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haru_haru0704
2025-04-06 16:57:44
4182文字
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愛しの鈍感野郎様
哥舒臨&カカロ×忌炎 全年齢
超絶鈍感な忌がなかなかアプローチに気づかない話
哥舒臨とカカロは恋敵である。
しかし同時に、協力関係・・・というか、苦労を分かち合う戦友のような関係でもある。
お互いが恋敵であると発覚した当初、彼らは険悪な雰囲気になった。それがなぜ、戦友と呼べるほど親密な関係に変化したかというと──
彼ら2人が恋情を向けている相手、つまりは忌炎という男が、あまりにも鈍感に過ぎるせいであった。
*
破陣基地内の、カカロ用に貸し出された部屋。
そこで哥舒臨とカカロは、夜な夜な忌炎についての密談を交わしている。
「今日も失敗だ」
哥舒臨はそう言うと、ウイスキーで満たされたグラスを手に取り、ちびりと舐めるように飲んだ。
カカロも同様にウイスキーを飲みこんで、「そうか」と頷く。
「今日は壁ドンをやってみようとしたんだが」
「かべどん」
「知らんのか?相手を壁際まで追い込んで、こう・・・顔の横に手をつくんだ」
哥舒臨は空中に右手を突き出し、カカロに説明した。
カカロは「なるほど」とまた頷く。
「で、だ。それをやろうとしたんだが、そもそもあいつ・・・」
哥舒臨はウイスキーをちびちびやりつつ、昼間の出来事を話し始めた。
昼間、忌炎と哥舒臨は倉庫の物資の確認をしていた。数人の兵と連携し、どこに何がどれだけあるかを整理していく作業だ。
2時間ほど地道に整理を続け、作業が完了した後。哥舒臨にとって都合のいいことに、忌炎と2人きりになったのだ。
これ幸いと、哥舒臨は忌炎にアプローチを仕掛けた。
「忌炎」
「はい?」
忌炎は壁から1メートルほど離れた場所に立っている。
まずは壁際まで追い詰めて、それからドンとやってやろう。それが哥舒臨の目論見だった。
彼は無言のまま、忌炎に近づく。
人間というものは普通、他人がどんどんと近づいてきたら思わず後ろに逃げるものだ。
・・・が、残念なことに忌炎は普通ではなかった。
「・・・?哥舒臨さん?」
お互いの吐息が肌に触れるほどの距離になっても、忌炎は一歩も退かなかった。
なんだこいつ。ちょっとは逃げろよ。
仕方なく哥舒臨は予定を変更し、そのまま口説くことにした。
「お前の瞳は美しいな」
「はあ・・・急にどうしたんですか?」
「美しいものを美しいと言って、何が悪い」
予定は変更せざるを得なかったが、その言葉自体は紛れもなく哥舒臨の本心だ。
彼は一切茶化したりせず、至極真面目に、本気で、忌炎の瞳を褒めた。
「お前が操る青龍のように、怜悧で壮麗な瞳だ。こがね色に一筋の赤が差しているのも良い」
「・・・・・・」
忌炎は無表情のまま黙り込んだ。なんだかあまり響いていなさそうだ。
そんな事あるか?この距離で、この内容だぞ?
脈ナシにしたって、もうちょっとなんかあるだろ。近すぎるって嫌がるとか、急に褒められて気持ち悪いって言うとか。
やがて哥舒臨は根負けし、目を逸らしてしまった。
「・・・それだけだ」
「・・・という感じだ」
「さすが忌炎だ。手強いな」
カカロは苦笑しつつ、つまみの豆を口に放り込んだ。咀嚼し、口の中に残る塩気をウイスキーで洗い流す。
哥舒臨はカカロと同じ動作をしつつ、彼に尋ねた。
「お前はどうだ?今日は何かやったか?」
「俺は・・・忌炎が好みそうな味の菓子を作って渡した」
「ほう、菓子か。いいじゃないか。で、結果は?」
哥舒臨が尋ねると、カカロはハァと溜息をついた。
「健康にいい薬草やらをもっとたくさん入れたらどうだと言われた。これ以上入れたら漢方薬の味になってしまう」
「漢方薬味の菓子・・・」
哥舒臨は舌を出し、げぇっという顔をしてみせる。
「漢方薬味なのは、漢方薬だけで十分だ」
「まったくだな」
2人は揃って溜息を吐いた。
忌炎という男はまったくもって、強敵である。
*
とある夜。哥舒臨とカカロはまたもや密談を交わしていた。
「今日も失敗だ」
「今日は何を?」
もはやお決まりのフレーズから始まる会話。
哥舒臨は今日のアプローチと、その結果について話し始めた。
「あいつ、いつも仕事に走り回っているだろう。だから・・・」
昼間、哥舒臨は忌炎の仕事の何割かを自ら引き受けた。
途中に数年のブランクがあるとはいえ、元々将軍を務めていた身だ。やろうと思えば、どんな仕事だってできる。
「ほら、終わったぞ」
忌炎の前に、処理を済ませた書類をバサリと置く。
どうだ。さすがにこれは何かしらの反応があるだろう。
「ありがとうございます。・・・あの、もしかして俺に何か不満がありますか?」
忌炎の予想外の問いに、哥舒臨は眉を顰める。
不満があるかだと?
「・・・まあ、あるにはあるな」
俺のアプローチに全然気づかないところとか。
「やっぱり・・・俺が至らないせいですね、すみません」
「ん・・・?」
待て。俺は今、何に対して謝られている?
今までアプローチに気付かなかったことに対して?いやそんなわけがない。
だったら、何に対してだ?
しかめっ面で黙り込んでしまった哥舒臨を見て、忌炎は申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「ですが、あなたに将軍の座をお返しするわけにもいきませんし・・・」
「・・・は?将軍の座?今更そんなもの不要だ」
「え?じゃあどうして俺の仕事を奪っていったんですか?将軍に返り咲きたかったのでは・・・」
困惑する忌炎を前に、哥舒臨は盛大な溜息を吐いた。
「・・・という感じだ。誤解を解くのに必死で、口説くどころではなかった」
げんなりした様子の哥舒臨を見て、カカロは軽く笑った。
「まあ、今回ばかりは仕方ないかもしれないな。あいつは以前から、自分は将軍にふさわしいのかと自問自答していたようだったから」
「ふん、真面目なことだ。・・・それはひとまず置いておいて、次のアプローチをどうするかだが・・・安直に贈り物でもしてみるか?」
哥舒臨は、皿に置かれたつまみを口に放り込む。
今日のつまみは、クラッカーにカカロ特製のチーズソースをディップしたものだ。なかなか美味い。
「俺は前に、花束を贈ったことがある」
「ほう。どうだった?」
「花びらを毟られた」
「・・・は?」
哥舒臨は思わずカカロの顔を見た。彼は悲しげな表情を浮かべている。
いや、それはそうだろう。贈った花束の花びらを毟られたら、誰だって悲しいに決まっている。
「忌炎は、『ありがとう。この植物の花びらは薬になるんだ』と言っていた」
「ああ・・・なるほど・・・」
忌炎が花びらを毟った理由はわかった。わかったが、さすがに医学バカが過ぎるのではないだろうか。
割合おだやかなカカロだからきっと何も言わなかったのだろうが、仮に哥舒臨が同じ立場に立ったとしたら、それはもうブチギレること間違いなしである。
「お互い、奴には苦労するな・・・」
「ああ、まったくだ・・・」
***
「哥舒臨、聞いてくれ」
今夜の2人の密談は、カカロのそんな言葉から始まった。
大抵いつも哥舒臨の方から話し出すのだが、カカロからとは珍しい。
「何があった?」
哥舒臨がそう尋ねると、カカロは重たげな口を開いた。
「・・・今日、忌炎に告白した」
「何!?」
驚いて目を見開く。
不思議と、先を越されたと妬むような感情は湧かなかった。むしろ、よくやった!と褒め称えたい。
「それで、どうなったんだ」
結果が気になり、カカロを急かす。
彼の雰囲気からしてあまりいい結果ではなさそうだが・・・もしや、振られてしまったのだろうか。
「・・・どうやら告白だと認識されなかったようでな・・・俺も好きだ、と明るく返された」
「恋愛的な意味で、と言えばよかったんじゃないのか?」
「まあ、それはそうだが・・・その一歩が踏み出せなくてな」
カカロは自嘲の笑みを浮かべた。
彼がどうしても踏み出せなかった理由は、哥舒臨にも痛いほどよくわかる。
その一歩を踏み出してしまえば、もう後戻りはできない。しかも、忌炎がどういう反応を返すかまったく予想がつかないのだ。
先の見えない状態で取り返しのつかない行動を取るというのは、とても恐ろしいことだ。人の上に立つ者にとっては、特に。
「・・・・・・」
哥舒臨は腕を組み、目を閉じて考えた。
これからどうすべきだろうか。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・なんだかもう、考えるのが面倒になってきたな。別に戦でもなんでもないのだから、失敗してもよくないか?
ぱち、と目を開く。
「カカロ」
「ん?」
「今から2人で忌炎を襲いに行くぞ」
「襲う?あまり乱暴なことはしたくないが・・・」
「あいつが本当に嫌がったらやめる。俺とて、無理強いしたいわけじゃない。今夜、潔く片をつけようじゃないか」
「・・・そう、だな。俺たちがどう思っているのか率直に言わないと、忌炎には一生伝わらなさそうだ」
──その10分後。
忌炎は、2人に「好きだ」「恋人になってくれ」「キスしたい」「抱きたい」などと矢継ぎ早に言われ、あわあわとしていた。
「ま、待ってくれ!どうしたんですか2人とも、そんないきなり・・・!」
彼の頬は紅潮しており、どうやら満更でもなさそうだ。
哥舒臨とカカロは、好ましい反応を初めて得られた喜びに口角を上げた。
これは、いける。いけるぞ。脈アリだ。
「ははは、いきなりだと。本当に気づいていなかったんだな」
「ああ・・・だが、今気づいた。そうだろう、忌炎?」
「えっ・・・あっ、ええ、と・・・」
忌炎は2人の顔を交互に見た。
勝ち誇った笑みを浮かべる哥舒臨と、嬉しそうに微笑むカカロ。どちらも笑ってはいるが、瞳には捕食者のギラつきを湛えている。
「「忌炎」」
2人は忌炎の名前を呼んだ。
熱のこもった視線、情欲を孕んだ声。いかに忌炎といえども、ここまで来て何も察せないほど鈍感ではない。
彼は思わずその場から逃げようとして──しかし、あっさりと捕まった。
「観念しろ」
「逃げないでくれ」
哥舒臨とカカロに両脇を掴まれ、そのままベッドへと連行される。
ぼふっ!と勢いよく押し倒された忌炎は、「あ、あの、」と何かを言いかけたが、口づけによって封じられた。
「んぅ・・・っ!」
口内を蹂躙されながら、忌炎は思う。
駄目だ、これ。もう逃げられない。
──翌日、忌炎は仕事を休んだ。
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