、なんて真似はできやしないけど。
「あら、随分熱心ね。」
「ツルギさん!?ヘッドギアなしではいっちゃダメですよ!」
「ちゃんと撃つのやめてから入ってきたでしょ?」
 急に声をかけられたもんだから上司に説教するような感じになってしまった。この人、割とそういうところある。気がつくと後ろにいて、気がつくといなくなっている。存在感がうすいわけじゃないのに幽霊みたいだ、なんて思う事もしばしば。
「で、俺に何の用です?」
「部下をねぎらうのは上司の仕事でしょう?」
「ねぎらうって……別に俺が勝手にやってるだけでしょうに……。」
「刑事あがりでよくコールについていけてるわね、という話よ。」
 ああ、それはまぁ、うん……

「旦那は走ってる車のタイヤ狙って撃つとかできるけど俺はそういうのできないんで。だからちょっとでも練習しないとなぁって、それだけです。」
「あら。別にお前にコールになれっていってるわけじゃないのだけれど。」
……?」
 ぴんときてない顔ね。漠然と言い過ぎたかしら。
「バディ組んでるんだから苦手な部分は相手に押しつける図々しさも必要ってこと。」
「それは練習しない理由にはなりません。……旦那に何かあったときにせめて応援待つ間までもたせないといけませんし。」
「真面目なのはいいけど、昼休憩、あと30分で終わるわよ?」
「えっ!?うわっ……ありがとうございます!」
 一度はじめると根詰めてやるのが彼の美徳であり悪徳でもあり。まぁ、真面目なのよね、彼。それでいて折れないだけのしなやかさがある。利用記録を走り書きで済ませて走り去る背中を眺め、1つ頷く。
……さて、私も一回だけやっていこうかしら。」
 ヘッドギアを装着し、一回6発分を装填。的に向かって撃てば、確実にあたる。極限状態になんてならなくても感情を切り捨てることなんて簡単、だけど。
……彼には向いてないわね。」
 わざわざリボルバーを選び、撃つたびにそれが正しかったのかと自問自答する彼にはそんな芸当できやしない。
 だからこそ、私は彼を引き抜いたのだけれど。