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山茶花
2025-04-05 18:45:03
6408文字
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[シルデュ]その他のパロディ
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幕間【149OP004】
[吸血鬼パロ・3]また逢える話。
・メインスト7章(完結まで)のネタバレが含まれます
・吸血鬼パロディです。「ハッピーエンドにオレはいらない」の続編。
・転生・生まれ変わりネタが含まれます。
・この他、いろいろと独自設定が含まれます。
・上記のため、矛盾点などがあるかもしれません。
・なんでも許せる人向け。
以上大丈夫な方はスクロール↓
デュースが古城に来てから、少しが経つ。皆がデュースのいる日常にも慣れ始めた頃、突然の訪問者があった。
俺が古城の表玄関で草刈りをしていると、デュースが来て手伝ってくれた。そのときのことだ。
黒いフードを目深に被った誰かが俺たちの方に近づいてきた。
「ん、来客か?」
デュースがその人に声をかけようとしたときのことだ。
そいつはいきなり、持っていたナイフでデュースを斬り付けた。
「なっ
……
!?」
俺は慌てて剣を抜き、デュースに駆け寄る。目の前の男を警戒して睨むと、男はフードを取り払った。
「立ちなよ、デュース。キミこんなものでは死なないだろう?」
「
……
リドル!?」
「ローズハート、さん
……
相変わらずですね
……
」
目の前に立っていたのは、少し離れた街で神父をやっている
――
リドル・ローズハートその人だった。
ひとまず、デュースの手当をすると共にリドルを古城に招き入れ、事情聴取をする。
「なぜデュースを切り付けた」
「ああ、彼の血が必要でね。出会い頭に悪いけど、採取させてもらったよ」
「事情を説明してからでもいいだろう
……
」
呆れながらリドルに言うと、リドルは答えた。
「つい最近、エースがこの城へ来たと思うけれど。話を聞いてみれば、あの子はもう、デュースの眷属である必要はなくなったようだからね。悪魔祓いをしてあげようかと思って」
「それで、デュースの血を求めに来たのか」
「儀式に必要なんだ」
「エースがお前にそれを頼んだのか?」
「あの
……
」
リドルと話していると、不意にデュースが口を挟んだ。
「ローズハートさんと、シルバーは知り合いなのか?」
そうか、デュースは知らないのか。ならば当然の疑問だな。俺は答える。
「リドルは、神父だが
……
マレウス様の眷属だ」
「えっ!? 神父の人が、どうして吸血鬼の眷属に!?」
「教会は人手不足なんだ。悪魔祓いを出来る人間が、少なくてね。仕方なく、後継者を育てられるまで吸血鬼の眷属になっているのさ」
世界、そして教会が吸血鬼と共存する道を選んでいく以上、そうした伝統や儀式が失われてしまっては困るからね、とリドルは言った。
「それにしても驚いたよ。まさか、デュースの言っていた昔の恋人の生まれ変わりがシルバーだったとはね」
「俺はお前たちが知り合いなことの方に驚いているが
……
」
「ああ。ボクとエースは同じ街に住んでいてね。あの街でデュースのことを基本的に世話していたのは、ボクなんだ。
……
それというのもね」
本来、デュースはアルがヒトに生まれ変わるという夢を見てから、すぐに会いに行こうとしていたんだよ。でも、それをボクが止めたんだ。今すぐに会いに行っても、相手は赤子でキミは人さらいだよ、とね。
あとはエースが駄々をこねたのも理由じゃないかな。エースは、デュースと初めて会ったとき、まだ8歳だった。だから、『オレが大人になるまで、18歳になるまで行かないでよ』って泣いてくっついてたから。
リドルの言葉に、俺は恋敵の気持ちに想いを馳せる。最初の想いは、小さな初恋だったのだろうか。恋敵の話でなければ、ほほ笑ましく、そして切なくもあるのだが。
……
なんにしろ、俺が19歳になるまでデュースが会いに来なかったのは、そういう理由だったのか。
「だから、デュースのことは10年ちょっと世話をしていたよ。吸血鬼用の無償配布の血液などは、教会で配るしね」
「そうだったのか」
それにしても出会い頭に切り付けるのは酷いだろう、と俺がリドルに言えば、キミがそうやってデュースの身体を傷つけることに面倒なことを言いそうだから最初に採取したんだ、と返されてしまった。俺のせいにしないでもらおうか。
「シルバー、そんなに怒らなくていい。僕、気にしてないから」
「とは言っても
……
」
「ローズハートさんは、昔、血が足りなくて倒れてた僕を助けて、しばらくの寝床も血もくれたんだ。だから、ちょっと僕の血を貰われるくらい、なんでもないよ。これくらいの傷なら、すぐ治るしな」
デュース本人にそう言われてしまえば、俺は、お前がそう言うのならば、と引き下がることしかできなかった。
それじゃあボクは目的も果たしたからマレウスさんに挨拶だけして帰るよ、とリドルは告げ、その通りにしようとする。今まさにリドルが帰ろうとするそのときに、リドルを追いかけてきたらしいエースも現れ、「頼んでないから!」とリドルに叫び、2人は喧嘩しながら帰って行った。
俺は、2人とも今度はまともに訪問してくれと告げ、複雑な気持ちでそれを見送った。
……
あの2人はあの2人でどんな関係なのやら。2人を見送ったあと、デュースは苦笑いをする。
「はは
……
、びっくりしたな」
「ああ。
……
そうだ、俺の血、飲むか? まだ傷は完全に塞がっていないだろう」
「あ、うん、ええと
……
」
「嫌なのか?」
「い、嫌ってわけじゃ、ないんだけど、その
……
」
「なら、飲んでくれ。君の傷を早く治すべきだ」
「う、うう
……
分かった
……
」
デュースはあまり、血を飲みたがらない。まだこの古城へ来てから、一度も俺の血を吸ってはいないのだ。何故だろうか。血の嫌いな吸血鬼がいるのだろうか、と思ったが、その理由は、この後すぐに分かった。
血を飲むのが、すごく、その、なんというか
……
下手だ。デュースは俺の血を飲もうとして首筋に牙を刺すが、うまく牙を刺せずに血が首元からこぼれて、俺の着ていたシャツが1枚ダメになった。
「し、仕方ないだろ! 元々は人間なんだし、血を飲む練習なんてそうしてないんだから!! 教会とかで配られてるグラス入りのやつとかばっか飲んでたし
……
っ!!」
「誰も責めていない。吸血鬼が血を飲むのが下手でも、いいと思う。落ち着け」
何がどう恥ずかしいのか、慌てて言い訳をするデュースを落ち着かせる。首が難しいなら手首でもいいから、とデュースに手首を差し出すと、デュースはかぷりと俺の手首を噛み、そこから流れる血をぺろぺろと子犬のように舐めとった。
……
うん、あまり血を飲むが上手くないな。手首でさえも。
ひょっとしたら眷属としてデュースから血を貰っているときの俺の方が、よっぽど血を舐めるのが上手いかもしれない。
デュースの傷が治癒したのを確かめ、とりあえず己の首と手首の止血をする。包帯と絆創膏で血を止めておいた。
それを見たデュースは、言った。
「
……
シルバーも、眷属やめたかったり、するか?」
「何を言うんだ? 俺はそんなこと、思っていないが」
「ローズハートさんに会って、思ったんだ。ローズハートさんみたいな人がいる限り、悪魔祓いみたいなので、眷属はいつでもやめられる。
……
シルバーもいつか僕といるのが嫌になって、そういう道を選んだりしないのかな、って」
どうやら、デュースは不安なようだ。
「何を言ってる。大丈夫だ、デュース」
「ありがとう、シルバー。でも
……
不安なんだ、僕。もう、
……
失いたくなくて」
またいなくなるって思うと、怖いんだ。
そうぽつりと呟くデュースの身体を、俺はそっと抱きしめた。
「もう大丈夫だ。いなくならない」
「
……
うん」
「いるだろう、ここに」
「ん
……
」
安心させようとデュースの頭を撫でる。嫌になどなっていないと言いながらくちづけを与えようとすると、またタイミングの悪いことにセベクが窓の外にいるのを見つけたので、無視して見せつけるようにデュースへとくちづけを与えた。
まったく。何故いつも俺の部屋のまわりにいるのか、あいつは。
セベクがその場から逃げおおせたのを確かめて、俺はデュースを押し倒した。
……
別に、やましいことを最後までするつもりはないが。もう少し、デュースと睦み合っていてもいいだろうと思ったからだ。
そういうわけで、キスとハグを繰り返し、頭を撫でて身体をくっつけるような些細な睦み合いをしばらく楽しんだ。
後日。エースとリドルが、揃って古城へと訪問してきた。
「今日は中まで入んないから。これお詫びね!」
「先日は失礼したからね」
悪びれていなさそうなリドルと、なんだか疲れた様子のエースからお詫びと言って粗品を貰う。
詫び品の中身は、エッグタルトだった。
「あ! エッグタルト! うまそうだな!」
「好きなのか?」
「人間だった頃から、鶏の卵が好きなんだ」
ひとまずデュースが喜んでいるならいいか、と俺は2人に再び別れを告げた。
2人が帰るなり、デュースは談話室でエッグタルトを口に運ぶ。
「うまい! こういうのもらえるなら、たまには切られてみるのもありかもな」
「何を言っている。こんなもの欲しければいくらでも俺が買ってきてやるから、自分の身体を大事にしろ」
デュースを叱ると、何故かデュースは嬉しそうに、へへ、と笑った。
そのとき、俺の脳裏に記憶が蘇った。
『今日は昼食のついでに、エッグタルトを焼いた。菓子作りは得意でなくて、あまり上手く出来なかったが。食べてくれるか?』
『もちろん!
……
へへ、アルのエッグタルトが食べれるなんて、僕は贅沢ものだな。ちょっと焦げてるけど、そこがサクッとしてて、一番おいしい!』
『そうか、
……
良かった。そう言ってもらいたくて、作ったんだ』
これは、アルの記憶か。
……
そうか。そんな和やかなひと時もあったのだな。
ほほ笑ましく温かい気持ちになると同時に、やはりアルへの対抗心が湧いた。
「そのうち、俺も作るからな。エッグタルト」
「シルバーも作ってくれるのか? 楽しみだな!」
「ああ。アルが作ったものより旨いものを作るからな」
楽しみに待っていろ、と告げれば、デュースは変な顔をした。
「
……
シルバー、アルのこと嫌いなのか?」
いらない心配をさせたな、と俺は苦笑いをする。
「向こうからすれば、俺は未来の自分であり、双子の弟のようなものらしい。俺からしても似たような感じで、別段険悪という雰囲気ではない。アルは俺であって、かつ、完全に俺ではないという感じだ」
「そっか。良かった」
「心配いらない、デュース」
俺もアルも、君の傍にいたいという想いだけは共通しているのだから、と頬を撫でる。
すると、デュースは照れくさそうにほほ笑んだ。
……
こうして今、デュースに触れられるのは俺の方なのだと思うと、そうはできないアルにわずかに同情心は覚えるが。
『気にするな。
……
お前を通して、時々、触れ合っている』
そういえばそうだったな。デュースに向けて手を伸ばしたとき、それが俺だけの言葉や行動ではないと感じるのなら、必ずアルの魂もそこにあるのだろう。まあ、文句は言うまい。
今ここにいるデュースの笑顔を守る、それが俺たちにとっての共通の目標なのだから。
「なあ、デュース」
俺は、ふと、デュースに改めて伝えるべきか、と思った。アルの魂が俺の中にあることを。
だが、少しだけ、不安がよぎった。アルがいるのなら、俺はいらないと言われてしまいやしないかと。
デュースがそんなことを言う性格ではないと分かっていても、それでも、やはり不安がよぎった。
『シルバー。
……
お前が不安になるのなら、俺のことは伝えなくてもかまわない』
アルはそう言った。それでも俺は、伝えることにした。
「
……
アルの魂は、俺の中に在る。時折、遺志のようなものと、会話することもできる。君が、俺を通さない、本当のアルに逢いたいと願うなら、
……
一時くらい身体を貸すこともできるのではないかと、思う」
そう言うと、デュースの顔色はみるみる変わった。期待、不安、混乱、動揺。いろいろな感情が見て取れる。迷いに迷って、デュースは言った。
「アルに、会いたい
……
」
「
……
そうか」
やはり、俺だけでは足りないか。そう思い、アルに身体を受け渡そうとする。が、デュースがそれを止めた。
「でも、シルバーに会えないのも、嫌だ」
「デュース」
「はは
……
僕、欲張りになったのかな。シルバーにもアルにも、一緒にいてほしい」
今さらもう、別々なんて考えらんないな、とデュースは苦笑いをこぼした。
そして、俺に尋ねる。
「アル、浮気だって言って怒ってる、か?」
「いいや
……
怒っていない」
むしろどこかほっとしているようだ、と告げる。そして、俺は改めてアルに身体を一時貸すことにした。
「デュース、君がそう言ってくれるのなら、大丈夫だろう。試しに15分程度、アルに身体を貸してみる。君は、今したい話やするべき話をしてみてくれ」
「えっ、そんな、いきなり言われても
……
っ」
「大丈夫だ」
俺もアルも、傍にいるのは変わらない。表に出るものが変わるだけだ、と告げ、目を閉じた。
*
……
目の前に、デュースがいる。
今まではシルバーを通してしか、触れ合えなかったが。見つめられなかったが。目の前に、最愛の恋人がいる。
「デュース、
……
っ、すまなかった
……
っ」
デュースを抱き寄せ、抱きしめる。永い間ひとりぼっちにしてしまった後悔を懺悔するように、涙がぽろぽろとこぼれた。
「アル
……
本当に、アルなんだな
……
」
デュースはそっと俺の背中に腕を回す。その手は、遠慮がちだった。
「また、逢えて嬉しい。本当に
……
」
「
……
ああ」
「でも、今は
……
今のうちに、聞きたいことがあるんだ」
「シルバーのこと、か?」
「
……
ん。僕、欲張りになっちまったみたいだ。アル、許してくれるか?」
「かまわない。アイツがそれを許すのなら、俺もシルバーも、『共にお前を愛そう』」
デュースは頷いて、そして笑った。
「こんなに久々だと、何話していいか分からないな
……
」
「そう、だな」
「でも、言わなきゃいけないことは、分かる。アル、約束、果たしてくれてありがとう」
「
……
ああ。ずっと、辛い思いをさせてすまなかった。これからは、幸せになってくれ」
「何言ってんだよ。幸せになるんだ、3人で。仲間外れなんて、良くないからな」
「ふっ。
……
そうだな」
デュースの頬に手を触れさせる。顔をあげさせ、くちづけると、ちょうど15分くらいが経ったようで。
……
シルバーに身体を返すこととなった。
*
目を開けると、デュースが目の前にいた。
アルに身体を貸している間、不思議な感覚がした。俺は俺の身体の中にいて、アルとデュースのやり取りを眺めていた。
アルがデュースに触れている間、俺にも似たような心地が伝わってきた。時折、アルの言葉に俺の想いを重ねることができた。
……
なるほど。これがアルの感じていた感覚だったのか。
「アルとは話ができたか?」
見てきたので知っているが、あえてデュースに問いかけてみる。
「うん。
……
会えて良かった。ありがとう、シルバー」
「これからも時々、君が淋しくなったらアルに身体を貸すことはできる」
だが、だからと言ってアルばかりかまわないでくれよ、そうすると俺は淋しいと素直に言ったら、デュースは、ははと笑った。
「ん。気をつけるよ。ありがとう、シルバー」
僕とアルのこと、愛してくれて。そう告げるデュースの身体を、俺はぎゅっと抱きしめた。
そんな俺とデュースのことを、誰かが優しく抱きしめているような気がした。
*おしまい
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