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ろきのや
2025-04-02 21:37:09
2930文字
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Chasrielのあれそれ
キャラちゃんさんの心境とか死生観の解釈
カメのモンスター、ガーソンは何かと物知りだった。
ニンゲンとの戦争経験者にも関わらず、ニンゲンであるキャラに様々な事を語り聞かせてくれた。
ボスモンスターと呼ばれる特別な存在、アズリエル、トリエル、アズゴア。
彼らは親の魂のエネルギーが子に引き継がれることで老い、死を迎えるらしい。
つまり、子を持たなければ永遠に生き続けることができるのだ、と。
キャラはその話を思い出しながら、不思議に思っていた。
子供を産まなければ永遠に生きられるのに、どうして子供を作るんだろう。
かつて孤独に死ぬ恐怖に怯え、助けを求めた経験があったキャラにとって、死は何より恐ろしいものだった。
彼らは死ぬのが怖くないのだろうか。トリエルとアズゴアはいつも幸せそうだった。
「誰も愛さなければ死なずに済むのに。死ぬ事が怖くないの?」
キャラの疑問にアズリエルは手を止めて考える。
「怖いよ。でも、誰も愛さずに生きていくなんて
……
誰も愛さずに生きていく方が、怖いよ」
ボスモンスターは誰かを愛し、子供を作る事で命を繋いでいく。愛する事は人生の意味だった。
彼らは愛かLOVE(暴力)によってしか死を迎える事はない。
キャラはアズリエルの話を聞いて、誰かを愛する気持ちは死の恐怖を超えるのだろう、と解釈した。
自分も誰かを愛せたら、死ぬ事が怖くなくなるのだろうか。いつか自分にもそんな日が来るのだろうか。
「ねぇ、キャラ。そういえばニンゲンの魂ってすごく強いんでしょ?すごく長生きするの?」
アズリエルが目を輝かせて尋ねるが、キャラは首を振った。
「魂が強くても肉体は朽ちていくから、アズリエル程長くは生きられないよ」
「えっ
……
そ、そうなんだ
……
」
アズリエルは何か言いたげだったが、目を泳がせて黙り込んでしまった。
死ぬのは怖いけど、長生きしたい訳じゃない。
ニンゲンが永遠の存在ではない事は、ニンゲンを憎むキャラにとって救いでもあった。
その夜。
キャラが自分のベッドの中で目を閉じていると、隣のベッドから小さな啜り泣きが聞こえてきた。
アズリエルが声を殺して泣いている。
キャラはベッドを抜け出して、そっとアズリエルのベッドに近付き、彼の傍に腰掛けた。
「アズリエル、どうしたの?」
アズリエルが泣くのは珍しくない。それでも今の様子はいつもと違う感じがした。
アズリエルは震える声で答えた。
「いつか母さんも父さんもいなくなっちゃう
……
僕だけが残されて
……
モンスターたちは次々と僕を置いていくのに、僕だけがずっとここに取り残されたら
……
」
「ひとりぼっちになったら
……
って考えたら、すごく怖くなっちゃって
……
」
彼の声は途切れ途切れで、涙が枕を濡らしていた。
「キャラもいつかいなくなっちゃうんだよね
……
?」
アズリエルの手がキャラの袖を掴む。
その指先はかすかに震えている。
「どうしよう、怖いよ
……
」
アズリエルの縋るような声に、キャラは息を呑んだ。
アズリエルは人間の魂の強さを知った時、どこかで期待していたのだろう。キャラとずっと一緒にいられるかもしれないと。
でも、それが叶わないと知って、彼の心は不安に飲み込まれてしまっていた。
アズリエルはきっと誰かを愛して命を繋ぐ。だからひとりになる事なんてありえないとキャラは思った。
でも、ニンゲンの自分には想像も出来ない時間を与えられているアズリエルの未来のことなど、誰にもわからない。
自分はアズリエルに孤独に死ぬ恐怖を救って貰ったのに、アズリエルが抱える孤独への恐怖を拭ってやる事も出来ない。
アズリエルの涙に、どう答えてやればいいのかわからず、キャラはただ彼を抱きしめた。
かつてアズリエルが自分にしてくれたように。
───
それからしばらく経ったある日、アズリエルとキャラが作ったバターカップパイを食べたアズゴアが倒れる事件が起こった。
トリエルはバターカップの危険性を厳しく説きながら、アズゴアの看病に追われていた。
アズリエルは不安げな顔で、キャラはどこか心ここにあらずと言った感じで並んで立ち尽くし、その時、トリエルがキャラに声を掛けた。
「キャラ、アズゴアがあなたに話したいことがあるみたいなの。聞いてあげてちょうだい」
キャラはアズゴアの寝室に案内された。
部屋の中では、アズゴアが静かにベッドに横たわっている。
その弱々しい姿に、キャラの心臓がドキリと跳ねた。
アズゴアはか細い声でキャラを呼び、静かにこう言った。
「もし私がこのまま起き上がれなくなったら
……
私の魂を使って、みんなを救う方法を探してくれないだろうか
……
」
キャラは目を見開いた。
「どうか、我々の希望になってくれ
……
」
アズゴアの手は弱々しく布団を握り、意識が朦朧とする中、家族や国民の未来を案じていた。
地上に帰るつもりが無かったキャラは、その時初めて知った。地上に出るにはモンスターと人間の魂が必要だということを。
「モンスターが人間の魂を取り込んでも同じだよね?」と尋ねると、アズゴアは静かに頷いた。
部屋を出ると、アズリエルが心配そうにこちらを見ていた。キャラは思わず笑った。
「大丈夫だよアズリエル。何も心配する事なんてないんだ」
笑いが止まらない。自分の使命がやっと分かった。頭の中で計画が閃いたのだ。
アズゴアはその後無事回復し、キャラに話したことも忘れてしまったようだった。
しかしキャラの胸に宿った決意は揺るがない。
自分が死に、アズリエルに魂を取り込んでもらい、地上に出て、ニンゲンの魂を6つ集める。
そうすれば、アズリエルは孤独にならない。自分は嫌いなニンゲンの体を捨てられる。
なんて素敵なアイデア!
アズリエルは最初、親友が死ぬという事実に躊躇した。でも、王子としての役割や、魂を取り込むことで孤独から解放されるという甘い言葉に心を奪われていった。
「ずっと一緒。離れることはない」。その響きに、彼は抗えなかった。
「アズリエル、これでボクたちはずっと一緒だよ」
計画は着々と進んだ。
アズリエルは計画について、魂を集める手段は確認しなかった。
キャラといればきっとニンゲン達と話し合いができると思っていたのだろう。
肉体が朽ちたニンゲンから魂を譲って貰えるように交渉し、和解出来ると信じていた。
それは親友になったキャラへの信頼の証だったが、キャラにはニンゲンに対する期待など存在しなかった。
どうせ無駄なのだから。暴力で解決しようとしか考えなかった。
───
アズリエルはキャラの魂を取り込んだ時、その憎しみに触れ、初めて自分が酷い事をみのがしてしまったのだと気付いた。
アズリエルは大切な親友の自傷行為を止めなかったことを悔やんだ。
キャラは力さえあればモンスターが人間に勝てると信じていた。
でも、アズリエルが示した、力があってもみのがす優しさもまた、キャラが愛したものだった。
二人の命を奪ったのは何だったのか。それは誰にもわからなかった。
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