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望月 鏡翠
2025-03-23 09:55:25
885文字
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日課
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#1669 「子院」「青草」「弱者」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
この世に人徳による治世が長く続かない理由だ。どんなに心ある君主が現れても、人はいつか死ぬ。良い統治を永遠に続けることはできない。諦めた口調でそんなことをいった人は、多くの民に望まれながらも早々に王位を退いた。
そのあとは寺院を建てて、迷える人の心の拠り所になっていた。しかし、そんなことをされても困るのだ。権力者は彼を疎ましく思った。国と統治する王以外のものが、民の心を集めて頼りにされている。
そこには現統治への不満も集まっているに違いない。結局彼は許されなかった。従順な態度を示したために、寺院とそこで働く者たちは許されたものの、人々が慕った人は処刑されてしまった。
良い統治は長く続かないが、そもそも良い統治が訪れることすら稀だ。人々は再確認した。権力者たちの都合を考えて、早めに王位を辞したというのに、権力者より好かれているだけで殺されてしまう。
今、国を治めているのはそういう連中なのだ。
さて彼を慕う者の中には、女がいた。恋仲ではないかと噂され、その度に彼は否定も肯定もせず、噂などないが如くに受け流し、女は人を殺しそうな目つきで周りを睨んだものだった。
彼女は男の死後もその傍らに子院を建てて、そこの管理をしながら静かに暮らすことを選んだ。本院で受け入れてもらえなかった、僧になる修行すらさせてもらえない弱者を拾う場所である。僧もおらず管理者も女の子院は、正式な宗教施設ではなかったが、それでも慣例としてその存在は受け入れられていた。
信者からの寄進がない彼らは、敷地には青草を植え反物を作って生計を立てていた。青草の汁は水に濡れたり陽にあたったりするとすぐに消える。その性質を使って着物の下絵を描くのである。
そこで売られる着物には下絵以外のものも書かれている。
時の権力者の読みは正しかったのだ。為政者よりも好かれる存在は邪魔になる。世を乱す火種となる。それが戦火とならないように、彼は運命を受け入れたのだが、その言葉を伝えてくれるものは今はいない。
彼を慕ったものは、各々の意思で勝手に行動する。
故にこの世は乱れた。
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