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haruon1018
2025-03-30 17:59:00
2206文字
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第163回長晋ワンドロライ お題「花見」
大学生のmr君✕社会人のtksgさん
桜に攫われる前に自分で攫おうとするmr君の話
※tksgさんがskmtさんの下で働いてます。
okdさんとskmtさんは友人として描いてます。おryoさん不在
「桜に幕、これで上がりだ」
「なんじゃー!最後にそげん札隠しておったんか」
昼休み、高杉は同僚の岡田に勝負を仕掛けた。
元々博打が好きな岡田は活き活きとした表情で事務机から花札を取り出してくれた。
負けたほうが今年の花見の場所取りをするとカケに勝った高杉は浮き足気味のせいで、岡田の背後にいる坂本に気づかなかった。
「休み時間は終わりだよ、ところでそれは何」
「ッチ帰ってきたなら挨拶せぇ」
高杉と岡田の上司で才谷商事の次男、龍馬は笑顔のまま花札を没収すると二人にそのまま話しかけてきた。
「賭け事は止めてとまでは云わないが、仕事中はダメだと云ったはずだよ」
「これは業務の一つだよ、今年の場所取りはどちらがするか」
募集された花札はどうでも良いが真っ当な賭け事であったと高杉は口にした。
才谷商事は社員三百人を抱える大手企業だ。
坂本を含めた三人はそこの営業部に所属している謂わば花形社員であるが、三年目の社員というのは若手とも中堅どちらにも当てはまらない中途半端なポジションである。
だが、宴会となるとそのポジションは便利屋として大変重宝される。
買い出しに送迎、宴会部長、どれも面倒くさい役割ではあるが一番厄介なのは場所取りだ。レジャーシートを敷き、食料と最低限のモラルを守れる装備だけで陣地を奪われないように張っている様はさながら戦国武将の籠城戦に近い。
「二人とも話を聞いていなかったんだね、今年は織田物産が場所を提供してくれると先週の金曜日の朝会議で云ったはずだよ
ちなみに今日は水曜日で、花見の予定は今週の土曜日だ。
「その日は僕、午前中休んでいた」
「儂も
……
」
「高杉さんは喘息の発作、以蔵さんは二日酔いだったね
……
月曜日に話さなかった僕も悪かった、」
「だろ、しかし場所を提供してくれるのはありがたいが後が怖いな」
織田物産は才谷商事が翳むほどの一流企業だ。
独創的な信長が社長に就いてからの成長は凄まじく、将来独立を考えている高杉にとっては手本にしたい人物の一人であるが、性格故に彼女は敵を作りやすい。
「ん~裏はないと思うよ、」
「どうだろうか、」
織田物産との交渉担当は複数おり、高杉はその中の一人なので彼女の性格は熟知している。あとであれこれあちら有利の商談を持ちかけられないかと不安に感じたが、これでも商才の腕が立つ坂本がないというのだから信じようと思った。
**
「勝蔵、花見するから支度せい」
「何回目の花見だよ、今週に入って三回目だぞ、しかも振り袖の女付き」
土曜日の午前中、レポートを仕上げていた森の元に信長が顔を出してきた。
父の上司である信長との付き合いは生まれたときから、きょうだい全員を可愛がる信長に対して尊敬するところはあるが、突然の絡みは少々キツい。
「花より団子か、勝蔵ももう二十歳、そろそろ見合いの一つやさせんとおぬしの親父に申し訳ない」
「親父まだ現役だし、うちは恋愛結婚だって云うからそういうのは良いだろ」
「でも流石にその年で初恋済ませてないのはヤバいと思うぞ」
「風邪じゃねぇんだ、済ませりゃ良いってモンなのか」
「拗らせると後に響くぞ。まぁ、今日の宴会は男ばかりだ、才谷商事に面白い男がおるからおぬしに紹介しようと思っての」
「
……
酒が飲めるなら良い」
「そうと決まれば、ほれ支度じゃ、」
「桜ね
……
」
スーツに着替えさせられた森は馴染みの織田が所有する庭園で桜を観賞していた。
紅白のめでたい幕が張られてはいるが、どうにも桜の色を見るとどうにも落ち着かない。
別段何もなかったはずだが物心ついた頃には、侘びているとは思うが薫り高い梅の方が春らしいと感じるほど、森と桜の相性は悪い。
「おや、先客。うちの社員でないということは織田物産の関係者か、どうも高杉晋作です」「森長可です
……
」
焦げ茶色の三つ揃えを着た男が名刺を取り出そうとしていたが、森は社員ではないのでいらないと首を振った。
「社員ではない、ということは信長公のご身内か」
「そんなところ
……
です」
「敬語は良いよ、君も春を味わいに来たのだろ、宴会が始まれば、それどころじゃないからね」
あと一時間もすればここは酒盛りで賑やかになる。
その前にこの空気を楽しもうと高杉も思ったことに森は少し意外に感じた。
紅毛の髪を束ねた髪は会社勤めにしてはやや遊んでいるように見える。
それなのに最初の挨拶を済ますと春を味わうという言葉通り、高杉は花々を愛でている。「花はみよしの、人は武士」
今や元歌よりもコミックバンドで有名になったメロディを口ずさみながら高杉は桜の前に立つ。
妹たちの漫画ではか細い少女は桜に攫われると云う、それは男でもなのだろうか。
気づけば森は高杉の腕を握っていた。
「何、どうしたの」
「桜に攫われるくらいならオレが攫いたいと思った、なぁ攫われてくれないか」
「
……
面白いね、」
「本気だけど、」
高杉の余裕ぶる顔に腹を立て森は桜の花びらを口実に彼の唇を奪った。
「ワシの作戦勝ちじゃな」
「そういうことだと思ってはいたけど、覗きなんて無粋じゃない」
「たまたま幕の向こうを見たら、花見から青春が始まっていただけじゃ、今日の酒は旨いぞ」
ふふっと信長が笑うのに対して、坂本は仕方がないとため息をついた。
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