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↺エピローグ


さて、コロシアイが終わった後の話をしよう。

私たちはあの後、モノゼルくんとモノデビルくんの先導に従って裁判場を後にした。
連れていかれたのは壁も天井も乳白色に包まれている部屋で、そこにはベッドがいくつか置いてあった。

『これに寝そべれば、次起きた時には現世に戻れているはずだ』
『しっかり寝なさいね。途中で起きてしまったら、何が起こるかわからないから』

相変わらずの様子の2人に少し苦笑しながら、私たちは横になった。
雨笠くんはとても不安そうにはしていたが、「まあ大丈夫だから」と曖昧な言葉と共に寝かしつけられていたように思える。

霞澤くんはというと、疲れていたのかすぐに眠りに落ちていたようだった。規則正しい寝息が聞こえる。
…………確かにこのベッドは寝心地が良い。

色々なことがあった。どんな小説にも劣らない、奇妙な出来事に私は確かに巻き込まれていた。
探偵の活躍を再び見ることが出来た。嫌な経験も、良い経験もしたものだと思う。

微睡の中で一つだけ、覚えていることがある。
誰かにおやすみなさい、と声をかけられたのだ。

……

次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。
私はどうやら、数ヶ月の間昏睡状態に陥っていたらしいのだと人伝に聞いた。

「いやー、正直こうやって目を覚ましているのが奇跡なくらいだよ」と、ゆるっとした雰囲気の医者は告げた。
何度も今夜がヤマなのではと思うほど、私の状態は良くなかったらしい。今こうしてなんの後遺症もないのが怖いくらいだと。

私はどうしてそんな状態にまでなっていたのか、と医者に聞くと彼は微妙な表情を浮かべた。「本当に覚えていないのか」とまで問われた。

「コロシアイ。流行ってたでしょ、才能ある人たちを狙ったテロ行為ってやつ」

答案を改めて突きつけられたような感覚があった。
それじゃあ、やっぱり。

――――

病室というのは、案外騒々しいものだった。
お見舞いに来る人たちに、隣人のお喋り、忙しそうな医療従事者。もっと暗くてジメジメとしているものだと思っていた。

ベッドサイドにある小さなテレビには、ニュース番組が映し出されている。
そこでは社会問題としてコロシアイが取り上げられていた。メディアがそうやって取り上げるほど規模の大きなものだったのかと驚いた。

そういえば、共に蘇ったはずの彼らはどこへ行ってしまったのだろうか。
霞澤くんと私は、どうやら同じコロシアイには参加していなかったようだった。彼もどこかで目を覚ましているのだろうか。

雨笠くんに至っては本当に目覚めているのかどうかすらもわからない。
彼女は随分と昔に亡くなったはずの人間だし、果たして。

そこまで考えて、現代には便利なツールがあるじゃないかと思い当たる。
それはそう、インターネットだ。

彼らの名前を検索窓に入れる。良いニュースが出てきますようにと祈りながら。

『長期休載していた超高校級の漫画家、不死鳥のように蘇る!』
『神隠しか?亡くなったはずのフルート奏者、当時と同じ姿で見つかる』

そんな、ゴシップ感に塗れた見出しを見つけて私は息をつく。
彼らは無事なようだった。このネット記事を信じるのであれば。

落ち着いたら彼らに会いに行こう。もしかしたら、あのコロシアイは私の作り出した夢である可能性もあるやもしれないのだ。
私が体験したことは幻ではなかったのだと、確かめたくて仕方がない。

よく分からない鳥が鳴いている。木がさざめく音がする。日常に帰ってきたのだと実感させるそれが、以前よりも愛おしく見える。

これからどうしようか。自分の参加していたというコロシアイのことを調べて見てもいいかもしれない。
何も覚えていないけれど、そこには想像だにできない人間模様が溢れているはずだ。

それから、と私は窓の外を見遣る。
ひらりと舞う鳥の羽が、天使のように見えた。

ああ、そうだ。探偵についての話を書こうか。