えぬを
Public MCU
 

バキサム_20250331

『広報担当がupする候補のプラベ写真、大概空見上げてて、察した一般市民がキャップに助けられた時、お礼と共に「たまには降りてきてあげてね」って伝えてくれて、後日、候補の執務室の窓に降り立つキャップの写真がupされる』って呟いたネタを小話にしました
mob視点のバキサム

なにかに気づいたバーンズ候補が窓に近寄る。そして急くように鍵を外し、窓を開く。開け放たれた窓から、勢いよく風が吹き込んで、執務机の書類が幾つか舞った。ひらひらと舞う書類などおかまいなしに、バーンズ候補は窓から身を乗り出し──そうして身を引いた。招き入れるように、手を伸ばす。
それはまるで、天に救いを求めるようにも見えたし、ダンスを誘う紳士的振る舞いにも見えた。天から笑い声が降って来る。
「俺はプリンセスかなにかかよ」
件の人物には、後者のように思えたらしい。
窓の枠越し、最初に見えたのは足。次いで、膝、太もも、腰、そして胸の星。機械の駆動音ではなく、羽ばたきが聞こえたようだった。
降り立ったのはキャプテン・アメリカその人だ。ゴーグルを額に押し上げ、笑う。覗いたのは人の良さそうな青年の顔。
陽の光が背に負った丸い盾越しに差し込む──夢のような光景だった。
「ようこそキャプテン、狭い執務室だが歓迎する」
キャプテン・アメリカにだけ見せる顔で、バーンズ候補が笑う。
瞬時の判断ですぐにセルフォンを取り出し、動画を撮り続けているアシスタントが、双璧を成す二人の人物を見て感嘆のため息をついた。
広報担当として、バーンズ候補の日々をSNSに掲載するのはほぼ日課だ。重要な日々のスケジュール、後援者や一般市民との触れ合い、それと共に時折掲載するプライベートな写真。
そのどれもが空を見上げているものだと気づいたのは、バーンズ候補のSNSをフォローしている一般市民からの指摘だった。
叱咤激励に、批判の声、誹謗中傷など、様々なコメントには全て目を通すようにしている。その中で、プライベートなワンショットに添えられた、一般市民からのひとこと。
『彼を探しているの?』
〝彼〟が誰を指すかなど、バーンズ候補をよくよくに知るものなら誰もが予測がつく。
そこで初めてバーンズ候補のプライベートショットが、空を見上げているものばかりだったことに今更に気づく。
──メモ。空を見上げてばかりいる写真だけでなく、他の写真も撮らなければ、二人がいらぬ誤解を受ける。
彼らはそれぞれの立場でこの国を守ると決めて、それぞれの職務に必死に邁進している。〝相棒〟や〝友人〟以外で明確に定義づけできるほどに、彼らのプライベートの関係性を我々は知らない。
けれど、バーンズ候補が空を見上げて誰かを探しているように見えたのなら──そうなのだろう。
そうして、それに気づいた誰かが、降りてきてほしいと伝えたのなら──そうなのだろう。
バーンズ候補はキャプテン・アメリカが、候補自身の政治の道具として扱われることをよしとしない。当たり前だ、キャプテン・アメリカの立場からも、候補と親しいことをメディアに政治的に報じられることを、望んではいないだろう。彼らの過去から現在に至る関係性は別として。
兎角、この国は〝ヒーロー〟であるが故のしがらみが多い。
眼前の光景は、白昼夢でも見ているかのような、美しいものだった。隣のアシスタントが、別のセルフォンでシャッターを切る音で我に返った。
対立候補からのバッシングも予測できる。でも、これほどの美しい光景を共有しないのは勿体無い──と思うのも、仕方ないと思うのだ。
けれど、結局のところ、後日SNSに掲載したのは、バーンズ候補が差し出した手を取った、赤いグローブだけをクローズアップした写真のみ。
その写真は、広報を始めてから、最も多くのハートが舞った。
アシスタント曰く、あの天の使いが舞い降りたかのような動画は、後日バーンズ候補に請われ、データを共有したらしい。
〝サムには内緒な〟と言って、セルフォンに鍵付きで大切にしまわれている上に、アシスタントのセルフォンからはデータを消すよう命令されたという。
──メモ。候補は存外独占欲が強い。