2025-03-26 00:15:24
1570文字
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Morning

ラシュ事後のシュの世話焼くカブ。ちょっと3人仲良し匂わせがある。


 朝の光が廊下に差し込んでいる。小鳥の囀る声と共に、城が目を覚ます。まだ微かにひんやりとした空気の中で、彼は扉を叩いた。返事はないが、鍵がかかっている訳でもなく、簡単に入っていける。ノックをするのは一応の礼儀だ。
……おはようございます」
 並んで、というよりは寄り添って眠っているふたりに声をかけてから、青年はそれぞれの額に敬愛の口付けを落とす。ひとりがそこで先に目を覚ました。ゆるゆると瞼を開けたその人の有様ときたら、初心な娘なら見れば目を逸らしてしまうに違いない。象牙色の肌にはあちこち赤い痕が散り、昨夜は何があったか一目瞭然である。
「顔洗います?」
「ん……
 盥にぬるま湯をはって持ってきた青年は、しかし顔色ひとつ変えない。この男ふたりがどんな関係であるかは、誰より重々承知しており、またそれを快く受け入れているからだ。
 顔を拭いている間に、そっと背中側に回り、濡らした布で肌に触れていく。この人は育ちが良いせいで他人に身繕いをされる事には抵抗がないと思っていたが、しかし子供の頃から慣れている相手ならともかく、同年代の男にそうされるのは流石に気恥ずかしさがあったらしい。増してや情事の痕が残る肌を、他人に見せるとなれば猶更だ。そんな抵抗も、今や随分薄れたようだ。それ程に彼らは親しくなったとみていいだろう。
 それと彼が、この誰かさんのよだれ塗れの身体を他の誰に見せるつもりか、と言い張ったせいもあるかもしれないが。
「あ~ぁ……
 見事に無駄のない背の筋肉と、張りのある肌。その上に、痛々しく赤い噛み痕が残っている。青年はその美しい顔をしかめた。
 首筋にひとつ、右の肩にひとつ。腰を強く持って何度も揺さぶられたとみえ、指の痕もある。傷という程の事でもないが、何もここまでしなくても、という印象は否めない。
「これ、痛くないんですか」
……痛くはない」
「噛まれた瞬間も?」
「うん……いや……覚えてない」
 声がまだ眠たげだ。気を許してくれているのは彼としても悪くない気分だが、多少の痛みは忘れる程に行為に溺れ乱れていた、と言ったのは理解しているのだろうか。彼は小さな溜息を吐いた。
「治して貰えばいいのに。つけた本人に」
 確か治癒の魔術の心得はあると聞いている。ベッドの上で、まだ呑気にも寝息を立てている金髪男にちらと目をやりながら、彼は首の噛み痕に指を這わせた。服を着てしまえばぎりぎり見えない位置にある。獣のなかには交尾をする際、雌を押さえつける為に強く噛みつくものもいるらしい、というのを彼は何となく思い出していた。
……これは……その」
 長い髪の合間から覗いている耳の先が、さっと紅く染まる。
「このままで、いい」
 確かめるように自ら首に触れる指を見て、彼は目を細めた。
 そういう事なら口出しする権利はない。考えてみればこの人はただでさえ遠くから来て、また遠くへ帰る人なのである。
――……そうですか」
 くすりと笑う。彼は少し想像を巡らせた。その肌に歯を立てる事を、隣の男はそれでも躊躇したかもしれない。若しくは衝動に任せて思わず噛んでしまい、後悔したかもしれない。しかし他ならぬこの人がそれでもいい、と言ったのだ。許された事を、どうしてしない道理があろうか。
 指が離れた痕の、隣に軽く口付けを落とす。可愛い、いじらしい人。上書きするのは流石に悪戯が過ぎるだろう。
 肩がびくりと跳ねた。
「長持ちするといいですね」
……っ」
 振り向いた彼の表情を見て、昨夜は独り占めさせて憎たらしい、と彼は思った。
 もう少しからかいたい気持ちをどうにか抑え、持ってきた着替えを羽織らせた。また気が向いた時にでも混ぜて貰えばいい、櫛を手に取りつつ、そんな事を考える。
 外はいい天気だ。