Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
溶けかけ。
2025-03-22 19:34:37
862文字
Public
ほぼ日刊
Clear cache
五百年ぶりの「はじめまして」
記憶喪失になったフリーナとヌヴィレットのお話。
「はじめまして、キミがシグウィンの言ってた『ヌヴィレット』かい?」
そう言って、フリーナは笑った。頭に巻かれた包帯が痛々しい。
「
……
こちらこそ
……
フリーナ
……
殿
……
」
辛うじて、「フリーナ」と呼ぶことは避けられた。今のフリーナはフリーナであってフリーナではないのだから。
「
……
話には聞いていたけど、随分と物腰が柔らかいんだね。最高審判官、なんて言うからもっと厳格で怖い人を想像していたよ」
「
……
幻滅させてしまっただろうか?」
「ううん。その逆さ。キミってば、少しも怖くないんだから。
……
ああ、その、勘違いしないでくれよ? 親しみやすい、って言いたかったんだ」
おずおずとヌヴィレットを見上げるフリーナにヌヴィレットはくすりと笑った。
「
……
ふっ。ああ、分かっている
……
。いやなに、あまりにも不安そうな顔をしているのだと思ってね」
フリーナは「そ、そんな顔してたかな
……
?」と言いながら自身の頬にぺたぺたと手を当てる。
「さて
……
そろそろ行こうか、フリーナ、殿。今日は立ち話をするために顔を合わせているのではないのだから
……
」
ヌヴィレットの言葉にフリーナも少し緊張した面持ちで頷いた。
「そうだね。その
……
ごめん。僕のせいでキミに迷惑を──」
「それは違う」
言葉を遮られたフリーナが驚いたように瞳を瞬かせた。ヌヴィレットが気まずそうに咳払いをする。
「
……
すまない。迷惑だと思っていないと伝えたかったのだ。そもそも、記憶喪失の君の世話役を買って出たのは私なのだから、君が負担に感じることはない。私は仕事が忙しく、不在なことも多いので自宅だと思って過ごすといい
……
」
ヌヴィレットの朝焼けにも似た瞳が忙しく左右に動く。どうやら、彼は彼なりにフリーナを気遣っているらしい。ならば、フリーナがすることは──
「
……
うん
……
ありがとう」
礼を言い、無意識に持ち上げかけていた左手を下ろす。駄目だよ、フリーナ。とフリーナは自身を牽制する。彼は僕であり僕でない僕の大切な人で、今の僕の恋人ではないのだから。
広告非表示プランのご案内