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せいたろ(sitr)
2025-03-27 23:48:37
10846文字
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隠し湯
花のかたち(前作)の、翌朝
伊仙 仙伊 リバ 仙視点
半分濡れ場
成人向
※交際せず行為に及ぶ描写があります。
※薄暗い捏造過去話の中にモブ姦あり
転載・改変禁止
「温泉行かない?」
屈託なく揺り起こされて、はあ、と気のない返事をしてしまう。空の白み具合を見るに、まだ明け方だ。昨晩あんなことになっておいて、あまりに普通じゃあないか。
「裏裏山に見つけたんだけど、掛け流しでね。まだあんまり言いふらしてないんだけど。」
肌に良さそうだ。寒さと乾燥で微々たる不調があるのが気になってはいた。
「そばに休憩スペースも建てたんだ。」
「建てた?」
「留三郎と、小平太とね。着替え置いたり、休憩したりするのに欲しいって言ったら、じゃあ建てようとなって
……
」
二人と建てたのだったら質も悪くないだろう。器用でものづくりの得意な留三郎と、仕事も頭の回転も早い小平太。ちょっとした小屋くらいさっさと出来上がったに違いない。
丁寧に身体を拭いたが、そもそも汗が垂れるほど動いたので湯を浴びたい。学園の風呂を沸かしても良いが、他の者と鉢合わせる前に身体を洗えるかわからない。
「
……
遠いか?」
これを承諾ととられて、満点の笑顔になった伊作がいそいそ支度をし始める。おい、とか、あのなあ、と水を差してみたが全く『温泉に行く』ことは揺るがなかった。伊作はどんどん背負い籠に荷物を詰めていく。
「厠と着替えを済ませてきて。待ってるよ!」
まだ眠気と気怠さがある私の顔を知ってか知らずか、伊作は朗らかに見送ってくれた。否、有り体に言えば追い出された。伊作には、こうと決めたら聞かないところがあると思う。
あのまま留三郎がい部屋に泊まったのか、だとすれば寝ているか、寝ていなくとも将棋だなんだと夜通しできる勝負をしていそうだ。
……
まだ起きていたら面倒臭い。涙声で謝る閨の伊作に何を思ったことやら。まあまあな声量だったから絶対に筒抜けだ。
伊作のことだからそういう悩みや考えを日頃の留三郎には言わなそうだし、話されない分、留三郎は昨夜ひとときメンタルが崩れた伊作をどう捉えているか
……
。
足音を立てず、草履をつっかけて忍たま長屋の廊下を降りる。取り急ぎ厠へ向かう。すぐ出るものは出して、井戸に行って顔を洗って口を濯いだ。
前髪を撫で付けて、は部屋に戻る。
「伊作!」
ん?という顔でこちらを向く伊作。くすんだ鴇色の小袖を着て、袴の前紐を結んでいるところだった。
「お前の着物を貸せ。こんな明け方に、うるさいの二人がいる部屋でバタバタするのは嫌だ。」
「いいけど
……
」
いまいちピンときていない顔で見返されて、はあ、と気が抜ける。伊作も留三郎と話したくなくて外出と言い出したのかと勘繰ったが、違うようだ。押入れを示されて中を見る。腰巻きも勝手に借りて、適当に長着を見繕って袖を通し、腰紐で留める。手甲に棒手裏剣を何本か隠して、髪は高くまとめて櫛と簪で留めた。髪を覆うように手頃な手拭いを被る。
ほーっと私を見て、伊作が感心している。
「仙蔵って、美人だね。」
「今日知ったのか?」
ぷはっと笑う伊作がこっちを見る。
「初めて会った日から、見るたび思ってるよ。」
目を細めて、幸福そうに微笑んで、伊作は私を見ている。
ふぅん、と伊作へ顔を向ける。
まあ、そうなのだろうか。冗談でも言いそうだが、伊作は冗談があまり上手くない。そして実際に、綺麗だ、と、よく言ってくる。
他の者にもよく言って聞かせよう。伊作は素直で可愛いし私を褒めるにもそつないぞ。それに比べてお前はどうだ、当たり前みたいな顔をしおって。
「生まれた時から美しかったからな。」
「そうだろうね。赤ん坊の時からとびきり美人だったんだ。」
そのまま受け取ってニコニコしている伊作が、いよいよこそばゆい。
「
……
出発するぞ。」
照れ笑いなんか出さずに、少し足早に部屋を出た。籠を背負って、伊作も足並み早くついてくる。寝巻きでなんとか出てきた寝惚け眼の小松田さんに出門票を出してもらって記名する。
そうして私たちは、伊作の隠し湯を目指して出発した。
途中までは道があり、小さな団子屋があって寄り道をした。気付いていなかっただけで腹は減っていたようで、お澄ましと焼いた餅を出してもらって、それが随分美味しかった。
伊作は顔馴染みのようで、会計の後に店主のおじいさんがいつものをあげようと言って竹皮で包んだ握り飯を2つくれた。代わりに伊作は紙で小さく包んだ薬包をいくつか渡して、これが胃薬、これが安眠、と説明をして、店を出た。
「薬草採取でこっちに来るのか?」
「そう。あっちに降りると村があるし、さっきのお団子屋さんは保健委員の子をみんな連れてきてるから定番ルートだよ。」
あまり知らないエリアだ。地図上では知っているものの、実際に歩くと解像度がぐんと上がる。
保健委員会は低学年が多いからか、伊作が優しい性格だからか、団子屋の店主は心を開いていて私にも親切だった。
「ずっと前からあんな店があったのか?」
「来るようになったのはここ1年かなぁ
……
。もっと早く紹介すれば良かったね。」
長屋ではよく話すのに、休みの日に一緒に出かけることが減っていたと気付く。委員長となって後任育成に気を向けるようになったからか。
「次は六人で来よう。」
「そうしよう。店長さんも喜ぶよ。」
ニコニコと話していた伊作が不意に、辺りを見回す。
店から少し歩いただけのまだ何もない山あいで、ガサガサと藪に入っていく。
伊作の歩いたすぐ後ろに足を踏み入れると、膝上までの草は茂っているが獣道になっていた。ヒエかススキか、ちくちくと返しを感じる細く長い葉が小袖に引っかかる。
「ついてきて。もう、そんなに遠くないから。」
うん、と応えて後ろを歩く。遠くに水音が聴こえる。薮に生えているものが笹になって、ドクダミになって、樹齢の多そうな木が増えて、突然、木陰の先が湯気で満ちた。
少しの下り坂を降りると『休憩スペース』らしき真新しい小屋があって、そこからすのこで繋いだ先に滔々と溢れる温泉が現れた。あまり目立つ匂いはなく、植物を湯掻いたように仄かな青さのある透明の湯が湧いている。湧かしっぱなしにしているのでなく、木枠が組まれて湯船になっている。
「すごいな。上等な湯治場みたいだ。」
五、六人ならゆったり入れる手頃な広さで整えられている。傍らに手荷物を置けそうな、腰の高さの卓が備わっている。葉が落ちていない大樹が近くに枝を伸ばしていて、遠目にはここに隠し湯があるとわからなそうだ。午前中の白っぽい太陽が枝葉に遮られながらも、水面をキラキラ光らせている。
「僕は注文ばっかりつけただけで、殆ど留三郎と小平太がやってくれたんだよ。」
「源泉を見つけたのはお前の手柄じゃあないか。それに完成図がなければこの空間にはならないさ。」
えへへ、とはにかむ伊作が、湯船に歩み寄る。手を入れて、その濡れ手の湯を嗅いで、少し舐める。
「今日も適温だ。早速入ろう!」
小屋の引戸を開けて、伊作が中に入っていく。床束で一段上げた板間になっていて、火鉢でも置けば一晩くらいは秋冬でも泊まれそうだ。
背負い籠を置いて荷物を出し始める伊作の隣へ行ってみる。風呂敷を広げて並べられたのは、手拭い六枚、手桶一つ、さっきもらった握り飯二つ。
伊作はさっさと着衣を全て脱いで、手拭いを一枚腰に巻き、四枚の手拭いと手桶を持って
「先に行ってるね。」
と、小屋を出て行く。ああ、と応えて私も着衣を脱ぎ、手拭いを腰巻きにして小屋を出た。
すのこのおかげで裸足でも痛くない。ひたひた歩いていくと、伊作は念入りに掛け湯をしていた。明るいところで見る伊作の裸は健康的で、記憶の姿よりも肩がしっかりして見えた。
はい、と手桶を渡してくれて、伊作は先に湯船に入る。ゆっくり身体を沈めながら、ん〜〜〜
……
と小さく唸る。
「
……
なんだ、熱いのか?」
少し警戒しながら掛け湯をするが、まあ適温、という感触だ。さらっとした泉質で気持ちが良い。腹から胸あたりにかけて撫で洗う。ほんの少しぬるつくのを、手のひらで確かめながら流してゆく。
「
……
はあ
……
、いい湯だよぉ
……
」
温度が馴染んで脱力した様子を見て、ぷっと笑ってしまう。
「お爺さんみたいじゃないか。」
湯船に入る。湯温は高くないが、私の冷えた足にじわっと熱が伝達してゆく感触がわかる。ゆっくり身体を沈めて、湯船の底に体育座りになる。胸下ほどの水深で、ゆっくり脚を伸ばす。
「仙蔵って、何しても綺麗だなぁ
……
」
「お前だって可愛いよ。」
木枠に寄りかって、肘をかける。
「あっ、
……
昨日、百合の何かをつけてた?」
ハッとした顔の伊作に、へえ、と感心する。
昨夕風呂を終えたあたりで、冬咲の百合をもらったと騒ぐ学園長先生を手伝って鉢植えの世話をしたのだった。いくつも蕾がついて立派な鉢植えだった。咲き切った一番大きい花が、花粉を零して見てくれが悪かったので切り取った。華やかな香りがあの時は勿体なく感じて、部屋に持ち帰って、髪を拭きながら暫く眺めた。萎びてしまったので、伊作の部屋に行く前に捨ててしまったが。
「鼻がいいな、確かに百合をいじったよ。華やかで香りがいいから、零れた花粉を首筋に撫で付けておいたんだ。」
ついっと伊作が顔を寄せてきて、首筋を嗅ぐ。
「
……
もう香ってこないかも。」
「一晩経てば飛ぶものだろう。」
くんくん、首筋に匂いを探されてくすぐったい。伊作の丸い頭が、こてんと私の肩に寄せられる。
「
…………
昨日、泣いちゃった。ごめん。」
言わないかと思っていた。
少し驚いて、けれど伊作の背に触れる。できるだけ優しく添えるように。
「身体を開くのだから、揺らぐ事もあるさ。普段持っている理性を、こじ開けたのだもの。」
わるいこ。
さみしんぼ。
いやらしいこ。
はしたないこ。
あさましいこ。
私が挿入して抽送を始めてから、様子がおかしかった。伊作は身体は開いて快楽を享受しているのに、泣き崩れて言葉が幼くなった。
自分を悪く責めて、泣きじゃくりながらも性感に震えていた。行為をやめたがるようなことは一つも言わず、何度も何度も謝っていた。
「色って、どうして『色』っていうのかと不思議だった。僕には真っ暗で、怖くて、不安なものだった。」
聞きに徹しようと、小さく相槌を打つ。
「八歳だったんだ。」
胸が詰まる。
「お寺で、生活させていただいた頃が
……
あって、そこで
……
」
言葉が途切れ始めて、私は両腕で伊作を抱き寄せた。
「寺の教えといって、
……
始まった、けど、
……
せ、折檻の、ときも、あって
……
」
無言で、時々頷く。具体的なことを言われなくてもわかる。坊主といえど、みんなまともではない。仏の言葉を伝えるふりをして、結局は男だ。臭い汁を垂らす獣が袈裟を着ているだけということも往々にあるだろう。
「だから、
……
仙蔵が
……
よ、良い子って、
……
いいことだって、わるいことなんか
……
ないって
……
」
悪い子だと難癖をつけて犯されたのだ。言われなくてもわかる。委細を話されずとも、私にはわかる。
「私は、十歳だった。」
ぎくりと、伊作の身体が強張った。
きっとこれだけで通じる。望まない色がどれだけ不愉快で気色の悪い事と、私が知っている事を。
「そいつが卒業した年に、殺してしまった。」
ばちゃ、と水音が立つ勢いで伊作がしがみついてきた。その身体をきゅうっと抱き締めた。
「殺しに行こう。もう大丈夫だ、私たちは」
ちょっとした男を何人か消すくらい訳ない。
喉が爛れるような絶叫を吼えさせることだってできる。
一つずつ体の端から骨を砕いていくことだってできる。
血の全量が流れ出る様を見せてやることも簡単だ。
股ぐらに塗り付けられた泥を、もう洗おう。
可愛い伊作。
優しい伊作。
私たちはお互いに、一番やわらかくて温かい場所を触れ合わせている。
もうお前を、泣かなくて良いようにしてあげる。
つっと頬を撫でてやるとそこは温かく濡れていて、しがみついた伊作の腕が緩んだ。少しだけ身を引いて、口付けをした。伊作は涙で睫毛を束にしてしまって、しぱしぱと伏目がちに瞬きをする。
「どうして
……
って、思ってたんだ。」
困ったような眉で、ぱちりと開いた瞳で、私を見る伊作。くしゃっと笑って、私の二の腕に触れる。
「同じところにいたんだね。」
「そうだ。私たちは、同じところにいる。」
どちらからともなく口付け合って、舌を絡めた。こんな話をしていても、じわじわと身体が熱くなる。
同じところにいて、その姿に気付いていなかった。
今、知った。
いや、ずっと前から、無意識下では気づいていたのかもしれない。
唇を吸うことも、身体を抱き締めることも、肌を合わせることも、伊作が相手ならば違和感がなかった。
私の上で腰を振る男を、心のどこかでくだらないと思うことがあった、それが伊作には湧かなかった。
気に入った男に身体を開いたときの薄暗い申し訳なさを、伊作には殆ど感じなかった。
私は、宿題で伊作と寝る事態になったことが嬉しかった。
まぐわうまでの仲にはならないまま、気分や手遊びで口付けあうこの男に興味があった。恋愛感情ではない何かが、私とこの男の間にあると感じていた。ずっと、寝てみたかった。けれど、雑に誘って軽蔑されたくなかった。くだらない臭い獣だと思われたくなかった。
「仙蔵と過ごすの
……
全部気持ちいい。全部安心する。」
「私も、同じだ。」
「今も、
……
したいなあって、思ってる。」
伊作は。
伊作は、くだらない臭い獣ではない。
「言わせてすまない。私も、
……
したい。」
「ううん。昨日来てもらってもう一度することにならなかったら、僕はまだ、僕を汚いと思っていたから。」
視界が歪んで、あっという間に頬を熱いものが伝った。
「いいこと、しよう、仙蔵。」
噛み合うように口付けをして、舌を絡めた。伊作の丸い指が私の背をくすぐる。どうして私は涙を流しているんだろう。つっとなぞる指先が肋骨のカーブを確かめている。脇を指先が伝う。すりっとくすぐられて、背中が震える。
伊作の右手が、私の胸をなぞる。中指が乳輪をなぞって、乳頭の側面を掠める。
「んっ」
お互いの口付けの合間で声が漏れる。私も伊作の胸に触れる。右手でさらっと撫でて、胸全体をごく軽く摩擦する。触れ合う唇の間で、伊作も鼻裏を鳴らしている。
温泉の温度があるせいで、まだ愛撫はささやかなのに身体が熱い。伊作も気がついているようで、私の汗ばんだ額を濡れた手で拭った。
「少し、熱いな
……
」
「うん
……
、お湯からは出よっか。」
ああ、と応えて、先に伊作が立ち上がる。湯船の外に手拭いを絞る伊作の前に手を伸ばす。くぼんだ臍。柔らかい肉質。薄い腹。栗色の毛は短くて、殆ど生えていない。その、濡れそぼった申し訳程度の毛並みをくすぐる。
「わ、ちょっ
……
」
膝立ちになって、そこに唇をつける。まだ柔らかな亀頭に優しく触れて、むにっと揉んで。先端を口に含んで見上げると、唇を結んだ困り顔の伊作と目が合った。
そのまま、ぬろっと咥え込む。
まだ昼前の陽の中で、奇妙さも感じながら口淫する。きらめく湯面、あたたかな木漏れ日。そこに真っ裸で、私は同級生の魔羅をしゃぶっている。
私の喉を目指すように、伊作が口の中で膨れてゆく。僅かゆとりのあった皮がぷっくりと膨れて、昨夜私の中を掻いていた雁首が段差を際立ててゆく。
はふ、はっ、と呼吸を乱して、伊作は何とか木枠に腰を下ろす。昨夜よりは腰が抜けない様子だが、ぽやっと瞳を蕩かせて私を見ている。
身体の真ん中でむっちりと魔羅を反らせて私の肌を見る伊作には、どうしてか気色の悪さは感じなかった。
可愛い私の仔犬が、私を見て欲情している。
「仙ぞぉ、
……
こっち、きて。木枠に、乗って
……
」
ふらっと私の手を握る伊作に引き寄せられる。示されるまま隣に腰を下ろす。
「後ろ、見せて。」
手のひらほどの幅がある木枠に腰掛けて、私は左腕を下にする格好で伊作に身体を開いた。手拭いで腹から胸を隠してみたが、湯温で赤くなった境目がわかるくらい透けている。
木枠の外から、伊作が一味入れほどの小さい壺を拾う。
「
……
ん?」
蓋を開けて、伊作が手のひらにとろっと金色の液体を垂らす。
ふわっと甘く、知った匂いが立ち上る。
丁子油の、甘くてからい匂い。
「それ、お前
……
」
「だ、だって、二人きりで、
……
そうなるかもって
……
」
恥ずかしそうに真っ赤になった伊作が、叱られた子供の顔で言い訳がましく説明する。
私も耳が熱い。
朝からこの男は、私を抱くかもしれないと思いながら、にこにことハイキングがてらここに連れてきたのか。
「阿保っ、助平!」
きゅう、としょげた様子で目を伏せる伊作が可愛くて、仕様がなくて、心がほぐれてゆく。
「
……
私を、悦くしたかったのか?」
おずおず頷く伊作に、ふっと微笑んで見せる。
右手を開いた右内腿に這わせて見せる。
そのまま鼠蹊部を伝って、尻肉を掴んで見せる。
私の窄まりが外気を感じる。
伊作が私の内側を見ている。
「塗ってごらん。」
ごくりと唾を飲む気配がする。
伊作は右手中指にぬとっと油を纏わせて、私の窄まりに優しく触れた。指の形よりも内側に収まった丸爪はどこにも引っかからない。爪を自ら丸めた、狼に成りきらない私の仔犬。
細く息を吐く。
指が侵入ってくる。
肉襞を縦になぞって、伊作の指が私の中を探っている。
私の好きなところはすぐそこにある。
「
……
ぁ 」
ひく、と括約筋が締まる。
ぐる、と腹側を半周撫でられる。
歯噛みしても、喉が鳴く。
もう半周背側を、伊作の中指が擦る。そのあとは手のひらを空に向けて、馴染ませるように小さく揺らしながら、抜いて、侵入れてが繰り返された。ゆっくり確かめて、なるべく奥へ油を塗りつけている。
「
……
ふ ぅ
……
んぅ
……
」
昨日の性感が呼び起こされる。凝った事をしなくても、私の身体はあの時間を反芻している。眉を顰めてしまう。湯船から出たのに顔が熱い。慎重に肉をなぞる伊作が、身を屈めて私の胸を舐める。
「 あ 」
腹にかけた手拭いを押しやって、油に濡れた伊作の左手が私の魔羅を捏ね回す。
「 っ♡ ん、んんんっ」
ぶるぶるっと細かく身体を震わせて耐える。
射精感がぞわぞわと迫り上がってくる。息が乱れてまとまらない。どうしてか当たり前に欲しい。そこにあるむっちりと膨れたそれを、指の代わりに収めてほしい。
「 いさ、」
呼ばれた、と視線を私に向ける。伊作の瞳は潤んでいて、ふー、ふー、と興奮に呼吸を乱している。
「も
……
、指じゃ足りなぃ
……
」
「僕も
……
、挿れたい、仙蔵」
ぬちゅ、と粘着質な濡れ音がして私から指が抜ける。じんじんと疼いて、息が乱れている。伊作の魔羅をじっと見てしまう。熟れて膨れた杏色の亀頭。透明な汁がたらりと糸のように、木枠を流れる湯面に引っ張られている。
私の指にむにゅっと開かれた尻たぶに、伊作の亀頭があてがわれる。私の窄まりに先端が埋まる。二人でじっとそれを見た。ゆっくり雁首まで収まって、竿が埋まっていって、もう絶えられなかった。
誰もいない山あいだから。
水音が絶えず聞こえるから。
木々が鳥の生活で揺れるから。
開いた口からそのまま声が出ても、もう良かった。
伊作が木枠を跨いで、長く深く抽送する。私の右脚を抱えて、もっと挿入りたいと言わんばかりにぐりぐりと奥を掻き混ぜる。
「おく ぅ ん、んっ あぐ」
「きもちぃ
……
仙ぞぉ
……
」
「きもち ぃ きもちい、きて」
きて。して。ずぽずぽして。奥好き。気持ちいい。きもちいい。いさのまら、わた しの なか かいて、 まぜて
まぜて
まぜて
ぐちゃぐちゃして
はなさないで
ぞぐん、とひとつ波を感じて、堪えられず達した。
ぴゅうっと射精した私の体液が、伊作の唇、左顎、左鎖骨を繋ぐようにかかって、ねとっと垂れる。浴びる瞬間ぴくんと目を瞑った伊作が、ゆっくり瞼を開けて、唇に垂れ流れる汁をぺろんと舐めた。
「手
……
つなご。」
性感に震える私の右手指が伊作の左手に絡めとられる。手のひらを合わせる格好で指を絡めながらがっちりと握り込まれて、湯船に崩れ落ちそうな身体が吊られる。脈拍と同じような速度で伊作が腰を揺する。
閉じられない私の口から、あ音の嬌声が出続ける。
「気持ちぃね
……
♡ぼくも、きもちぃ、はなさない、ここにいるよ
……
」
「あ ぁ、ま だぁ でるっ♡ あっあ あ」
ふわふわと微笑んでガツガツ突く伊作が、ふっと眉を寄せる。きっと子種を私の胎に吐く。その表情に当てられて私も達してしまう。目を細めて、私の瞳を見つめて、ぶるっと震えて、ぐんと奥に腰を打ち付けて、びゅくびゅくと胎に注がれる感触が堪らなくて、全身が粟立つようだった。
やっと行為が止まって、木枠に仰向けで脱力する。息が荒くて、自分の胸が上下するほどの呼吸がなかなか落ち着かない。
ぬろっと魔羅が抜ける感触にひとつ声を上げてしまう。伊作と繋いだ手が離れて、たらんと木枠の外に右手が垂れる。
ふー、ふー
……
と、うまく息を吐くことに集中する。
覚束ない指先を伊作に伸ばして、顔に引っ掛かった私の体液を拭ってやった。
「
……
少し、待て
……
」
はふはふと息を整えようとしている伊作が、何とか声を出した私を見る。
「息が、整ったら
……
抱いてやるから
……
」
伊作は固まって、目をまんまるに見開く。
恥ずかしそうに目を泳がせてから、私を改めて見る。
「
……
いいの?」
ふはっと笑ったけれど、伊作は何か言いたげに唇を動かして、少し俯いてしまう。
「私もしたいと言っただろう?油もあることだし。」
油、と聞いて真っ赤になって顔を上げる伊作が、抗議の眼差しで見つめてくる。痺れるような快感が残る身体を何とか起こして、手拭いを胸から腹にかけなおす。ひたひたの温かい湯が、布から肌を透かして貼り付いている。
「
……
そうだ。お前、普段どうやって支度しているんだ?」
「普段
……
?」
「閨の支度。」
口をぱくぱくして、伊作は真っ赤なまま何かを言おうとする。
「忍務で請けているのかと思ったが、お前は金回りが悪いし、休みの前の夕刻に外泊で出掛けたりしているし
……
」
「うっ
……
忍務、だって、ある
……
けど
……
、う〜ん
……
この情報交換、すると思わなかった
……
」
さらっと言えない調子でもごもごするが、ふう、と一つ息を吐いて観念する。
「指と、
……
小さめの、張型も
……
たまに。」
「張型、持っていないな。どんな素材だ?」
「陶器。」
へえ、と感心してしまう。
「
……
どんな具合だ?」
「
……
せ、
……
仙蔵の方が、よっぽど良いよ。」
「それはそうだろう。具合の種類の話だ。」
湯船の外に隠すように置かれた小さな油壺を拾う。木枠を跨ぐ格好の伊作を顎でつっとしゃくる。
腹を上にして、伊作はあっさり身体を開く。小さな傷が治ったような痕は多いものの、致命的な怪我をしてこなかった伊作の身体。生来肉が付きにくい体質なのだろう、伸びやかで、関節の柔らかさの方が特長だ。
私が油壺から右手に丁子油を垂らすと、伊作は左脚を自ら抱えて、私に全部を見せてくれた。
「うーん
……
、硬くて
……
冷たいから
……
」
伊作の尻たぶの間に油を塗り込む。ぴくりと反応するのを指先に感じて、くにくに窄まりに馴染ませる。
「温めておけば良いんじゃないか。陶器なのだし。」
つぷ、と指先を埋める。ぐ、と伊作の肉襞が力んで、弱まる。ゆっくりと呼吸に合わせて、開閉するような括約筋の圧に合わせて、進めて、停める。中指と人差し指が、まとめてゆっくり伊作の中へ収まってゆく。
「ゆ せん、冷めちゃ
……
って
……
」
「使ってやろうか。」
びくりと震えて、肉襞が狭まる。
「っう、
……
は、恥ずかし よ、」
本当に恥ずかしそうに、唇を震わせながら伊作がぽつぽつ言う。手のひらを上にして、そこに丁子油を垂らす。人差し指と中指の谷を使って、伊作の中へたっぷりと油を馴染ませる。柔らかく滑らかに奥へ侵入って、伊作が身悶えする。
ぴん、ぴんと伊作の魔羅が膨れて、腹の上に反り返る。
ゆっくりと抜き挿しするごとに、んー
……
と喉で鳴いて、腰を捩らせる。
「折角あるのに木偶の坊なのは勿体無いじゃないか。」
「せん ぞぉが、いるのに
……
にせもの嵌めるの
……
?」
はあっと甘い息が、寄せた眉根が、潤んだ瞳が、私の頭蓋の内側をくすぐってくる。
吐き切ったはずの胤が、私の雄が、じわじわと腹の底から湧いてくる。
この男が腎張なのは間違いないが、こうも私が枯れずに猛ってしまうのは何故なのか。
この身体がうらめしい。
どんなに憎んでも、見限っても、私の中にも獣がいる。子種を蒔くために身体中の気力を、無意識に私の肉体は集めてくる。
ただ、
ただ、その衝動の最後の一押しが、
支配欲でありませんように。
征服欲でありませんように。
理性を欠いたものでありませんように。
この男を可愛く思う、友愛でありますように。
「そうだよな。」
うん、と頷く伊作はどこかほっとして甘えた口元をしている。
「折角目の前に居るのなら、繋がりたいな。」
眉を下げて、緩んだ目尻で、愛おしそうに微笑んでいる。耳から頬、鼻先を一続きに血色良く上気させて、胸元に絞った手拭いを握り締めて、臍の下に魔羅を反らせて、伊作が私を迎えようと待っている。
ゆっくり指を抜いて、私の魔羅を伊作の窄まりに当てがう。
「私も
……
」
首を起こす伊作に見つめられながら腰を進める。一度も引っかからず、私が伊作の胎に収まる。
「私も
……
、そうだよ。」
二人でその繋ぎ目を見つめて、息を吐いた。
ふ、ふう、と胸を上下させて、うっとりと融けた瞳の伊作が、私の腕にちょんと触る。すぐにその右手を取って、握り込む。指を絡める。トントン突き上げる。
「あ♡あっ♡あっ♡ああ♡あ♡あっ♡」
伊作は腹側が好きと言っていた。
「ふぁっ♡!!あ、
……
あっ」
伊作は私のかたちが好きと言っていた。
「やっ、あっ、でた もうだめ、せんぞ」
伊作は張型よりも私を具合がいいと言っていた。
「いや、あっ♡あ、あ、 も、」
伊作は、
伊作は。
びしょびしょに鳴いて、洟も垂れて、涎も垂れて、何度と迎えたらしい絶頂にぴゅるぴゅると汁を垂らして、かくっと膝を笑わせて、胎をきつく絞った。
私はその、ぎゅっと震える伊作の中深くに胤をつけた。
脱力した伊作を抱いて、どぽんと湯に身体を傾ける。
糸のほどけた操り人形のようにかくんと意識を手放した伊作を、湯の浮力に揺蕩わせながら抱いて、目を瞑った。
ああ、
この心が
友愛でありますように。
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