えぬを
Public MCU
 

バキサム_20250330

デキてないのに誰よりも距離が近いとか、デキてるくせに「ほんとに付き合ってんの?」みたいな距離感が大好きで…
バキサムそれぞれがロマンス報道出た時の反応
女性のmobの影がありますが、全く本筋に絡まない小話です

久々の再会は、いつもの憎まれ口から始まった。先日の戦闘でサムが怪我を負ったのは、少しの油断が原因だった。〝キャプテン・アメリカ〟の活躍は勝手にニュースで報道されるし、それよりも先に、情報はSNSに流れていく。それこそライブ映像で。
だから、久しぶりの再会で、バッキーがサムに対して『イザイアが不在の時は、俺が訓練の代行をしてやろうか』、などと、苦戦した戦闘に対しての揶揄いを口にするであろうことは、サムには半ば予測がついていた。
その言葉の中に過分に含まれた、負傷したことに対しての懸念が透けて見えている今では、バッキーの憎まれ口にいちいち腹を立てることもない。
サムが聞いてほしいと思っていたのは別のことだったし、バッキーが〝本当に聞きたいこと〟に触れたのなら、しっかりと説明するつもりでいた。
だから、バッキーが過日の戦闘におけるサムの油断を叱咤したのち、聞きたいことを聞いてくるのを待つ方向へ舵を切った。そもそも、こういった手合いの話題に関しては、バッキーの方が圧倒的に多い。
──最初は秘書だったか。議員の娘に貴族のご令嬢。女優もいた。
バーンズ候補に係る、色恋の噂だ。
色に名高いハンサムな議員候補は、過去も含め、兎角話題になりやすい。結局のところ、バッキーと華やかな話題となった女性たちのことごとくが、メディアの無責任な話題の的にされただけのことだったのだが。
秘書は既婚者でパートナーに夢中だったし、議員の娘は仕事を愛するハイキャリアのインディペンデントで、貴族のご令嬢には恋人がいた。女優に関してならば、同性パートナーとの婚約を、先日カミングアウトしたばかりだ。
これらについての報道が出た時点で、サムはバッキーの口から直接、関係性の否定と裏付け情報として、懇々と説明を受けた。
『誤解するなよ、あれは仕事上の付き合いで』
幾度その言葉を聞かされただろうか。そもそもサムは、バッキーと女性たちとの関係性を疑っていないし、ゴシップ自体を信じていない。そもそも、噂自体の真偽がどうこうなど、バッキーに問い正してもいない。
だから、自分のロマンス記事が報じられた時に、なるほど、バッキーが焦燥に駆られてサムに説明に至るという心情が、若干だが理解できる気がしたのだ。
けれどサムからすれば、噂の真偽を尋ねられる前から、進んで否定の言葉を伝える行為自体に抵抗があった。
だから、もし、バッキーがゴシップを耳にし、サムに問い正してくるようなことがあれば、素直に否定しようとしていたのだが。
しかしバッキーは、キャプテン・アメリカの初ロマンスが報じられてから初めて顔を合わせたにも関わらず、戦闘に対しての忠告のみをしてきたのだ。
トップニュースで流れた映像は、サムと女性が抱き合う姿だ。どうということはない、プライベートで出かけた先で、転倒しかけた女性を支えただけだ。女性の顔は映されていなかったが、さぞ迷惑をしていることだろう。個人が特定されるような動きが広がれば、防犯カメラを探して、前後の経緯を踏まえた上で、否定するつもりでいる。
そもそもキャプテン・アメリカのロマンスを報じたニュース紙はゴシップで有名だったし、雑な写真の真偽を信じるものはほぼいないと推測していたのだが。
バッキーは、所用でウィルソン家を訪れていた際に、たまたまその報道をテレビで知ったらしい。
サラは職務以外で報じられた弟の雑な偽ロマンスに失笑したらしいのだが、バッキーはそうではなかったらしい。
『バッキーったら、淹れてあげたコーヒーのマグ、落っことしたのよ』
「は?」
──んな古典的な。
『そのあと茫然としたままテレビ凝視してた。あれ、意識飛んでたんじゃない?真っ青な顔してたし』
セルフォンのインカメラ越し、サラは笑いを堪えて、当時の状況を話す。
『AJとキャスが話しかけても上の空。しまいには、』
「しまいには?」
『家の柱に激突してたわ』
そこまで伝えてサラは耐えきれなかったらしく、目に涙を浮かべて笑い出した。サムからすれば、どういった顔でそれを受けとめるべきか迷い、結局片眉を上げるに留めた。
『あれ、気に入りのマグだから、同じもの探してちょうだいね』
サラは、〝二人で〟と念押ししてセルフォンを切った。
「体術でなら、俺もイザイアに負けてない。なんなら狙撃についても」
「なぁ、バック」
サムはなおも言い募るバッキーの言葉を遮った。少し目を逸らしながら話していたバッキーと、ようやく目が合った。
「ネットニュースに載ってるゴシップの方を信じるのかよ。俺の言葉じゃなくて」
そうしてサムは、自分の額を指で突いて見せた。
バッキーの額には、バンドエイドが貼られている。バッキーは気づいただろう、サムが、そのバンドエイドの意味を知っていることを。
どうやら柱に思い切りぶつけたらしい額は、存外傷が深いらしい。超人兵士を負傷させるとは、ウィルソン家の柱は存外丈夫だ。
バッキーは指摘され、眉を顰めた後、天を仰いで──下を向いた。
……お前の口から聞かされる方が嫌だろ」
絞り出すような本音を聞いて、サムはやっと肩の力を抜いた。先日サムが負傷したバンドエイドを貼り付けている場所と、バッキーが貼り付けている場所が同じなのは如何ともしがたく、結局のところ、サムは笑ってしまった。
……とりあえず俺らが今しなきゃいけない超優先的最重要任務は、マグカップ探しかな」
「サラは俺の味方じゃないのか……
バンドエイドを貼り付けてくれたであろうサラからの密告に、バッキーもまた苦笑した。
「二人で買い物行って、パパラッチに写真取られてこようぜ、バック」
……どんな記事出ても俺は否定しないからな」

その数日後、手を繋いだバーンズ候補とキャプテン・アメリカが仲良くショッピングする報道が流れた。サラは新調されたマグで、美味いコーヒーを飲みながら、そのニュースを平和に眺めるのだった。