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siso_leonids
2025-03-29 22:25:21
1908文字
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スタレイ結成前日譚
貴音くんと憂弦がアイドルとして走り出し、同居するに至った時のお話
「
……
貴音?」
扉の前に立つ貴音に憂弦は眼を丸くした。
前髪によって影が落ちた幼馴染の瞳には様々な感情が渦巻いている。
着の身着のままで来たらしい貴音を家に招き入れ、暖かい紅茶を出すと貴音はしばらく黙り込んでいた。
憂弦も急かすことも促すこともせず紅茶を啜る。
しばしの沈黙の後、貴音はようやく顔を上げて口を開いた。
「俺、アイドルになりたいんだ」
「あ、あぁ、言ってた、な
……
」
貴音の強い瞳に気圧されながら憂弦は貴音の話を聞いた。
曰く、進路希望を伝えたところ親の指定した大学に入ればアイドルという進路を認めるという条件を提示されたこと。貴音にアイドルを諦めさせるためにわざと難易度の高い大学を指定したということ。親の思惑が外れ貴音が合格してしまい、アイドルを諦めて堅実な職に就けと告げられたこと。親の否定に対して貴音が反発し家を飛び出したこと。
憂弦は何年も前に会った貴音の両親を思い浮かべ、内心で大きなため息をつく。
貴音の両親が懸念していることや心配が嘘だとは憂弦は思わない。でも、貴音の意思や努力、何もかもを否定してまで自分たちの思惑を押し付けてしまうのならば、それは心配という都合の良い言葉で飾られた親のエゴであるということも否定は出来ない。
貴音の話を聞くに最悪の形で露呈してしまったのだろう。その様が容易に思い浮かぶ。
話し終えた貴音は少しだけ冷めた紅茶をゆっくりと飲んでいる。
憂弦はそんな貴音にぽつりぽつりと語り掛ける。
「
……
アイドルは、楽じゃない。表舞台で笑っているだけでなく、泥臭いことや血が滲むほどの練習、人の腹を探ったり愛想を振りまいたりうまく世渡りしないと到底やっていけない。当然、やりたくないことをやらなくちゃいけない時だって出てくるし
……
、発言一つで首を切られることもある」
「うん」
貴音は憂弦がアイドルを辞めてしまった、否、辞めさせられた理由を知っているし、憂弦がアイドルとして復帰することに対して踏ん切りが付かず、クオリアクロニクルなどの指導や事務仕事などをやっていることも知っている。
「お前はそれをわかってても、やりたいのか?」
「なりたい。俺を軽んじた奴みんな、後悔させてやる」
アイドルを辞めても、その理由を知っても、夢への憧れの眼差しを止めることはなかった貴音。
まっすぐに向けられた瞳には射殺すような強い意志と積年の執念が。声には爆発寸前の感情のようなものが乗っていた。
そして一瞬視線を逸らしたかと思うと、憂弦の指先をゆるく掴んで。
「それでも俺は、アイドルになりたい。
……
出来るなら、憂弦くんと一緒に。舞台に、立ちたい」
申し訳なさに似たような感情を滲ませて少しだけ弱まった貴音の声色に憂弦は押し黙る。
「
……
」
貴音が両親に抑圧されていたことを知っている。
憂弦は元アイドルだ。貴音が想像もつかないようなことも、良い面も嫌な面も知っている。貴音にもある程度話したことがある。否定はせずとも簡単な世界じゃないということは何度も言っている。それでもいろんなものを捨ててまで着の身着のままで貴音は憂弦の元まで来た。
きっと、ここは貴音にとって最後の砦なのかもしれない。
わかっている。この世界に引きずり込むことの意味を。でも。この手を取ってくれるのなら。頼りにしてくれるのなら。
きっと、憂弦はそれを縁に出来る。
憂弦は息を吐き出す。
「
……
わかった」
憂弦の言葉に貴音は顔を上げる。
「無茶はしない、生活や健康に気を遣う、此処に毎日ちゃんと帰ってくる、大学には通え、学生の本分は疎かにしない。それが条件だ。俺から貴音のご両親に連絡する。俺がお前を預かるってな。大学もさほど遠くねぇし、幼少期から家族ぐるみで付き合いしてる俺が面倒見るんだから一人暮らしで野放しにするよりまだマシだろ」
「野放しって
……
」
「あの人らが喧嘩して家出少年かましたお前を一人暮らしで野放しにするとは思えねぇだろ」
「
……
」
「夢についてもまぁ今の条件を向こうにも言って若い間に挑戦ぐらいさせてみましょうよぐらいのノリで説得してみるよ、若いうちの失敗なんて大したことないってな」
貴音の目が輝く。
「あ、ありがと
……
」
高揚感で浮ついた礼に思わず苦笑して、寝る場所に案内する。ベッドをどっちが使う使わないで揉めたりしたものの、その内買いに行けばいいかということで最終的になぁなぁになった。
貴音を風呂に放り込み、憂弦はベランダに出て電子シーシャを片手に煙を吸って吐き出す。
「
……
行動読まれてんじゃねぇかよ」
スマートフォンの画面に映る名前に苦笑いして通話ボタンを押した、
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