四季は四度巡りて

MHRウ教×ハ♀。夫婦。
ウ視点。

Rise4周年記念日作品。

ほんのりと霞んだ朧月おぼろづきが、たたら場の屋根上に並び座る俺たちを見下ろしていた。

狩猟を終えたキミと、任務を終えた俺が、一日の重圧から解き放たれることのできる時間。

「ねえ。四、って数字で何が思い浮かぶ?」

唐突な俺の質問にもキミは動じることなく、すっかり慣れた様子で「そうですねぇ」と首を傾げる。

「うーん……四季、とか?」
「なるほど、おもむきがあって綺麗だねえ」
「教官は?」
「俺かい? 俺はね、記念日」
……え?」

目を丸くしたキミの顔を真っ直ぐ見つめながら、俺は口元を覆う鎖帷子を片手で下ろし、口角を上げて、にっこりと微笑む。

「今日は、キミがハンターとして独り立ちして四年目になる日だよ!」
……え」

驚いた様子のキミの目は『よく覚えてますね』とでも言いたげで、とても可愛らしい。

俺はそんなキミの頭に手を伸ばし、ゆっくりと一度だけ、大きく、優しく撫でた。

「おめでとう、我が愛弟子よ。キミが無事に、ますます強くなっていることが、俺は本当に誇らしいよ」
「ありがとうございます。でも、私、まだまだですよ」

「それは俺もだよ。これからも一緒に頑張ろうね、愛弟子! 何年経っても、俺はずっとキミの『ウツシ教官』だからね!」

最後の言葉に特に反応してくれたキミは、幸せそうに口元を綻ばせながら「はい!」と元気に、大きく頷いてくれた。

可愛い愛弟子。そんなキミは、俺の最愛の人。
将来を誓い、夫婦のちぎりを結んだ大切な、かけがえのない愛しい妻。

夫婦で並んで、安寧と桜雲おううんに満ちた郷里を眺めているうち、俺はふと、小さく口元を綻ばせた。

「結婚して四年目になったら、また、ここに来ようね」
「四年目に? どうしてです?」
「その時に話すよ。今日の『四年目』は、キミの記念日だからね」
「えー、気になるのに」
「ふふふ……大丈夫だよ、四年なんてあっという間さ。すぐに分かるよ」

少々不満そうに唇を尖らせて「むう」と唸るキミも、格別に愛らしい。

俺が明確に答えないであろうことを悟ったキミは、気を取り直すように足を伸ばすと、視線を俺と同じように里の桜雲に向けた。

共に守り抜いてきた郷里の象徴たる桜は、特別に美しく、疲弊した人の心を優しく包み込んでくれる。

「あっ、花びら」

ふわりと吹き上げた風に乗り、上まで舞い上がってきた花屑。すっかり歴戦の強者ツワモノとなったキミの手は、それを容易たやすく掴み取った。

「ふふふ、綺麗。桜って凄いな、小さな花びら一枚にも癒されますねぇ」
「そうだね。本当に……綺麗だ」

愛しいキミの横顔を見つめたまま、思わず、息を飲みそうになった。
霞んだ月明の下、桜の花びらを手にして、たおやかに微笑むキミの、何と美しいことだろう。

「四年目は……やっぱり、桜が良さそうだね」
「え? 何です?」
「ううん……何でもない」
「もう」

呆れたように笑いながら、キミは手にした花びらを月に掲げ、風の中へ解き放った。

四年前の、今日。

キミもあの花びらのように、ハンターとして外の世界へ飛び出した。

そして鮮やかに、強く、美しく、爛漫に咲き誇る、後世まで語り継がれるであろうほどの大花となった。

そんな花をすぐ隣でで、教官として、夫として守り続けられることの、何と幸せなことだろう。

「──愛してるよ、愛弟子」
「私もです」
「何年経っても、何があっても、愛してるからね」
「ふふふ。私も」

顔を見合わせて、穏やかに笑い合って。
そして、先ほどまで桜の花びらを弄んでいたキミの手を掴み、分け合うように温もりを感じ合う。

四年という歳月は、本当に、あっという間だった。

きっと、結婚四年目もそうだろう。

その時には、キミに相応しい花を。キミが守り続けてきた、共に過ごした愛する郷里の花を贈るよ。

花婚式という記念すべき日は、今日見たような、格別に美しい桜色に彩りたいから。


@acadine