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コタジ
2025-03-31 00:28:32
1779文字
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枝垂桜に約束を
□小頭時代の雑が尊、高坂、陣内さん達とお花見に行く話。
□タソガレのワンライに初参加させていただきました。楽しかったー!ありがとうございました!
次の休みに、桜を見に行くか。
父が言ったことに、雑渡昆奈門は首を傾げた。
(貴族でもあるまいし、おかしな事を言う)
後から知ったことだが、その桜は雑渡が生まれた時に植えた枝垂桜だったという。
枝がやわらかく枝垂れるその桜は、一重咲きの小輪で淡紅色をしていた。
自分に似合わぬ色をした花を見上げ、雑渡は無言で立ち上がった。
結局ひとりで来る事になったが、特に感慨は湧かなかった。
「小頭、桜を見に行きましょう!」
きらきらとした純粋な瞳を輝かせ、諸泉尊奈門が言った。
(
……
え、嫌味?)
現在、雑渡は生死の境を彷徨いやっと容態が落ち着いた状態だ。
未だに話せすことは出来ず、呼吸するのがやっとである。
僅かに動かせるのは目と指先くらいだろうか。とても花を愛でるのを楽しめる状態ではない。
それは看病している尊奈門が一番分かっているだろうに。
中々酷なことを言うねという雑渡の思惑が伝わったのか、慌てて尊奈門が首を振る。
「勿論小頭が回復されてからですよ。ほら、先の楽しみがあった方がいいじゃないですか」
(楽しみねぇ、それはいいけど。それまで生きているかなこの身体)
甲斐甲斐しく世話を焼く尊奈門には悪いが、雑渡はあまり期待はしていなかった。
病は気からというが、楽観視出来るような状態ではないことは、身をもって理解している。
しかしながら、幼い尊奈門を落胆させるのも忍びない。雑渡はそれで尊奈門の気が楽になるならと、安易な気持ちで是を示しておいた。
その翌日。
「桜の選定はお任せください、私が小頭に合った最高の名所を見繕ってみせます!」
何故か確かに請け負いましたと、高坂陣内左衛門が力強く握りこぶしをしている。
(
……
いや、陣左は普通に仕事して欲しいんだけど)
雑渡の内心の言葉をわかっているのかいないのか。「勿論、任務もきっちりこなします!」と張り切った様子で高坂が立ち去る。
尊奈門が話したのだろう。
(まぁ、まだ年若いあの子らにも。楽しみの一つや二つ、あってもいいよね)
士気が上がるならば何でもいい。
少しばかり疲れた雑渡は目を閉じた。
その、数日後。
「花見はいつ頃にしましょうか」
「
……
」
山本陣内まで言い始めた時は、流石に雑渡も沈黙した。
(え、陣内まで花見にはしゃいじゃうの)
「はしゃいでおりません。しかし、割り振りを決めるのに予定を組んでおきたいので」
付き合いが長い為か、陣内は口がきけない雑渡の言いたい事の大半を汲み取る。
その陣内がわからない筈がないのに尋ねてくることに、雑渡は困惑した。
この身体は朽ちる寸前だ。
今息をしていること事態が奇跡に近い。
万が一回復したとして、以前のようには動けまい。
寧ろ人手や薬に金をかけることが無駄ではとさえ考え始めていた。
「行かれますよね、小頭」
雑渡の思考に、陣内が咎めるように言葉を刺す。
「尊奈門と、約束なさったのでしょう?」
「
……
」
ふと、尊奈門や高坂から最近向けられていた不安気な表情が浮かんだ。
(──あぁ、そういうことね)
これは自分が悪いと、雑渡は陣内に悪かったと目を向けた。
じっと見つめていた陣内の表情が、少し緩んだ。
*
「桜はかなり長命な樹木なんだってさ」
「そうなんですか?大体の木は長生きなものと認識しておりました」
「うん。その中でも特にそうらしいよ」
桜には、人間のような寿命という概念は存在しない。
日当たりが良く、根が呼吸し水分を吸収しやすい土壌と育成に適した環境作りがなされ、かつ病害虫の発生などにも適切に対応し保護されていれば、ほぼ半永久的に生き続けることができるという。
つまりはひとりでは生きられないということでもある。
「何方から教えて貰ったのですか?」
「んー?さぁ、誰だったかな」
忘れちゃったよと言う雑渡の声音は酷く優しい。
何となくそれ以上は訊けず、尊奈門は見事な枝垂桜を見上げた。
高坂が見繕った場所ではなく、雑渡が教えてくれた所に来た。高坂は少し残念がっていたが、尊奈門はなんでもよかった。
雑渡と桜をみることが出来た、それだけで尊奈門には意味があった。
「桜って、良いもんだねぇ尊奈門」
「はい!」
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