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白雨
2025-04-05 23:05:02
2569文字
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EAT ME!
搾精を我慢しようとしたサキュバスぺごが人間(明智)に負ける話/明主
※本番行為は(今のところ)ありません
そろそろ頃合いか。ちらりと目をやった先の時計の針は午後十時過ぎを示している。まだまだ寝るには早い時間だが、今の俺にとってはこの辺りが限界だろう。
「明智」
ソファに座って映画を見ていたそいつに声を掛ける。自然な流れで頬に口付けても、特に何も言われなかった。その代わり向けられたのは何か言いたげな、訝しむような視線。曖昧に微笑み「そろそろ寝るな、おやすみ」と続けると、明智はその表情のまま「おやすみ」と返してきた。
ぎくしゃくと自室に向かう。背後で扉が閉まった瞬間力が抜けた。身体を引き摺るようにしてベッドに倒れ込み、特大のため息を吐いた。
とてもお腹が空きました。俺はもう駄目かもしれません。
──明智の精液が飲みたい。今すぐに!
突然だが俺はサキュバス、いわゆる夢魔という存在である。
男なのにサキュバスという特異な体質で生まれた俺は、生まれながらにとてつもないハンデを背負っているにも関わらず、これまたとてつもない偏食だった。好きな人の精液しか飲みたくないと駄々を捏ねた結果俺は餓死寸前になり、そんな時目の前に現れたのが当時敵だった明智だった。初めて「欲しい」と思った相手の精液はそれはそれは美味しく、なんやかんやで再会し付き合った後も、俺は明智のおかげでお腹いっぱい幸せいっぱいで過ごせていたのだ。
だがここで問題になるのは、夢魔と人間とでは性欲と体力に差があり過ぎるという点だった。俺にとっての食事は人間にとってはただの生殖行為、もしくは愛の営みであって毎日絶対に必要なものではない。更に、どうやら明智はそういった欲があまり強くない。強制的に相手を発情させてヤるのが手っ取り早いとはいえ、俺は善良かつコンプライアンスに厳しいサキュバスなのでそれはちょっと気が引ける。毎日付き合わせて明智を疲れさせてしまうのはパートナー失格だ。
だからセックスを我慢する事にした。
最初はそういう行為なしでも、キスだけでそれなりに事足りるだろうと思っていた。実際、物足りなくはあるが飢える事はなかった。ただ、明智に一度口付けてしまうと俺の中のスイッチが切り替わってしまう。善良なサキュバスからわるいサキュバスへ。ムラっとして襲いたくなるし、下腹部の淫紋の辺りが疼く。だからキスもやめて、その代わり唇以外へのキスで精気を頂く事にした。肌を寄せるだけで一応精気は吸える。
元々唇へのキスもそれ以外へのキスも大好きだ。せっせと頬やら額やら髪やらに口付けまくる俺に対して「夢魔じゃなくてキス魔になったの?」と鬱陶しそうな顔をしていた明智も、これが俺の食事のひとつだと分かっているからか拒絶はしない。ただ、俺が何も言わず急にセックスも唇へのキスもしなくなった事を訝しんではいるらしい。いやまあ、そりゃそうだろう。毎日のように「もう一回」を繰り返していた夢魔が突然何もしてこなくなったら俺だって不審に思う。
それにしてもひもじい。人が一番悲しい気持ちになるのって、もしかしたらお腹が空いてひもじい時かもしれない。せっかく最高のご馳走がそばにあるのに。お腹が空いた。セックスがしたい。
……
明智に触れたい。そう思うと居ても立っても居られず、ふらりと立ち上がった俺は気付くと明智の部屋に侵入していた。
明智はすでにベッドに入っていた。これ幸いとばかりにいそいそと俺も横に潜り込み、そうっと擦り寄る
……
はずが、閉じられていたはずの明智の目がぱちりと開いた。
「勝手に入ってくるな」
それはそう。本当にそう。何がコンプライアンスに厳しいサキュバスだと自分に説教したくなる。でも、夢の中に入って好き勝手に食べようとしなかっただけまだマシな方なんだ。
「一緒に寝たい」
「
……
どっちの意味? それ」
「普通に添い寝したいって方」
しばらく黙り込み、明智は「好きにすれば」と溜息を吐いた。
「ついでにキスしていい?」
「常識の範囲内であれば」
夢魔の常識と人間の常識は大分違う気がする。まあいいかと、ぴったりと身体を触れ合わせてきめ細かい肌に口付けを落とす。ちゅ、ちゅ、と何度も口付ける。その内段々身体が熱を持ち始めた。ずくんと下腹部が疼く。空腹のあまりこんな軽い触れ合いでも欲情するようになってしまったらしい。あの唇に触れて、もっと深いところでも繋がる事が出来たならどれ程幸せだろう。
「思いっきり発情してる癖に、何が普通の添い寝だよ。というか最近の君は一体何がしたいの? また餓死寸前まで自分を追い込んでるとか?」
暗に「そこまでムラムラしてるのになんでセックスはしないんだよ」と訊かれている、のかもしれない。ちょっとだけ迷ったが素直に白状した。
「毎日セックスに付き合わせたら明智に悪いかなって思ったから、ちょっと我慢しようかなって
……
」
「やけに色々なところにキスしてくるのもそれが理由?」
「
……
唇にキスしちゃうと、えっちな事したくなっちゃうので」
というか、もうすでにしたくてたまらない。しまった、この部屋に来るべきじゃなかった。生殺し過ぎる。バツも悪いし俺の我慢も限界なので、「それではこの辺りで
……
」と口ごもりながらベッドから抜け出しかけた時がしっと腕を掴まれた。ベッドに背中を打ちつけ目を白黒させている内に、覆い被さってきた明智が強引に唇を重ねてきた。
「んんっ
……
!? ッ、
……
ん、
……
ぅ
……
」
しかもめちゃくちゃ濃いやつだ、これ。分厚い舌が唇をこじ開けて侵入してくる。気が付くとかぶりつくようにして俺もキスに夢中になっていた。身体中の血液が正常に循環し始めていく気がする。甘い。美味しい。もっと先が欲しい。腰砕けで蕩けた顔を晒す俺に──もうすでに勃ち上がりかけている俺のものに、覆い被さる男はしっかりと硬くなったものをぐり、と押し付けてきた。
あ、まずい。これは負ける。人間に負ける。
「毎日毎日襲われてたのが急になくなったらさ、こっちも溜まるんだよね。色々と」
ちゃんと付き合えよ、雑魚淫魔。そんな物凄く酷い暴言を浴びせられた気がしたが、美味しいご馳走を前に俺は取り憑かれたようにその背に腕を回す事しか出来なかった。
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