ろおね
2025-03-26 20:31:01
1916文字
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あなたのための小さな神様

民俗学を専攻している大学生の炎司が訪れた村で出会った小さな神様の話

※個性がない世界のなんちゃって因習村パロ
※ホがほとんど喋らない
※書きたいところだけ書きました。
※ホー炎要素はほとんどありませんが、後にホ→→→(←)炎になると思って(脳内補完必須)ください。




大学で民俗学を専攻している炎司は、研究のため山深いところにある村を訪れた。

村人は大層歓迎してくれて、口々に「あんたは良い時期にきた」と囃し立ててくる。理由を尋ねると村長と思わしき人物が侘しい村にしては立派な神社に炎を連れて行き、中に入ると年の頃七か八つくらいの子どもが上等な着物に身を包み置物のように座っていた。癖のある金色の髪に凪いだ瞳、薄ら笑いを浮かべた顔は整っており全体的に子どもらしくない。
「この子は?」
炎司が尋ねると村長は誇らしげに「生き神様だ」と言う。こんな子どもがなぜ?と疑問に思っシゲシゲと見やると見事な飾りだと思っていた子どもの背面にある翼がブワリと広がり部屋の中を赤い羽根が舞う。その神々しさに炎司が目を奪われていると村長は「生き神様は、今日は機嫌が良いらしい」とにんまりと笑った。
それから一週間後に村でお祭りがあるから是非それに参加してほしい村人達から乞われ、炎司は何か不穏なものを感じたがこんな山奥まできたのだからネタの一つや二つ持って帰らなければ、と渋々頷いた。

次の日から炎司は村長の了承を得て子どもの下に通い詰めた。人の背に翼などどう考えても異質、言葉を選ばなければ異形だった。そして何より気になったのは子どもの足に繋がれたソレ。
子どもの名前はケイゴと言った。親はおらず村の外れに捨てられていたところを拾われ、名前はその時に着ていた産衣に記されていたらしい。それからはこの神社の中だけで生き神様として育てられている。本来なら遊び相手になるはずの他の子ども達も神社には滅多に近づかない。
炎司は身体も大きく愛想が良いとは言えないため子どもから怖がられるのが常だったが、ケイゴは真面目さだけが取り柄の炎司のその性質をいたく気に入ったらしく、通って三日目には炎司の膝の上に乗り機嫌よく笑うほどだった。ケイゴは言葉は理解しているらしいが話さない。時折、喉の奥からキュイと鳥の鳴き声のような音を出すがそれもごくたまにで、もしかすると話すことを禁じられているのかもしれない。ここ数日の村の動向で数日後に行われる祭りがケイゴに関するものだと炎司は推察している。この村は年寄りが多く、長寿を強く信仰祈願する気があり、そして異形の子供、ケイゴは祭りの日に八つになるらしい。

「不老長寿」
「異形(人魚)信仰」
「七つのうちは神のうち」

民俗学を専攻していなくてもパッと思い浮かぶであろう言葉に嫌な予感が募る。
大切に育てられてきたのだろう肌艶の良い子どもらしい可愛らしさに不釣り合いな、太く重厚な足首に繋がる鎖。足首から外すことは難しいが繋がっている根本ならどうにかできそうだと炎司は見ていた。祭りまであと二日、行動に移すなら今夜がベストだ。
キュルキュルと人間には出せない音で膝の上で喉を鳴らすケイゴを見下ろし、小さな声で問いかける。
「ケイゴ、外に出てみたいか?」
こちらを見上げたケイゴは不思議そうに首を傾げる。
「俺はもうすぐこの村から出て行かなければならない。そうなるとお前にはもう、二度と会えないと思う」
金色の瞳が大きく見開かれ、炎司の自惚れでなければその目には哀しみが滲んでいた。
「けれど、お前が俺と一緒に外に行きたいと言ってくれるなら・・・」
ケイゴが自ら望んでくれれば、炎司はしがらみ無く実行に移せる。連れ帰ってどうするかなんてことは時間が無い、後で考えればいいことだ。
乞うようにケイゴの瞳をジッと見つめれば、炎司が何を悩んでいるのか分からないというように一切の戸惑いなく、それは嬉しそうに満面の笑みを浮かべたケイゴの口が「い・く」と形造った。


村人が寝静まった頃、鎖の根元を破壊する音だけを唯一残して炎司とケイゴは村を去った。
険しい顔でケイゴを背負い額に汗を浮かべながら山を走って下る炎司とは裏腹に、ケイゴは温かい背に頬を寄せその熱にうっとりしていた。
気まぐれに視線をチラリと上に向ければ木々の合間から見事な星空が覗いていたが、ケイゴにとって初めての満点の星もどうでも良かった。

つまらない世界から連れ出してくれた人、優しく不器用で温かな人、自分はずっと彼を待っていたのだとケイゴは生まれて初めて自分の意志で確信していた。





追手は不思議なほど来なかった。

ようやく山の麓まで下りた頃にふと上着で隠したケイゴの翼が心なしか小さく、羽が少なくなっていることに気がついた。けれど抱え直した腕の中ですやすやと気持ち良さそうに眠るケイゴの顔色に問題はなく、起こすのは忍びない。それならば少しでも早く安心できる場所に行けるように、と炎司は再び歩を進めた。