溶けかけ。
2025-04-03 21:28:37
854文字
Public ほぼ日刊
 

世界でいちばんおひめさま!

一番でいたいフリーナのお話。
タイトルはryoさんの「ワールドイズマイン」の冒頭歌詞からお借りしました。


「ど、どうかな……? 似合う……?」
 サロンメンバーを相手にくるりと一回り。ふわりと舞った青いワンピースの裾は繊細なレースに縁取られ、動くたびに空気をかき乱す音が小さく聞こえてくる。
 胸元の濃紺のジャボにはトレードマークである青い宝石──ではなく、夜を溶かし込んだ濃紺と水平線の向こうから水分をたっぷりと含んだ朝日が昇る情景を切り取ったかのような不思議な色をした宝石が煌々と輝いている。
「ヌヴィレット……
 フリーナが宝石に口づける。彼から貰ってきた贈り物の中でも一等特別なそれは、贈り主の瞳と同じ色をしていた。思い立って、鏡をのぞき込めば玻璃の向こうの自分は頬を染め、物思いに耽っていた。
「わぁ……僕、こんな顔をしてるんだ……
 鏡の中の己と額を合わせる。とくん、とくん、と少しだけ速く脈打つ心臓は僕と彼の「これから」を暗示しているようで。
「デート……。ヌヴィレット、楽しんでくれるかな……?」
 付き合って、一ヶ月。
 お互いに忙しく、会うことすら出来なかった一ヶ月は本当に長かった。デートもキスも愛の語らいも……恋人らしいことなんて何一つ始まってすらいないのだ。
 不意にフリーナが自身の唇に触れた。丁寧に手入れをされた瑞々しい唇は薄紅色のリップに彩られている。
「キス……してみたいなあ……まだ早いかな……? キミはどう思う?」
 こつん、と鏡の中の自分と額がぶつかった。鏡の中の自分にに問いかけてもそこには自分が映るのみだった。
「会いたいなぁ……。キミだったらどんなアドバイスをしてくれたのだろう?」
 髪型から服装、メイクに至るまで。デートの日取りが決まったその日から今日という日のために奔走してきた。美容関係の書籍を読み漁り、フォンテーヌを出てスメールや璃月にまで買い物の足を伸ばしてみたり。
 メイクも最高の自分になるために研究を重ねてきた。それもすべて──
「褒めてくれるかな」
 可愛い、でも、似合ってる、でも何でもいい。
 彼の瞳に映るなら一番の僕でいたいから。