net20156
2025-03-28 18:08:46
1454文字
Public
 

おまもり



「だいたいさあ、僕という彼氏がいながら他の
男と野球行くぅ?」

リビングテーブルを挟んで座る大柄な男は、眉間に皺を寄せて不機嫌さを隠そうともしない。ご飯やおかずを次から次へと口に運んではいるが、こちらに視線を全く寄こさない。
お互い多忙な呪術師なんだから、せめてたまに一緒にいられる時くらいは楽しく食事をしたいのだが。

だから言ってるでしょ。任務で行けなくなった補助監督がグループシート譲ってくれただけだってば。別に二人きりじゃなくて他の女の窓の子もいたし。」
「それでも!! 僕が海外出張で汗水たらしてる間に他の男と楽しい時間を過ごしてたなんて!!」

汗水たらしたのはむしろ同行した伊地知の方ではと思ったが、めんどくさいので黙っておいた。
野球観戦は隠していたわけではないが、同僚同士の懇親だったのでわざわざ言うほどのことだとも思っていなかった。一緒に観戦した補助監督の観戦話が回り回って五条の耳に入ったらしいが、なんで大阪の球場の出来事が東京にまで伝わってるんだ。

歌姫は夕食を口に運びながら、年下の恋人の何度目かの文句に小さく息を吐いた。


「歌姫は僕のことどーでもいいと思ってるんだ。そりゃ確かに付き合おうって言ったのは僕の方だけど?ちょ―――っとだけ強引なやり方はしたかもだけど?でも歌姫も少しは彼氏持ちって自覚持ってくんない?」


うーん、これは結構めんどくさい。明日には京都に戻らなきゃいけないのに、しばらくひきずりそうだな
歌姫は二人の間に置いてある冷めかけた唐揚げをつまんで口に運びながら告げた。


「あんたが思ってるより、私はあんたのこと割とマジで好きよ」

……っは?……えっ……

五条の箸が止まる。やっとこっちを見た。

「そんなに不安なら、結婚でもしとく?」
…………
「興味ないならいいけど」
「いやしますしますさせてください結婚!!!!」

ガタガタッ!と椅子を倒して立ち上がる五条の剣幕がすごくて、思わずこちらも箸を止めてしまう。

……えっと、歌姫、マジ……?」

さっきまでの不機嫌がどこかに吹き飛んだかのように、頬が紅潮している。百面相だなおい。

「冗談で言う歳でもないんだわ。あんたにいちいちヤキモチ焼かれて文句言われるくらいなら、形にしといた方がいいでしょ」
「じゃあ今から区役所いこ。24時間受け付けてるよね!?」
「は!? いや待ってちゃんと根回しと準備してから!!」
「歌姫の気が変わったらやだもん!!!今すぐ行く!!!」
「変わらないってば!!舐めんな!!」

腕をぐいぐい引っ張って本気で出かけようとする五条の手を何度も叩くと、ようやく止まってくれた。
落ち着きのない大型犬を鎮めるように、正面から抱きしめる。


……ほら、大丈夫だから。あんたを一人にはしないし結婚もする。だから、もうちょっと信じて?」

背中に回された太い腕が、ぎゅっと強く抱きしめてきて少し苦しい。だけどこの男の不安を少しでも軽くすることができるなら、多少は我慢してやるかと思った。

「僕も浮気なんか絶対にしないね……
「だから私もしてねぇってば!!」

ぎゅうぎゅうと抱きしめていた腕がそのまま腰に回り、軽々と持ち上げられてしまったのでやっと息を吸えた。
珍しく上から見下ろした五条の顔はだらしないほど緩んでいて、なんだか可愛くてそのおでこにキスをした。

「最初の子は男の子と女の子、どっちかなあ」
「気が早いってば……