Adaps_A
2025-04-03 20:18:09
714文字
Public ダングリのはなし
 

踊り子ヒカセンとダングリのはなし


「本当に大丈夫?」

心配そうな顔でそう聞くのは、つい最近クルーザー級の王者となった生身の挑戦者である。
今さっき偶然見かけたので、追いすがり頼み込み泣き落としまでしてようやくこのジムに来てもらったのだ。

一言でいえば、「芸術」であった。

踊るように腕がしなり、弧を描いて飛ぶチャクラムが命を削り取る。
エーテルが広がって、辺り一面を吹き飛ばす。
その美しい軌跡が自らを抉り取るさまは、今まで戦ったどの闘士とも違っていた。
ダンスを得意とするにも関わらず、こんな舞は今まで見たことがなかったのだ。

なので、今、自分は、木人のすぐ後ろに立って攻撃を待っている。

大丈夫だぜ、と手を振ってやれば、彼は不安げな表情をしながらも渋々頷いた。
踊りが始まる。
不安が消えて、真剣な表情になる。
美しい曲線が描き出され、エーテルが広がる。
しゃりん、しゃりんと金属の擦れる音。
ギャリ、と木人とチャクラムのぶつかる音。
背筋がぞくぞくとして、脳がしびれる。

これだ。
これが、見たかった。

舞い踊る王者と目が合う。
木人が削れて、破片が散る。
エレクトロープでできた木人が削れるはずもないので、恐らくは美しい舞が見せる幻覚だろう。
エーテルの残滓がきらきらと光って、まるでファンタジー漫画のよう。

そうして残滓が消える頃、舞が終わる。
深くお辞儀をする彼に、惜しみない拍手を捧げた。
けれど、やっぱり、実際に受けた時のあの快楽を忘れられない。
命を魂ごと抉るような、あの鋭い痛みと美しい軌跡。

……やっぱり、もう一度、受けてェな……

こぼれた呟きに彼はぎょっとして、武器を後ろ手に隠して首を振った。
だめらしい。