Adaps_A
2025-04-06 00:24:16
781文字
Public ダングリのはなし
 

オーナーの意向とダングリ×光のはなし


アルカディア・ソサエティという場所には、その特性上、医務室が多く設置されている。
観客用の大規模なものから、闘士専用の小さな部屋まで、いくつも。
だからこそこの部屋には誰も来ないし、何があっても助けは来ないだろう。

「オーナーの意向でなァ」

闘士用の健康診断があるから一緒に行こうぜ、と誘った張本人が、本当に申し訳なさそうにしながら後ろ手に鍵をかける。
カチ、と鍵がかかって、どこか遠くから機械の駆動する音が聞こえた。

「アンタには悪いが……

ダンシング・グリーンは、驚くほど静かにこちらの手を取った。
ゆっくりと指を絡めて、それから耳元でささやく。

「オレの退職のために、抱かれてくれ」
「は?」

今なんつったこのパーティ野郎。
オーナーの意向で、ダンシング・グリーンの退職のためには、彼は自分を抱かねばならない。
信じがたい意向だが、彼の真剣な様子から察するに、事実なのだろう。
これは、「筋書きを変えるな」という、オーナーからの脅しということか。
口を開こうとした瞬間、視界がぐるりと回転する。
絡めた指を引かれて一回転。
腰に手を添えられ、ワルツのようにもう一回。

「イヤってんなら、抵抗してくれ」

くるくる回って、最後にとん、と肩を押される。
たったそれだけで身体はベッドに沈む。
恭しく靴を脱がせるダンシング・グリーンが、ちらりと部屋の隅を見た。
目線だけでそちらを見ると、「特に何もない」エレクトロープの壁だけがあった。
エレクトロープというのは、万能の素材らしい。
自分には何もないように見えるが、おそらく、そこに「何か」があるのだろう。
静かに息をつき、手を伸ばす。
覆いかぶさる彼のサングラスを取り、笑って見せる。

「いいよ、きみなら」

きょとんとした顔が存外かわいくて、オーナーが選んだのが彼でよかったと思った。