けーだい
2025-04-03 21:23:12
440文字
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乱反射

寒い日の想い出

へブラの奥地で猛吹雪に見舞われ、道を見失って数日を彷徨い歩いたことがある。
白一色に染まる視界の中では何も見えず、何も聴こえなかった。寒さは痛みを超えて、最早何も感じない。身体の感覚も覚束無くなって、多分指先から凍り始めていたのだと思う。
ふと、自分が生きているのか死んでいるのか、わからなくなった。
手で身体を摩ってみても、もう何も返ってこない。声を出したところで耳にも入らない。自分の足元が揺らいで、雪に飲まれていく。
そんな時、声が聴こえた。
羽毛が無いと大変だねぇ――なんて、まるで空から人を見下ろしているような声。かつてそんなことを言われたことがあったのか、それともヘマをした自分を笑いに来たのか、随分と愉快そうに響いている。
ただ、その声が最後は霞むように消えていったものだから、自分はまだ生きているのだと思った。
そこからどう歩いたのかは覚えていない。けれど、気付けば吹雪の向こう側に鳥の頭のような形をした大岩が見えていた。
あれ以来、声を聴いたことはない。