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haruon1018
2025-03-25 17:12:33
4315文字
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某昭和初期舞台漫画パロディー
エログロナンセンスノーパン漫画のパロディー長晋
以前、ワンドロさんで書かせて頂いた話の加筆版。まだ続きます。
昭和初期な世界観を舞台に巡査のmrくんと水劇(人魚衣装を着た俳優)の花形tksgさんが恋する話
tksgさんを少し幼めに書いてます。
※若干のぐだ♂マシュ描写があります。次回からはノブ蘭とngkrさん→イマジナリー魁先生描写が入ると思います。
次回からバンバン原作のネタバレは入ります(今回は薄め)
星燈国の町々にはそれぞれ特徴がある。
流水町の下げ雛、剣山町の花霧教にどこかは忘れたが美人姉妹で有名な花公園も存在する。では幻霧町で有名なのはと聞かれると、硬派な男はそれぞれの地区が心血を注いだ山車と答えるが陽気な男や女性は、水劇と答える。
水劇とは何かと云えば、人魚を模した女優が天女のように水槽の中で踊り芝居を見せるだけなのだが人々はそれに魅了される。
門を潜る男、森長可もその一人だ。
街を歩けば裏路地の勤め人だと誤解されるので非番でも肋骨服と警察帽子を身につけなければならない。
通い始めた当初は、不良の巡査がいると市民から苦情が来た者だが悪名高い幻霧警察署の鬼武蔵と知れば皆黙り込んだ。
検挙率も高く、町の権力者の私的な護衛もこなしている長可の機嫌を損ねてはならない、それに存外と人当たりが良く、見目も麗しい。
警察帽子から見える血潮のような髪に大陸の飴のように輝く瞳、精悍な顔立ちに相応しい彫刻的だが荒々しくもある肉体に魅了される乙女は少なくない。
だが乙女達は長可に恋慕しても叶わないことを知っている。
彼の目当ては水劇の花形である春風なのだから。
「お客さん、人魚の涙はいかが、」
水辺に畳を敷いた座席で寛いでいると長可は声をかけられた。
まだ芝居に出られない若手の人魚が小瓶に入った飲み物を抱えている。
長可は一つ貰おうと手を伸ばそうとすると、会場内がざわめいた。
水劇の舞台には大陸の凱旋門をもした巨大彫刻の中に水槽をはめ込み、その中で人魚が劇をする。
まずは顔見せと人魚が総揃いする中、いつものタイミングより早く登場した春風に長可はつい小瓶を受け取るのを忘れて魅入ってしまう。
梅が咲いたかのような紅色の髪に透き通る白い肌、売り出し中の人魚よりも瀟洒な尾には幾つもの宝石や螺鈿が鱗のように貼り付けられている。
人魚は花魁ではないので春を売らない。
そのため胸元にもびっしりと装飾品を纏わせる。
天使の羽のような鱗細工と花簪で頭を飾り付けている春風の本当の姿を知る人間は少ない。
ようやく気分が落ち着き、新米の人魚から飲み物を取ると蓋を開け香りを楽しんだ。
**
「森君、人魚の涙がほしいなら僕から買ってくれないと」
陸に上がった春風は尾を乾かし寛いでいた。
「てめぇはもう水路をうろつくような立場じゃねぇだろ」
「そうだけど森君なら良いよ、」
劇が終わり、家路へと向かう客もいるが目当ての女優を間近で見ようと楽屋の前で男達がうろついている。
だが夢を見せたい人魚達が顔を出すことは滅多にない。
人魚が尾を捨てて陸に上がるのは愛おし恋人に会うときか花盛りを過ぎて今後の行く末を嘆き、誰でも良いからと縋るときだ。
「ほーん、それよりも着替えなくていいのか」
「今回の衣装は僕の自信作だから森君にはもっと見てほしくてね、尾びれを自動化させてみたのだが、気づいた」
「だから後半でもへばらなかったのか」
「そこか
……
そうだよ、けど
……
」
「菊踊りは侘びていて良かった」
菊踊りは陸で舞を披露する女優が踊りの最中に菊の花を開花させる舞なのだが、着物に縫い付けた細工を客に気づかれないように外さなければならない極めて高度な踊りだ。
露出が高く常に水の中にいる人魚では不可能とされていたが春風は見事にやってのけた。
「だろ! これもうまく作動できて良かったよ」
「流石は晋作だな」
「今は春風なんだけど、まぁいい。そろそろ外に出たいしね、着替えるよ」
鱗を剥がすように胸飾りを取ればくびれこそあるが、膨らみのない胸が露わとなる。
「おい、」
「森君は僕が技術者の晋作でもあることを知っているだろ、」
粘度の高いドーランを毟るようにして取れば、白皙の肌が剥き出しになる。
「またそんなに塗りたくって、そんなことしなくても十分綺麗な肌しているだろ」
「そうだけど、僕の肌少しでも光が当たると赤くなるからね」
微かに赤くなっている鼻の先には目をこらさねば見えない星斑がある。
晋作はそれを気にしており、春風の時にはびっしりとドーランを塗り固めている。
市井の女性が使う白粉よりも毒素の強い水劇のドーランは長く使えば肺と脳を蝕む。
元々身体の弱い晋作は耐久性が低く、今でも咳き込んでいる。
「ん
……
ねぇ、森君、薬を頂戴」
鬘を取っても紅色のままの刈り上げた髪に書生風の姿。
春風の面影はどこにもないが春風が艶やかなら晋作は妖艶だ。
それも自覚がない上におぼこい仕草をするので危うさもある。
一度浴びれば狂ってしまいそうなギャップを長可は何度も味わっている。
「やるから擦りつくな」
膝の上で甘える晋作の額を叩くと長可は上着の裾の裏に隠していた小瓶を取り出す。
水劇で売られている装飾された瓶とは違い、何の変哲もない瓶の中には十数個の花で埋め尽くされている。
「あう、だって森君のそばに居るだけで元気になれる気がするから」
「そりゃそうだろ
……
」
長可はそっと晋作を起き上がらせると高杉の小さな唇に小瓶を押しつけた。
「残さず飲めよ」
「ん
……
ぁ、ン、ふ
……
くぅ」
花を飲み込む度に晋作は甘い息を漏らす。痺れるような男狂わせの声に長可は溺れてしまいそうになるが必死に耐える。
それは警察官という国家に身を捧げているというプライドよりも、まだ喰らうべきではないという理性が長可を踏みとどまらせている。
晋作は長可と同じ十七だ。十分に大人ではあるがこの少年に近い青年は世間というものをとんと知らない無垢な天使のような存在だ。
無垢を喰らっても仕方がない、長可は晋作が育つのをじっと待っていた。
「飲めたよ、それにしてもこの薬は凄いな、御陰で随分身体が楽になった」
赤紗と呼ばれる薬を飲んでから高杉の体調は劇的に改善した。
前はよく寝込んでは水劇の支配人から貰い損だと罵られたが、薬を飲むようになってからは罵声を浴びせられることもなく、こうして長可と会うことも黙認されている。
「着替えたんなら洋食屋でも行くか」
「うん、」
猫が喉を鳴らすような声と微笑みを浮かべた晋作は長可の隣を歩く。
「いらっしゃい、あれ森君に高杉さん、久しぶり」
お洒落な洋館の扉を開ければ、旨い匂いが鼻を擽る。
「よう、席空いてるか」
「はい、二名様ですね。奥の座席にどうぞ」
町では名の知れた料理人のエミヤが絶品料理が食べられる洋食屋は大盛況だ。
仕立ての良い背広姿の少年とメイド姿の少女は時々店を手伝うおしどりカップルで将来、自分たちの店を持つためにエミヤの店を手伝っているのだという。
「カツカレーと鯛のブイアベースです」
円卓に並べられた料理は長可と晋作がいつも頼んでいるメニューだ。
長可と会うまで水劇の楽屋奥で売れ残りの弁当を食べていた晋作にとって西洋料理は未知の存在だった。
何が食べたいと云われても聞いたことはあっても食べたことのない晋作は口ごもるばかりで、見かねた店主があれこれ好きな物を聞いてくれた御陰でこの料理に出会えた。
「美味しい、お出汁が良いよね」
「パンも食えよ、カレーも少し分けてやるから」
「森君はいつもカレーだね」
「食べやすいからな」
「そうだね」
長可のカツカレーも晋作のブイアベースもナイフを使わずに済む料理だ。
正式な作法など知らない晋作にとって掬って、刺すだけの料理はありがたい。
奥の座席にしか案内されていないので他の客がどんな風に食事をしているのか見られないが、晋作の作法を見られることもない。
最も藤丸が云うにはぶ厚いビフテキでも箸で食べる客がいるから心配することはないのだという。
食事を終え、町を散策した晋作だが門限の時間となった。
他の人魚達は水劇近くの借家から通っているが晋作の寝床は楽屋内にある。
そもそも晋作は正式な団員ではなく、どこかの捨て子だと支配人が事あるごとに恩着せがましい態度を取る。
その事情を知っている先輩人魚達は、晋作は蔑みはせずに哀れんでいた。
中には自分の家の小間使いに推薦してくれる先輩もいたが身体の弱い使用人はいらないと断られた。
人魚になる女優は中流階級の娘が多いが嫁入り前の娘は処女が当然という風潮の中で、女優という職業は男の出入りが激しく軽い女だと思われてしまう。
女盛りを前に想い合った殿方と添い遂げられなければ、中年を過ぎても舞台に立ち続けた結果ドーランの毒で、普通に働くことはおろか生活することも、ままならぬこととなる。
綺麗なのは水槽の中だけ舞台の裏はひどくドロドロとしている。
「晋作、一人で帰れるか」
「心配性だな森君は、そこの角を曲がって
……
」
曲がった後はどうするかふと思い出せなくなった晋作に長可はそっと肩を叩き楽屋まで案内した。
「次の満月の夜、てめぇを攫いに来る」
楽屋にたどり着くと長可は晋作の手を握りしめ真剣な目で晋作の瞳を見つめた。
「それは足抜けってこと、」
他の団員なら区切りを付けて引退できるが、晋作は支配人に育てられた恩がある。
金を返さねば他所で働くことは許されない。
春風として儲けてはいるがそれは最近のこと、それに衣装代だってバカにならない。
「金なら用意する」
無理だろうと高杉は首を振った。
春風ではなくただの晋作なら二束三文で済むだろうが、春風を引退させるには多額の費用が必要だ。
長可の実家が太いのは彼の持ってくる土産や料理屋での仕草で分かるが、支配人は強突く張りで、売れっ子の春風を手放すことはないだろう。
「晋作、オレは一度攫うと決めたモンは一度だって逃したことはない」
「っ
……
森君、」
長可の唇が晋作に触れた。これまで一度も長可は晋作をそういった目でみることはなかった。
春風の正体を知らない人間からは両刀遣いと揶揄されていたが、そのうちに揶揄うのが馬鹿らしいほど溺愛するので噂は消えた。
今は上級学校に通わせようとする酔狂なパトロンと書生という形で収まっている。
「巡査の言う台詞ではないぞ」
「それなら辞めるから問題ない、大殿、いや弟が世話になっている、いや成利が世話してるのか? とにかく帰れと云われているから問題ない」
成利という弟がいるのかとどこか素っ頓狂な考えをする晋作に長可は再度近づいた。
「じゃあな、晋作、覚えてろよ」
耳元で囁かれた晋作は森が夜道で消えるまで耐え、だから巡査の台詞ではないと独り言を漏らしながら、腰を抜かした。
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