2025-03-27 07:53:15
2192文字
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鼓動

現パロ転生ifノア指。2人とも記憶は無いけど魂のどこかでは構造体であったこと、指揮官であったことを微かに覚えてる感じです。
指揮官の一人称「私」、性別は特に決めてないのでお好きな性別で読んでいただければ幸い

 ごうん、ごうん
 ぽこ、ぽこ
 ごー、ごー……

 様々な音が耳元で聞こえる。どれも何か筒状の物の中を水のような液体が通っていくような、そんな音。
 あたりは何も見えないが手を伸ばしてみると金属のようなものに触れた。おそらく音の正体。
 冷たいとも温かいとも言えないその感覚は不思議と心地が良い。


 一体何の音で、何を触ったんだろう。


 幼い頃から時々見るこの夢はその疑問を持った瞬間に覚めてしまう。



 春。新しい生活が始まる季節、私もまたその1人だ。
 学生時代から付き合っていた彼──ノアンと同棲を始めることになった。私は以前から一緒に住みたいと言っていたが、真面目な彼は「卒業してからにしよう」と譲らなかった。そういう誠実なところもまた好きなところの1つだ。


 桜が咲く街をノアンと歩きながら新生活に必要なものを買っていく。ただ歩いているだけでも幸せなのに、これから一緒にいられるんだと買い物かごに入っていくペアの雑貨品を見ながら改めて実感する。ちょっとそわそわしてきた……

 そんな様子をノアンは見逃すことはなく、買い物を終えて片手に荷物を持ち、すかさずもう片方の手を私の手に重ねてきた。
 いきなりのことで驚いてノアンの顔を見ると、優しい微笑みを返してくれる。

「今になって実感が湧いてきたかな?」

 図星を突かれて思わずギュッと手を握る。顔が熱い。まだ春なのにもう夏が来たみたいだ。
 それでも私は小さく頷き、素直に「うん……」と答えた。彼は先程よりも嬉しそうに笑いながら手を握り返してくれた。ただ、それだけの事なのにとても幸せを感じた。

 あたりがすっかり暗くなる頃には買い出しを終えて私たちは新居に帰り着いた。少し狭いが2人で暮らすには申し分ない広さだ。
 夕飯を食べ終えてテレビを見ながら会話をする。今日はずっとぽかぽかと幸せを感じている。ふとノアンの顔を見たくなって顔を向けると目が合った。

「どうしたの?」
「いや、なんだか君の顔が見たくなってしまって。すごく幸せだなぁって」
「ふふ、そうだね。私も同じことを考えて……

 話してる途中の口にそっとノアンが唇を重ねてきた。突然のことに一瞬固まって、気づいた時には火が出てるんじゃないかと思うくらいに顔が熱かった。

「君はいつも可愛いね。これから一緒に暮らしていくんだから毎日そんなに照れてちゃ持たないよ」
「だって……!」
「本当に君に出会えてよかった。こうして幸せを感じられる日々を過ごせるのだから」

 そう言って私の手をノアンが取ると手の甲に唇が触れた。彼に触れるところが全て熱い。

「私もノアンと出会えて良かった。改めてよろしくね」
「もちろん」

 そう言って私たちは再び唇を重ねあった。



「ノアンのこと蹴っちゃったりしないかな……
「大丈夫だよ。ほら、早く」

 横になったノアンが布団を捲って私を呼んでいる。布団は2組あったが、ノアンがどうしても一緒に寝たいと言い出して結局私がその条件を飲んだ。

「私が布団剥ぎ取ったりしたらちゃんと剥ぎ取り返すんだよ?」
「あはは、君が寒くないなら僕は構わないよ」
「私が構うんだよ!」
「良いから。もう遅いし寝よう」

 1人用の布団に2人。ノアンは私をしっかりと抱き寄せた。好きな人にそんな事されれば鼓動は速くなる。

「すごい音するね」
「ノアンは平気なの?」
「そんなことない。ほら」

 ノアンは私の頭をそっと彼の心臓へと抱き寄せる。

 とくとくとくとく……

 少し速いテンポで彼の心音が聴こえる。

「お互い緊張し過ぎだね」
「でも、不思議と安心する。君と一緒にこうやって眠るのがなんだか初めてじゃないみたいだ」
「そうだ…………

 ふと、あの不思議な夢を思い出した。あの謎の音、謎の感触。そうか、あれはこうやって抱き寄せられていたんだ。

 ごうん、ごうん
 ぽこ、ぽこ
 ごー、ごー……

 とく、とく、とく、とく……

「どうしたの?苦しかった……泣いてるの?」
「え?」

 ノアンに言われて自分の目元に手を持っていく。確かに涙で濡れていた。
 自分でもよく分からなかった。でも、涙が止まらなかった。彼の腕の中で泣いていると頭上から鼻をすする音が聞こえる。彼もまた泣いていた。

「はは、僕も泣いてしまった」
「大丈夫?」
「君の方こそ大丈夫かい?」
「うん……ありがとう」

 ぽんぽんと背中をリズム良く叩いて落ち着くのを待ってくれた。心地よいリズムにどうにか涙は収まった。

「ノアンの鼓動を聞いていたら、ずっと昔からこの音が聞いてみたかったと思ったんだ。ちゃんと生きてる、ちゃんと私と一緒にいる。そう感じたら幸せ過ぎて涙が出てしまったんだ。当たり前のことなのに、すごく、幸せで」
「僕も同じだ。君が僕の腕の中で安心してくれてる、同じように心臓の音を聞きあえるなんて幸せだなって」
「ふふ、私たち似たようなこと考えてたんだ」

 お互いに目を赤くしながら笑いあった。さっきまで泣いてたのにおかしいね、なんて言いながら。


 とく、とく、とく……
 とく、とく、とく……


 2つの鼓動が重なる音を聴きながら私たちは眠りについた。


 もうあの夢は見なくなった。