blueglasscastle
2025-04-12 21:00:00
1577文字
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本日の主役/ごちそう/笑顔

最初期アーロン×最初期ルーク。兄弟設定

 4月14日はアーロンの誕生日である。
 正直、己の誕生日に思い入れはない。食うや食わずの環境に身を置いていた頃は、記念日などなんの意味も持たないものであったし、成長してからは今携帯している偽造身分証に記載された誕生日を覚えておかなければならない、程度のものであった。
 だが紆余曲折を経て、生き別れの兄と再開し、深い仲になれてからは違う。ごく平均的なリカルド人と同程度に記念日を大事にする兄に、普段と一味違うアプローチができる絶好の機会だ。平たくいってしまえば、マンネリ防止デーだ。

 「帰ってきたらお祝いだからな!」と振られている尻尾が見えないのが不思議なテンションで出勤していった兄、ルーク・ウィリアムズの帰宅についてだが、おそらく定時あがりというわけにはいかない。本人が積極的にトラブルに首を突っ込む性質な上に、今日はルークの誕生日でもある。職場で大なり小なり、祝われてから帰ってくるだろう。よって準備時間は有り余るほどある。
 エリントンの家に滞在している間、アーロンはあまり家事をしていない。幼い頃、離れ離れになっていた空白を埋めるようにルークがアーロンの世話をやきたがっているため、ありがたく甘えているからだ。だがひと通りのことはできるし、自分の顔や身体を最大限利用して生きて行くうちに様々な小技を身につけてもいた。

 肩まで届く髪を一括りにまとめ、まずは家の中を隅々まで掃除していく。窓を開けはなってベッドのマットレスをひっくり返し、家具を移動させていく。リネン類は洗濯乾燥機に任せて、床と段通に掃除機をかけていく。食卓も、普段は使わないテーブルクロスやナプキンにアイロンをあてて、シワひとつない状態に整えていく。
 続いて酒や食材をグロッサリーで仕入れ、料理の仕込みをしていく。鶏の中抜きとたいに塩胡椒を揉み込んでから香草や豆、小さく角切りにした根菜類を詰め込み、タイマーをかけてオーブンにセットする。バゲットを手に取りやすいサイズにスライスし、ディップソースを見栄えよく小皿に取り分ける。酒に合うようなチーズやクラッカーを並べる皿を用意した後は、水回りの片付けと清掃も怠らない。
ケーキは準備しなかった。超がつく甘党の兄が、ケーキは買って帰ると宣言していたからだ。きっと、ファミリーサイズのホールケーキを買ってくるのだろう。

 ルークが家にいる時は必ずチェックしているニュース番組が半分終わりかけた頃、家の外でポストを確認する音が聞こえてきて、ソファをベッドがわりにだらしなく寝そべっていたアーロンは片目を開けた。
 ほどなく玄関の鍵が外され、待ちわびた「ただいま」という優しい声が聞こえてくる。家の中に帰ってきた足音は真っ直ぐにダイニングに向かってきて、食卓の横で止まる。
「わ、すごいな」
 単純だが心からの賞賛の響きのする声が響き、そのままアーロンの方へとやってくる。
「ありがとう、アーロン。めちゃくちゃ美味しそうだ」
 ソファの横に膝をつき、アーロンの顔を覗き込んでいる兄の首に手を回して引き寄せる。帰宅の挨拶がわりの触れるだけのキスを交わし、ここ一番の笑顔を向ける。
「本日の主役に美味いもん食わせたかったからな」
「それをいうなら君も本日の主役じゃないか」
 ケーキしか用意していないよ、と言う兄はわかっていない。
「いいんだよ」
 ルークの首を引き寄せていた腕をそれぞれ動かす。左手は頬を包み込むように滑らせて、少し荒れた唇に指先で触れる。そして右手は服越しでもわかる鍛えられた胸筋をなぞり、下腹部に押し当てる。
 夜を思わせる含み笑いと手の動きに、察しの悪い兄も思うところがあったらしい。赤くなった耳に、触れるか触れないかの距離で声を吹き込む。
「オレの作った飯で、腹を満たした兄貴を後で食わせてもらう」