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望月 鏡翠
2025-03-31 23:39:07
877文字
Public
日課
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#1673 「箱馬車」「無掃除」「高殿」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題話
少年は聞きわけがいい方ではあったが、辛抱強くはなかった。
少年は待てと言われた場所から動かないという約束を守ったまま、最大限己の好奇心を慰めるべく、箱馬車の屋根に登った。
そこは雨よけのための構造で、人が登っても良いくらい頑丈にはできていなかったが、子供の体重を支えるくらいであれば難なくこなすことができた。
彼は高殿の中がどうしても覗いてみたかったのである。屋根に登って背伸びをしても、ギリギリ顔が届かない。縁に手をかけて体を持ち上げてれば、見えるかもしれない。
指先に砂埃がついた。
無掃除の気配が、中を目にする前からわかる。
高殿の建物は、村の入り口で門の外にある。村にやってくる度に父親は 建物の下に馬車を止めて、門の役人のところに手形を見せに行く。そこから始まる長々しい手続きの間中、少年は馬車で待っていなければならない。とても退屈な時間だった。
階段があるから出入りをすることはできるのだろう。しかし、知る限りそこを出入りしている人間を、みたことがなかった。少年にとってはただあるだけの建物で、その床の下の骨組みを、登ったら楽しそうだと思いながら眺めているだけだった。
腕に力を込める。もう少しで高殿の上に顔が出る。
「こら」
その声に怒気はなかったが、やってはならないことをしているとしているという自覚のある少年は、思わず手を話した。
箱馬車の屋根の上に背中から落ちる。
痛みで野田内回っていると上から声がかかる。
「生きてるか?」
髭面の男が、高殿の手すりの向こうからのぞいていた。
「生きてる」
少年の言葉には二つの意味が含まれていた。高いところから落ちても無事に生きている。そして、高殿の上に生きた人間が乗っている。人が乗っているのを初めてみた。
ちゃんと人がいる場所だったのだ。
一体何のための場所なのだろう。その答えは、男が背負っていた。
「悪戯もそこそこにしろよ」
そういって見えない場所に引っ込んでいく男の人の背中には、弓矢が見える。それは彼とは生きる世界が全く違うことの証左だった。
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