倉木
2025-03-29 20:41:41
2084文字
Public 新亀
 

03レオドン

CPはレオドンですが出ているのは真ん中組だけです

通路の向こうで聞こえる男の声は昼間の喧噪と取るには些か大きすぎた。

「あの、本当にただ通りがかっただけだから気にしなくていいし、なんならもう忘れてもらっても

「忘れるなんて!あの時貴方が助けてくれなければ僕は此処に立っていなかったのかもしれないんですよ!!?言わば命の恩人なんです!」

言い合いというよりは片方がひたすら勢いよく話し、もう片方の声色は随分と困った音を為していた。
裏路地から見える日の光はまだ明るい。
被った帽子を再度かぶり直し、ラファエロは深く溜息を吐く。

「そ、そんな大げさな

後ろずさる形でラファエロの視界に入ってきたのは、ラファエロも良く知る兄弟の姿だ。
体格以上の衣服に同じく顔を隠すように下げた帽子があったとて、陽の元で近づかれれば人間じゃないことなどすぐに気付かれる。
できるだけ距離を置こうとしているように見えるドナテロにぐいと近づく男性はラファエロ達より一回り大きかった。
身長だけならケイシーと大差ないが彼に比べたらずっとひょろ長く、突き出た肩は頼りなく丸い。

「じゃあせめて名前だけでも!毎日神へ貴方への感謝と幸福を祈らせてください!」

興奮した男の様子は過剰なほど。

「えぇ………

流石ジーニアス、と揶揄おうにも今ラファエロは身を隠していてせっかくの皮肉も届きやしない。
言われた本人が引いたように口元をひくつかせている。
この光景を最初は面白く見ていたラファエロだが、存外長く続いている攻防に進退を捉えあぐねていた。
ドナテロのまごついた態度も問題だが、男の勢いが何よりも凄い。
一緒に外に出ていたラファエロがちょっと目を離していた隙に一体何をどうやったら神に祈るレベルのことをしてのけたのだろう。
ラファエロがこの見えない影から彼を引っ張りこんで逃亡は容易だ。
でもあの状態で放置して、変に吹聴されては困る。
それはわかるがいい加減ラファエロは今の停滞した状況に苛々していた。
何か隙を作って連れ出すのが最適だ、そう思ったところでラファエロの頭上に影が走る。
数秒後、何かが派手に割れる音が響き渡った。

「あひゃあっ!!!」

甲高い男性の悲鳴と共に男がドナテロに飛びつく。
その拍子にずれた帽子から緑色の皮膚が飛び出し、慌ててドナテロが被り直した。
ドナテロを壁に押し付ける形で震えている男はなんとか見えていなかったようだ。

「こ、こ、こ、こんどはなにっ!?」

「えーっと、どこかのマダムが鉢植えでも落としたんじゃないかな?様子を見に行った方がいいかも」

ドナテロの声に呼応するように一本向こうの街路から聞こえる人の声が増えてきた。
騒ぎを聞きつけた野次馬に男の興味は引かれたようで、彼の身体は道なりに3歩進む。
その隙を逃さず、ラファエロは陽の元に身を躍らせるとドナテロの腕を掴んだ。
半ば担ぎ上げるようにして薄ぼけたビルの壁を蹴る。
階下で慌てた男の声がするが次第に遠くなった。
人通りのない屋上に降り立ち、ドナテロは素顔を晒すと疲れたように肩を落とす。

「はぁ……なんだかフット団相手にするより疲れたよ」

「ファンが多いと大変だな?スーパースター、いやヒーローか?」

……人の好意を無碍には出来ないじゃないか」

同じく帽子を放ると強い日差しに頭皮が乾いてしまいそうだ。
そんな快活な日なのに、ドナテロの周りだけ随分とどんよりとしている。
連日徹夜でもそこまで疲れた顔もしていない、どうやらラファエロが思った以上に疲労が激しかったらしい。
しかしラファエロには同情の気持ちはなく、ただ呆れた表情を向ける。

「とっとと殴って帰ればいいじゃねぇか」

ラファエロであればあの程度の男押しのけてさっさと帰る。
懸念があるとすれば力加減の難しさだが、手段としてはそれしか思いつかない。

「いーや、オマエは絶対僕より苦労するよ、断言していい」

「助けてもらった恩人が亀のミュータントでした、って方がトラウマだろ」

「同じことレオにも言われたことあるなぁ……はぁ、ラフでよかったよこんなの見られてたら膝が痛くなるまで説教されそう」

「おう、せいぜいクッション3枚敷いときな」

きょとんとした顔のドナテロにラファエロは上を指さした。

「落としたのは植木鉢じゃなくて貯水タンクだぞ」

今頃元いた周辺は大騒ぎだろう。
思考が停止したらしいドナテロの背を叩く。
色々と考えすぎていたことはわかるが、頭上から刺すくらい感じた視線に気付かなかったのなら大概鈍感が過ぎる。
ラファエロを追い越し慌てて帰路を駆ける後姿にラファエロはただ肩を竦めるのみだった。







ちょっとわかりにくいので補足するんですが、この時のレオナルドは変装していなかったので人前に出るわけにもいかずとりあえず邪魔したかったやつです
脇が甘いというわけではないんだけど、人の好意を無限にできないとことどうしても人(亀)の良さが出てしまうドナテロはいるしそれに関してはラファエロも似たようなもん