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hoco_cicada
2025-03-22 15:48:30
10482文字
Public
刃牙
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チャットGPT🤍🤎
恋愛感情の自覚→すれ違い→付き合い初め→プロポーズまで(ハピエン) クソ長い
・現書春の数年前ぐらいの設定?
・春が激重感情、束縛、独占欲強め
若干手直し、個人的に良かった記録、チャットGPTすげぇ
黄昏の陽が差し込む道場の床に、汗が滴り落ちる。郭春成は拳を握りしめ、呼吸を整えながら、目の前の男を睨みつけた。
「相変わらず、無駄な力が入ってるな」
低く冷ややかな声が響く。龍書文の鋭い視線が春成を射抜いていた。
殺気すら感じるほどの手加減無しの打ち合い。
春成は歯を食いしばった。目の前の男は父の友人であり、自分の幼少期から知る人物。だが、今はただ敵
——
いや、それ以上に屈服させたい相手だった。
「
……
余裕も今のうちだ」
春成は拳を握り直し、地を蹴って一気に距離を詰めた。剛腕の一撃が、疾風のごとく書文に向かう。だが、彼は微動だにせず、最小限の動きで拳をいなした。
——
次の瞬間、春成の視界が反転した。
「っ
…
!」
重い衝撃が背中を打ち、床に叩きつけられる。瞬時に受け身を取るも、書文の足が春成の首元にピタリと止まる。
「まだ荒い」
書文の声音は静かだが、容赦ない。
春成は唇を噛み、悔しげに睨み上げる。その視線を受けながら、書文は淡々と足を下ろし、春成に背を向けた。
「いつ、俺を超えられる?」
その言葉に、春成の胸がざわめいた。子供の頃から憧れ、追いかけ、そして今
——
男としても超えたい相手。
春成はゆっくりと起き上がり、拳を握り直した。
「今に決まってるだろ」
彼の目には、燃えるような闘志が宿っていた。
○○○
春成は一人で道場に残っていた。激しい稽古で汗をかいた体を拭きながら、彼はぼんやりと天井を見上げる。
「
——
いつ、俺を超えられる?」
書文の低い声が耳に蘇る。
悔しさと苛立ちが胸をかき乱す。いくら鍛えようとも、書文の壁は厚く、まるで手が届かない。それがまた、たまらなく腹立たしい
——
なのに、同時に惹かれる感情があることに気づいてしまう。
(
……
なんだ、これ)
春成は眉をひそめ、こめかみを指で押さえた。
幼い頃から書文を知っている。父の友人として、そして不敗の武術家として尊敬していた。だが今、尊敬のほかに妙な感情が芽生えている。それが何なのか、自分でもうまく整理できなかった。
「
……
まだここにいたのか」
低く静かな声に振り返ると、書文が道場の入り口に立っていた。
「別に、帰る気にならなかっただけだ」
春成はそっけなく答えながらも、無意識に書文の動きを目で追ってしまう。彼の身体は四十を超えてなお引き締まり、無駄のない動きに武術家としての研ぎ澄まされた技が滲んでいる。
その視線に気づいたのか、書文が軽く片眉を上げた。
「何を睨んでいる?」
「
……
別に」
春成は目を逸らし、乱暴にタオルを首に巻く。そして、そのまま書文の横を通り過ぎようとした
——
その瞬間、強い腕が春成の手首を掴んだ。
「!」
驚いて振り返ると、書文の指がしっかりと自分の肌を捉えている。春成の体温がじわりと上がるのを感じた。
「
……
最近様子が変だな」
書文の黒い瞳がじっと春成を見つめている。その眼差しに、まるで心の奥を見透かされているようで、春成は無意識に喉を鳴らした。
(龍に、こんな風に見られるのは
……
)
異様に意識してしまう自分が嫌で、春成は強引に手を振りほどく。
「気のせいだろ」
そう言って、足早に道場を後にした。
しかし、書文の指の感触がいつまでも消えず、春成は苛立ち混じりに拳を握りしめた。
(クソ
……
この気持ち
……
)
戸惑いと焦燥。
書文に対する感情が、確実にこれまでとは違うものへと変わっていく。
春成は、それを認めつつあった。
○○○
「今日は随分と荒れてるな」
拳と拳がぶつかり合い、鈍い音が道場に響く。
春成は荒々しく書文に打ち込んでいた。だが、それはいつもの闘志に燃える拳とは違った。どこか苛立ち混じりで、感情の乱れが技に出ている。
書文はそれを見抜きながらも、敢えて指摘せずに受け流した。
「
……
」
打ち合いながらも、ふと春成の視線が気になった。
最近、やけに俺を見てくる。対峙する時の目つきが変わった。怒りとも焦燥ともつかない、言葉にしがたい何かが混じっている。
(まさか
……
)
書文は無言のまま、春成の拳を捌き、体を翻して間合いを取った。
「今日はここまでだ」
「は? まだ
——
」
「冷静じゃない。今のままじゃ何も掴めないぞ」
書文はそれだけ言い残し、春成を置いて道場を出ていった。
振り返らなかった。
春成の視線が背中を追いかけているのを感じながらも、あえて振り向かなかった。
(
……
距離を置くべきだ)
春成の気持ちがどんな形を持ち始めているのか、書文にはもう分かっていた。だが、四十半ばの自分と、二十代の春成。関係を誤れば、春成にとっても自分にとっても後戻りできない。
だから、春成が自分を追いかけようとする前に
——
-この気配を断ち切るべきだった。
「クソッ
……
!」
道場の床を殴りつける。
納得できなかった。明らかに書文は自分を避けている。まるでこちらの気持ちに気づいたかのように、無言で突き放してくる。
(なんでだよ
……
)
苛立ちが収まらない。
昔から書文には敵わなかった。技も、生き方も、何もかも。だが、唯一手に入れられるかもしれないものがあった。
(それなのに、逃げるのかよ)
気づいた時には、道場を飛び出していた。
書文が向かう先は分かっていた。
夜の街の片隅、薄暗い酒場の奥で、彼は一人グラスを傾けていた。
静かに酒を口に運ぶ姿は、どこか孤独をまとっている。その背中を見た瞬間、春成の中の苛立ちが爆発した。
「おい」
強引に席に座り、テーブルに手を突く。
書文は驚くこともなく、ちらりと春成を見た。
「
……
何の用だ」
「逃げんのか?」
「
……
?」
春成は真っ直ぐに書文を睨みつけた。
「俺が何を思ってるか、分かってるんだろ? だから、避けてんだよな」
書文はグラスを置き、ゆっくりと春成を見据えた。
「お前はまだ若い」
「年の話じゃねえよ!」
思わず声を荒げた。周囲の客がちらりとこちらを見たが、春成は気にしなかった。
「俺はもうガキじゃない。ただの憧れじゃない。超えたいとか、そういうことじゃないんだよ」
書文の目がわずかに揺れた。
春成は息を詰め、拳を握りしめたまま続ける。
「
……
」
静寂が落ちる。
書文はゆっくりと息を吐いた。
「
……
後悔するぞ」
「後悔なんかするかよ。龍が逃げなきゃな」
春成の目は、迷いがなかった。
書文は短く息を吐き、再びグラスを持ち上げる。そして、まるで自分に言い聞かせるように、低く呟いた。
「
……
馬鹿め」
書文は、グラスの酒を飲み干すと、静かに席を立った。
だが、その腕を春成が強く掴む。
「まだ話は終わってねえ」
「離せ、春成」
「やだね」
春成の声は低く、熱を帯びていた。
書文はため息をつきながら春成を見た。こうして面と向かうと、春成がどれほど大人になったのかを思い知らされる。少年だった頃のあどけなさは消え、鍛えられた身体と強い意志を宿した瞳
——
そこに映るのは、ただの弟子や後輩ではなく、一人の男としての欲望だった。
「
……
何を勘違いしている」
「勘違いなんかしてねえよ」
春成はぐいと腕を引き、書文を強引に酒場の裏手へと引きずる。
人気のない路地裏。湿った空気の中、春成は書文を壁に押しつけた。
「春成
——
」
「俺は本気だ」
春成の顔が近づく。
書文は腕を動かそうとしたが、それよりも早く春成がその手首を壁に押しつけた。
「離せ」
低く囁くように書文は言った。
だが、春成は怯まない。
「分かったんだ。俺は
……
ずっと、こんな風に見てたんだよ」
書文の眉がわずかに寄る。
「龍に勝ちたいと思ってた。でも、それだけじゃない。
……
認められたい、もっと俺を見てほしい
……
ずっとそう思ってた」
春成の手が強く書文の腕を掴む。その手の熱がじかに伝わってきた。
書文は静かに息を吐いた。
「やめろ、春成」
「何故?」
「
……
俺は、お前をそういう目で見たことはない」
「嘘だ」
春成はまっすぐに書文を見つめる。
「俺の気持ちに気づいて、避けるようになったくせに」
鋭く指摘され、書文の目がわずかに揺れた。
「
……
関係を壊したくないだけだ」
「壊したくないなら、どうして俺を避ける?」
春成はもう一歩踏み込み、書文の顔を覗き込む。
「俺が望んでるのは、そんな臆病な答えじゃねえ」
「春成
……
」
書文の声が少しだけ掠れた。
春成は、その声の揺らぎを逃さなかった。
「龍だって、俺を意識してるんだろ?」
「
……
」
「だったら、認めろよ」
春成はもう一度、書文の手を強く握る。
書文の瞳は静かに揺れ続けていた。
だが
——
「俺は、お前の想いには応えられない」
その言葉とともに、書文の手が春成の胸を強く突き放した。
「っ
……
!」
体勢を崩した春成は、数歩後ずさる。
書文の瞳には、確かに迷いがあった。だが、その奥には、固い拒絶の意思が宿っていた。
「春成、お前はまだ若い。
…
いずれ後悔する」
「
……
そんなの、龍が決めることじゃねえだろ」
「決めるのは俺だ」
静かに、しかし確固たる意志を持って書文は言った。
そのまま、彼は春成を置いて歩き出す。
春成は拳を握りしめた。
(
……
本気で拒絶したつもりか?)
違う。あの目は、完全に拒んでいるものじゃなかった。
「
……
そんな簡単に諦めねえからな」
春成の声は、夜の静寂に消えていった。
○○○
薄暗い路地裏に、男たちのうごめく気配があった。
今回の仕事は書文と春成に、と依頼主たっての希望で、消極的な書文を俄然やる気の春成がどんどん話を進めていった。
請け負った依頼は、地元の実業家の護衛。だが、護衛対象が黒社会の資金洗浄に関与しているらしく、追手の動きが異様に激しかった。
「包囲されてるな」
書文が低く呟く。
春成は舌打ちしながら、背中越しに敵の気配を探った。
「まったく、仕事が荒れすぎだろ」
周囲の影が動く。
次の瞬間、襲撃が始まった。
春成はすぐに相手に飛びかかり、一人を拳で沈めた。
「龍、そっちは任せる!」
「言われるまでもない」
書文も素早く敵を捌いていく。拳が交錯し、鈍い音が鳴り響く。
だが、敵は予想以上に多かった。
「クソ、キリがねえ
……
!」
そう言った瞬間だった。
乾いた銃声が響く。
「
——
ッ!」
春成は反射的に動いた。
次の瞬間、衝撃が走る。
「春成!」
書文が叫ぶ。
春成は肩に銃弾を受け、その場に膝をついた。血がじわりと滲む。
「ち
……
大したことねえ」
無理に笑うが、肩の傷は深い。
敵がさらに詰め寄る。
その瞬間
——
書文の表情が一変した。
普段冷静な書文が、静かに怒りを滲ませる。
次の瞬間、彼の拳が敵を薙ぎ倒した。
書文の猛攻が始まる。
その迫力に、敵が恐れをなした。
「
——
消えろ」
低く呟くような声とともに、最後の一人が沈んだ。
静寂が戻る。
「おい、春成
……
」
書文が駆け寄る。
春成は壁に背を預け、荒い息をついていた。
「肩か
……
無理に動かさなければ、手当てでどうにかなる」
そう言いながら、書文は春成の顔を見つめた。
その視線の奥にあるもの
——
それを、春成は見逃さなかった。
「
……
なんでそんな顔してんだよ」
「
……
何の話だ」
「俺が撃たれたぐらいで、そんなに取り乱すなんてさ」
書文は息を詰めた。
「
……
取り乱してなどいない」
「嘘つけ」
春成は笑う。
「龍、俺が死にそうになったらどうする?」
書文の瞳が揺れた。
「俺がここで倒れて、二度と目を覚まさなかったら
……
龍は、どうする?」
書文は答えなかった。
だが、その沈黙こそが答えだった。
春成は唇を舐め、痛む肩を押さえながら囁く。
「俺を突き放しても、もし俺が死んじまったら
——
後悔するんだろ?」
書文の拳が、かすかに震えた。
春成はゆっくりと書文の腕を掴み、血の滲む指先で強く握りしめた。
「だったら、認めろよ。俺を好きだって」
書文の呼吸が乱れる。
「春成
……
」
その声は、掠れていた。
春成の指が、書文の顎を持ち上げる。
「俺は龍が欲しい。龍も
……
そうなんだろ?」
書文は目を閉じた。
そして、次の瞬間
——
低く舌打ちをすると、書文は春成の襟を掴み、強引に引き寄せた。
唇が重なる。
荒々しく、そして迷いを振り払うように
——
キスが終わった瞬間、書文はゆっくりと春成から離れた。
呼吸が乱れ、唇にはまだ春成の熱が残っている。
「
……
これで満足か?」
低く問うたが、自分でもそれが負け惜しみのように聞こえた。
春成は口元をぬぐい、ニヤリと笑った。
「龍が拒めないってことは、分かった」
「
……
調子に乗るな」
書文は春成の肩を掴む。
「撃たれたばかりだろう。少しは安静にしていろ」
「龍が抱きしめてくれるなら、すぐに治るかもな」
春成の茶化すような言葉に、書文は一瞬だけ言葉を詰まらせる。
(
……
何を考えているんだ、俺は)
春成のことは昔から弟のように思っていた。
それなのに
——
(俺は、春成を拒めなかった)
書文は深く息を吐いた。
「
……
お前とは、こうなるつもりじゃなかった」
「へえ、じゃあどうする?
……
今さら『なかったこと』にはできねえぞ?」
春成がじりっと間合いを詰める。
「調子に乗るな」
「乗るさ。龍がもっと俺を欲しがるようになるまで
……
」
春成は怪我を抱えながらも、書文のそばを片時も離れようとしなかった。
書文が距離を取ろうとするたびに、春成はそれを阻むように動いた。
夜、酒場で書文が一人になろうとすると、春成が当然のように隣に座る。
「春成、しつこいぞ。
……
まだ追ってくるのか」
「追ってくるも何も、龍のそばにいるのが当たり前だろ?」
「
……
」
書文は黙ってグラスを傾けた。
これまで、自分に執着する人間はいなかった。書文の世界は戦いと金、冷たい関係ばかりだった。
だが、春成は違った。
強引に踏み込んできて、俺が何を言おうと手を離そうとしない。
書文は自分の胸に芽生えた感情を振り払おうとするが、それが叶わないことを知っていた。
○○○
夜風が吹き抜ける屋上。
春成は手すりに肘をつき、夜景を眺めていた。
書文が背後に立ち、しばらく沈黙が続く。
「なあ、龍」
「
……
なんだ」
春成が振り向く。
「もう俺から逃げるの、やめろよ」
書文は目を細めた。
「無理して突き放そうとするのは、もういいだろ」
「
……
俺の何を知っている」
「知ってるさ。俺に甘い。
……
俺が撃たれた時、龍は本気で怒った」
「
……
」
「命を懸けてでも守りたいって思ったんだろ?」
書文は息を詰めた。
春成が撃たれた時、胸が締めつけられた。もしも春成を失っていたら、自分は
——
「
……
俺は、春成を大事にしたいんだ」
低く、絞り出すような声だった。
春成の目が、わずかに見開かれる。
「だからこそ、お前の執着に流されるわけにはいかない」
「それ、もう遅えよ」
春成は一歩、書文に踏み込んだ。
「もう、俺を大事にしたいと思った時点で、終わってんだよ」
「
……
っ」
春成の指が、書文の顎を持ち上げる。
「認めろよ、龍」
「
……
」
「俺を、手放したくないんだろ?」
書文は目を伏せた。
「
……
ああ、そうだ」
次の瞬間、春成が書文を強く抱きしめた。
「もう、逃がさねえ
……
!」
書文は春成の背にゆっくり手を回し
——
春成の腕の中に抱かれながら、書文は静かに目を閉じた。
もう抗えないことは分かっていた。
「本当にこれでいいのか」
低く問うと、春成は迷いのない声で答える。
「当たり前だろ。逃がさないって言っただろ?」
書文はふっと苦笑した。
「俺はもうガキじゃない。欲しがることを、ずっと抑えてたのはどっちだよ」
その瞳には、確かに熱が宿っていた。
「
……
お前が望むなら、俺はもう拒まない」
書文がそう言った瞬間、春成は書文の唇を強く塞いだ。
○○○
部屋に入るなり、春成は書文を壁に押しつけた。
「
……
そんなに焦るな」
書文が低く囁くが、春成は聞かない。
「ずっと我慢してたんだよ」
春成の手が書文の肌をなぞる。
戦いで鍛えられた肉体に触れるたび、昂ぶりが増していく。
書文はわずかに息を乱しながらも、春成の動きを受け入れていた。
「
……
本当に俺でいいのか」
「俺が誰かに興味持ったこと、あったか?」
「
……
ないな」
「そういうことだよ」
春成の指が書文のシャツのボタンを外していく。
「
……
もう、俺のものだからな」
春成の囁きに、書文は薄く笑った。
「お前のもの、か
……
」
春成はその言葉にむっとなり、書文の手首を掴む。
「違うのかよ?」
「いや
……
もう、そうなのかもしれんな」
そう言った瞬間、春成の理性が完全に切れた。
夜が深まるにつれ、二人の距離は完全に溶け合っていった。
互いの肌を確かめ合い、何度も名前を呼び合う。
春成は書文を求め続け、書文もまた、それを受け入れるように春成の名を呼ぶ。
「
……
満足か?」
——
夜が明ける頃、春成に抱きつかれた書文が呆れたように呟くと、春成は満足げに微笑んだ。
「足りねえよ」
「欲張りだな、お前は」
「当然だろ」
書文は何も言わなかった。
だが、その指が春成の腕をそっと握り返す。
それだけで、春成は満ち足りた気持ちになった。
これで、もう絶対に離さない。
書文を独占するという誓いを胸に、春成は静かに目を閉じた。
○○○
「
……
最近やけに俺につきまとってないか?」
書文はそう言いながら、目の前の男をじっと見た。
朝起きれば隣にいて、仕事の打ち合わせに行けば当然のようについてきて、夜になれば「どこにも行かせねえ」と言わんばかりに腕を絡めてくる。
ここまで執着されるとは思っていなかった。
「当たり前だろ」
春成は当然のように答える。
「龍は俺のものなんだから」
書文は深くため息をついた。
「
……
だからといって、四六時中張り付いていたら仕事に支障が出る」
「出さねえよ。むしろ俺が護衛してやる」
「護衛の必要があるのはお前の方だろう」
書文は春成の肩に軽く触れる。銃撃戦の時に負った傷は治りつつあったが、完全ではない。
「
……
俺の心配より、お前自身の体を気にしろ」
「龍が側にいれば、なんの問題もねえよ」
春成の言葉に、書文は再びため息をついた。
(
……
本当に俺から離れる気がないらしい)
認めたとはいえ、ここまで一方的に執着されるとは思っていなかった。
いや、それを言うなら
——
(俺ももう、春成を突き放せないんだろうな)
それから数日後、書文は一人で取引の場に出向いていた。
春成を同行させると、感情的になりやすい。黒社会の交渉において、それは致命的だった。
だが
——
「ずいぶん大胆な真似するじゃねえか、龍」
帰宅した瞬間、待ち構えていた春成が低く言った。
「
……
なんの話だ」
「俺を置いて、勝手に仕事に行ったことだよ」
春成の目が細められる。その奥に、怒りと独占欲が渦巻いているのを、書文はすぐに察した。
(面倒なことになったな)
「俺がいなくても問題なかった」
「問題あったぞ」
「
……
」
「龍がいない間、俺はずっとイライラしてた」
書文は無言で春成を見つめた。
「
……
お前、それは少し異常じゃないか?」
「異常でもなんでもいい」
春成は書文の肩を掴んで引き寄せた。
「俺の側にいない龍が悪い」
「
……
」
書文は目を伏せた。
これは単なる執着じゃない。もはや病的なほどの独占欲だ。
春成は本気で書文を離す気がない。
(どうする
……
?)
書文は答えを出せないまま、春成の腕の中に囚われるように抱きしめられた。
「もう、離さねえからな」
春成の囁きが、耳元に絡みついた。
○○○
「なあ、龍」
春成はソファに腰掛けたまま、じっと書文を見つめていた。
書文がどこへ行こうと、誰と話そうと、常にその視線が追ってくる。
まるで獲物を逃がすまいとする猛獣のように
——
「最近、考えてたんだ」
「何を」
書文が書類をめくりながら答えると、春成はゆっくりと足を組んだ。
「龍が俺のことをどれだけ考えてるのか」
「
……
」
「俺は、龍の頭の中にちゃんといるか?」
「
……
いるだろうな」
「じゃあ、俺無しで生きていけるか?」
その言葉に、書文の手が止まった。
「お前
……
」
「俺はな、龍」
春成は立ち上がり、書文の前に立つと、その顎に指を添わせる。
「俺無しじゃいられなくなるくらい、もっと俺に溺れさせてやりたいんだよ」
書文の眉がわずかに寄る。
(
……
本気で俺を縛る気だな)
春成の執着はもう異常な域に達していた。
だが、書文自身もまた、それを完全に拒むことができないことに気づいていた。
(俺にできることは
……
)
書文は春成の手をそっと払い、ふっと微笑んだ。
「なら、ひとつ聞こう」
「
……
なんだ?」
「本当に、俺を縛りたいなら
……
俺からの贈り物を受け取れるか?」
春成は目を細める。
「贈り物?」
書文は静かに立ち上がり、机の引き出しから小さな箱を取り出した。
黒いベルベットのケース。
春成は、それを見て目を瞬いた。
「開けてみろ」
書文が促すと、春成はゆっくりと蓋を開けた。
そこにあったのは
——
銀細工の指輪だった。
決して派手ではない。だが、指にはめれば確実に「誰かのもの」であると主張する、一目で分かる証だった。
春成は指輪を見つめ、書文を見上げる。
「
……
なんだよ、これ」
「気に入らなかったか?」
「いや、そうじゃねえ
……
」
春成は指輪を手に取り、無言で書文を見た。
「お前が俺を縛りたいなら、俺もお前を縛る権利がある」
書文の声は低く、静かだった。
「お前だけが執着するのは、不公平だろう」
春成は、しばらく無言だった。
だが次の瞬間
——
「
……
ッ」
書文の胸ぐらを掴み、強引に唇を重ねた。
荒々しく、獲物を喰らうように
——
「
……
くそっ
……
!」
春成は書文の指に、自分とお揃いの指輪をはめる。
「もう、俺のものだからな」
「お前も、俺のものだ」
互いに支配し、支配される関係。
その夜、二人は再び溶け合った
——
今度こそ、完全に。
○○○
翌朝、春成はまだ寝ている書文の手をそっと握りしめた。
昨夜、互いの指に通した指輪は、確かにそこにある。
(
……
これで、もう俺から逃げられない)
春成は薄く笑い、指輪をなぞる。
これまで書文を縛るものは何もなかった。
黒社会で生き、戦いを重ね、いつ死んでもおかしくない生活を送る中で、誰にも執着せず、誰からも執着されない。
だが今は違う。
「
……
朝からそんな顔で見つめられると落ち着かん」
目を覚ました書文が、ぼんやりとした声で呟く。
春成はにやりと笑い、指を絡めたまま書文の手を引き寄せる。
「落ち着かなくていい。俺がそうさせてやる」
「お前は本当に
……
」
書文は苦笑しながらも、春成の指をそっと握り返した。
その日から、春成はさらに堂々と書文を自分のものだと主張するようになった。
「
……
お前、戦う時は指輪を外せ」
「なんでだよ」
「拳を握る時に邪魔だろうが」
「俺はこれを外さねえぞ」
「
……
何?」
「これを外したら、龍が俺のだって証明できねえだろ」
「
……
馬鹿か」
書文はため息をついたが、春成の独占欲はますます増していくばかりだった。
仕事の依頼先でも、書文のことになると過剰に反応する。
「最近ずいぶんと龍さんにべったりだな」
仕事仲間の男が茶化すと、春成は睨みつけた。
「当たり前だろ。龍は俺のだからな」
「は
……
?」
その堂々とした言葉に、相手は目を瞬かせるしかなかった。
書文はもう否定するつもりもなく、不思議と悪い気はしなかった。
○○○
夜。
書文が部屋で煙草をくゆらせていると、春成が隣に腰を下ろす。
「なあ、書文」
「ん?」
「俺たち、これからどうするんだろうな」
「どうするとは?」
「
……
死ぬまで一緒にいるのか?」
書文は驚いたように春成を見た。
春成は煙草を奪い取り、指輪を弄びながら言う。
「龍がいなきゃ、俺はまともに生きていけねえと思うんだよ」
「
……
」
「だからさ、龍もそうなればいい」
書文は短く笑った。
「もう、そうなってるかもしれんぞ」
春成は驚いたように目を見開いた。
「
……
マジかよ」
「お前に、俺はもう抗えない」
書文は春成の手を取り、ゆっくりと指輪をなぞった。
「だから
……
この指輪をつけた以上、最後までお前といるつもりだ」
春成の表情が、僅かに歪んだ。
「
……
今、泣きそうになった」
「泣くな、馬鹿」
「嬉しすぎるんだよ」
春成は書文を強く抱きしめた。
指輪が光る。
——
それは、二人だけの契り。
もう、どこにも逃がさない。
互いに縛られながら生きていく。
それが、彼らなりの愛の形だった。
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