かん
2025-03-24 22:56:33
6757文字
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学校一の美人さんと、 何故か勉強会をすることに…

的野美青さん




学年末試験まで2週間に迫った今日この頃


学年トップ層をなんとか維持したい自分は、朝早くから図書館で勉強する日々が始まった。


今日も朝7時から必死に日本史の暗記中。



〇〇:……眠い


あくびをし過ぎて顎が痛いし涙が止まらない。


でも勉強を疎かにする気にはならない。




何故勉強を頑張るか


理由は2つ



ひとつは、家庭の事情。


母子家庭で親に負担をかける訳にはいかない。


いい大学に行って一流企業に就職して母親を安心させたい。





もうひとつは、人間関係を勉強で誤魔化せる。


友達ができない理由を勉強のせいにできる。


トップ層を死守しなければ、説得力が無くなる。



この2つが主な理由






まぁ2つ目が本命かも



お金の面は奨学金とか制度があるにはある。


ただ友情はお金ではどうにもならない。




心が痛いし涙が止まらない。




〇〇:あっ



ふと窓の外から見える校門に、1人で歩いてる人が目に留まる。



〇〇:……かわい



思わず漏れてしまう。


遠い距離からでも認識できるくらいの容姿とスタイル。


彼女が登校してきたのだろう。


ということは、朝礼がもうすぐ始まる時間。


そろそろ教室に入らないと、遅刻扱いになる。


誰よりも早く来てんのに



〇〇:はぁ



机に広げた教科書を雑に鞄の中へ。


そのまま重い足取りで教室に向かった。




*****




ガラガラガラ



〇〇:



教室に入っても誰とも挨拶せず席に着く。


自分以外にはそれぞれグループしかり友達がいる。


タイミングを逃した自分は、今更そこに割って入ることができなかった。





〇〇:寂しい







「美青!おはよっ!」



その瞬間、クラス中の視線が彼女の元へ集まる。



『おはよ』





的野美青さん。


この学校で彼女の名前を知らない人はいない。



端正な顔立ちに抜群のスタイル。


艶やかな髪に綺麗な瞳。


低く落ち着いた声。



異性からはもちろん、同性からの人気も高い。





「的野さんおはよー」



美青:おはよー




的野さんには不思議な魅力がある。


クラスの中心的存在ではない。


にも関わらず気づけば周りから声をかけられている。


どのグループにも属していない。


けど全く孤立していない。




正直、彼女に憧れている。






美青:あっ


〇〇:あ



的野さんと視線が交差する。


そしてそのまま自分の隣の席に




美青:おはよ


〇〇:あっおはよ




最近的野さんと席が隣になった。


なので気を遣って挨拶してくれる。


こっちがビビって喋りかけないから


この誰とでも分け隔てなく接している姿。


的野さんが外見だけで無く内面も人気の理由だと、実感する日々。




美青:あの.


〇〇:


美青:●●くん


〇〇:僕ですか?


美青:このクラスに●●って、2人います


〇〇:いません、ごめんなさい


美青:あっごめんなさいそんなつもりはなくて


〇〇:いやいやっ、全然大丈夫です


美青:ごめんなさい


〇〇:こちらこそ


ほぼ初めて喋ったので会話が全く噛み合わなくて
気まずい






〇〇:どうかしました


美青:あっテスト勉強、もう始めてますか


〇〇:あーちょうど今日から始めました。


美青:あっ、そうなんですねお家でですか?


〇〇:いや、図書館でやってます。


美青:へぇ朝早くからですか?


〇〇:そうですねあ、あと放課後もやってます。


美青:一人で?


〇〇:恥ずかしながら




美青:……よかった


〇〇:いやよくないですよ


美青:あっえーっといい意味でっ、です


〇〇:いい意味で


美青:あはは



そっちが言っといて苦笑いの的野さん。


いい意味の解釈があまりに難しい。


これはイジられてるのか




美青:あっそうだ



あ、話逸らされる。

いや、気遣われてるだけか



美青:あの


〇〇:……はい


美青:●●くん、勉強得意ですよね


〇〇:そうですね、そこしかできないんで


美青:もしよかったらなんですけど


美青:私勉強が苦手で


〇〇:ん?


美青:だから勉強教えてほしくて




この時、頭の中がパニックになった。








何故なら、的野さんは頭がとてもいい。


正直自分よりいい点数の教科もあるくらい。


むしろこっちが教えてほしい。




しかも学校ですごい人気者。


なので、別に誰でもいいはず


なのに、まさかのご指名が



よって、パニック。




〇〇:いやいや、的野さんに必要ないでしょ


美青:必要です、絶対ですっ!


〇〇:おぉ


急にすごい剣幕で迫られて思わず怯んでしまう。


〇〇:別に僕じゃなくても良くないですか?


美青:いや、●●くんしかダメです


〇〇:僕学年トップじゃないですよ


美青:


〇〇:なんか喋ってよ


疑問が全く晴れない。



〇〇:そもそも的野さん、勉強できますよね?


美青:……で、できません


わかりやす



〇〇:友達も、いっぱいいるよね?


美青:



正直的野さんにメリットがひとつもない。



〇〇:ほんとに、僕じゃないとダメ?


的野さんの為にも、断ろう



美青:


〇〇:的野さん


美青:ごめんなさい


〇〇:え?


美青:嫌でしたよねごめんなさい


〇〇:いやいやっ僕は全然大丈夫ですけど的野さんに迷惑か


美青:私なんかがいきなり●●くんに話しかけたらダメですよね



ごめんなさい、と呟いて悲しそうに俯く。



〇〇:ほんとに、そういうことじゃなくて


美青:気遣わなくて大丈夫です


徐々に的野さんの瞳に涙が溜まる。



〇〇:えっあの深呼吸、深呼吸して


美青:グスッ


徐々にクラスの視線がこちらへ。


まずい


美青:ごめんなさい



完全に僕が泣かせてしまってる。


これはいくら弁明してもどうにもならない



〇〇:わ、わかりましたっ!一緒に勉強会しますっ!


美青:


顔を上げてこちらを見つめる的野さん。


〇〇:放課後、図書館で


美青:今日から?


〇〇:今日から




美青:わかりました


〇〇:うぇっ?


急に泣き止んですんとする的野さん。




〇〇:.あっひとつだけ、条件が


美青:なんですか?


再び不穏な表情を見せる。


〇〇:いや、あの僕も的野さんに、わかんないとこ聞いてもいいですか


美青:それだけですか


〇〇:それだけです


美青:全然大丈夫です


〇〇:あっありがとうございます


相変わらずぎこちない会話。



〇〇:じゃあ、放課後図書館で


美青:はい、図書館で


まさかあの的野さんと放課後の貴重な時間を共にするとは


美青:あの


〇〇:はい?




美青:ほんとに、ありがとうございます






にっこり笑って他の子の机に向かう的野さん。



〇〇:かわい



あまりの可愛さに衝撃を受ける。



さすが、学校一の美人さん。







*****





結局、授業が頭に全く入ることなく気づけば夕方に。


的野さんとも話すことはなく


よく考えたら、あれは嘘泣きっぽいし


よくよく考えたら、演技めっちゃ上手いし



でも友達と放課後を過ごしたことない自分がいきなり、あの的野さんと2人きり


かなりヤバい状況。



〇〇:勘違いすんな勘違いすんな


何度も復唱する。


とにかく、的野さんに迷惑をかけるわけには行かない。


異性としてではなく勉強を教え合うただの人間。


くれぐれも自惚れないようにしなければ



〇〇:ふぅ



意を決して扉を開ける。


ガラガラガラ





美青:あっどうも



 


〇〇:あどうも


図書館に入ると的野さんがひとりぽつんと座っている。


その的野さんはもう既にノートを広げて待ってくれていた。



〇〇:すいませんお待たせして


美青:私も今さっき来たとこです



の割には、準備万端



〇〇:ありがとうございます


的野さんの向かいに座る。



美青:えっ


〇〇:今日は英語ですね、やりましょう


美青:あのっ


〇〇:はい?


美青:隣の方が、やりやすいかもです


〇〇:そうですか?


美青:はい隣、どうぞ




至近距離の的野さんは勉強どころじゃない


でもここで断ったらなんか申し訳ないし



〇〇:失礼します



恐る恐る隣に座る。


やばい、めっちゃいい匂い



美青:じゃあ、やりましょう


〇〇:あはい




頭に何も入る気がしない。



〜〜〜





〇〇:すいません、ここって


美青:えーっとここは、





率直に言う。


的野さんとの勉強会は、非常に有意義だった。


2人の得意分野が被ってないので、お互いが必要不可欠な存在に。


余計な雑談もない。


これは、相性バツグンなのでは


自分が的野さんに必要とされている







美青:なんで笑ってるんですか?


〇〇:はっすいません



顔に出てた


恥ずかしい



美青:時計ってどこですか?


〇〇:あーここ、時計ないんですよ





この学校の図書館は、狭くて椅子が少ない。


しかも時計がない。


だから全然人がいない。




美青:そうなんですね


〇〇:今6時前です


美青:もうそんな時間休憩します?


〇〇:しましょう


窓の外を見ると、空が暗くなっていた。


全然気づかなかった。


勉強が捗ったからか


この時間が充実していたからか


それとも





美青:●●くんは、大学どうするの?


〇〇:僕は、一応国公立受けようかな的野さんは?


美青:私、薬剤師になりたくてだから薬学部が強い大学に行こうと思ってる


ちゃんと自分の指標がはっきりしてる




〇〇:かっこいいね



美青:ありがとう


恥ずかしそうに笑う的野さん。


ダメだ、気持ちが抑えきれない





美青:そういえば、敬語


〇〇:あすいませんっ!


美青:いや違いますっ自然に外れてて嬉しいなって


〇〇:すいませんすごい居心地が良くて


美青:私もです


〇〇:敬語、外しても大丈夫ですか?


美青:こっちのセリフです大丈夫ですか?


〇〇:僕はすごく嬉しいです


美青:私もです


〇〇:じゃあなしで


美青:……うん








ダメだ好きが抑えられない。


これはテスト終わるまで持たない


ダメだ抑えろ、テスト終わるまでの我慢だ。


好意を出したら的野さんと2人でいれなくなる。


それは絶対嫌。







こうして、ある意味天国で


ある意味地獄の日々が幕を開けた。





*****





的野さんと勉強を始めて1週間。



天国で地獄だった。








ある日の放課後。





美青:ねぇ


〇〇:ん?


美青:"〇〇"って呼んでもいい?


〇〇:




下の名前で呼ばれた


あまりの衝撃で言葉を失う。



美青:聞いてる笑?


〇〇:絶対忘れない


美青:なにそれ笑



このことは絶対死ぬ時走馬灯に出てくる。



美青:だからそっちも私のこと下で呼んで


〇〇:……いや無理でしょ


美青:なんでよ


〇〇:あなたね、自分がどれほどの存在か自覚ない?


美青:あーね



いきなり異性が下の名前呼びはまずい。


ましてやあの的野さん。


周りからどんなこと言われるか





美青:じゃあ2人きりのとき。


〇〇:いやそもそも的野さんじゃダメ?


美青:ムリ


〇〇:なんでよ


美青:言わない


〇〇:なんでよ



人に言えない理由?


怖いな





美青:呼ばないならもう勉強会しない


〇〇:それは、ずるい


そんなの絶対嫌です。



美青:ふふっじゃあ決まりで


〇〇:



ニヤニヤ笑う的野さん。


もしかしてこっちの気持ちに気づいてる?


それとも、舐められてるだけ?











休み時間のこと。



美青:〇〇、ここ途中式あってる?


〇〇:ちょっまだ放課後じゃ


クラスメイトがいるのに、喋りかけてきた。




美青:いいじゃん、ちょっとくらい大丈夫


〇〇:まずいって


男達の視線が自分に刺さってる。


最悪



美青:へへっ



悪戯に笑う美青。


こいつわかってやってる。











美青:〇〇の好きなタイプってなに?


〇〇:いきなり


勉強会の休憩中、唐突に聞いてきた。



美青:なんでもいいから


〇〇:えー


美青みたいな人、なんて言える度胸はない。



〇〇:うーん


まだ見たことない彼女の姿





〇〇:メガネ


美青:メガネ?


〇〇:あメガネかけてる人かなぁ


まずい美青のメガネ姿が見たくなってつい口に出してしまった。


しかも言葉が足りてない、これじゃいつもメガネかけてる人がタイプみたいになってる。




美青:ふーんメガネか


〇〇:ん?なに?


美青:あぁなんでもない


〇〇:ならいいけど



*****






テスト開始まで後3日に迫った今日。


いつものように放課後、いつものところで彼女を待つ。




〇〇:



彼女と一緒に勉強するようになって、ひとりが寂しく思うようになってしまった。


あと少しでこの勉強会も終わり。


4月からクラスも変わるし、いよいよ受験がやってくる。




〇〇:寂しい









ガラガラガラ



美青:おつかれ〜


〇〇:おつかれー……え?






美青:どう?似合ってる?






ほんとにメガネをかけてきてくれた。


いつも可愛いけどいつもと違っても、変わらず可愛い。



美青:ねぇなんか言ってよ?


〇〇:似合ってる


美青:で?



〇〇:可愛いです


美青:ありがと




今までで一番の笑顔を覗かせる。





〇〇:てか、さっきまでしてなかったよね?



授業中は一度もしてなかった。


これって




美青:さぁ知らない



とぼけてみせる彼女。






〇〇:あ、あのっ





美青:あのさ



綺麗な瞳がこちらを見てる。





美青:今回のテスト、勝負しよ



かなりベタなやつ。


まさかこれを言われる日がくるとは






〇〇:いきなり



美青:負けた方はご褒美ね



〇〇:罰ゲームじゃなくて?




美青:勝った方は負けた方にひとつ、なんでもお願いできるってやつ






〇〇:罰ゲームでしょ






美青:そうかなぁ


なにか言いたげな様子。





美青:









美青:よしっ絶対勝つ









あぁそういうことか








じゃあこの勝負、絶対負けられない。







〇〇:絶対勝つ






絶対勝って














僕が彼女に告白する。



窓を眺めてる場合じゃない。





FIN