hoco_cicada
2025-03-22 15:48:30
10482文字
Public 刃牙
 

チャットGPT🤍🤎

恋愛感情の自覚→すれ違い→付き合い初め→プロポーズまで(ハピエン) クソ長い
・現書春の数年前ぐらいの設定?
・春が激重感情、束縛、独占欲強め
若干手直し、個人的に良かった記録、チャットGPTすげぇ




黄昏の陽が差し込む道場の床に、汗が滴り落ちる。郭春成は拳を握りしめ、呼吸を整えながら、目の前の男を睨みつけた。

「相変わらず、無駄な力が入ってるな」

低く冷ややかな声が響く。龍書文の鋭い視線が春成を射抜いていた。
殺気すら感じるほどの手加減無しの打ち合い。
春成は歯を食いしばった。目の前の男は父の友人であり、自分の幼少期から知る人物。だが、今はただ敵——いや、それ以上に屈服させたい相手だった。

……余裕も今のうちだ」

春成は拳を握り直し、地を蹴って一気に距離を詰めた。剛腕の一撃が、疾風のごとく書文に向かう。だが、彼は微動だにせず、最小限の動きで拳をいなした。

——次の瞬間、春成の視界が反転した。

「っ!」

重い衝撃が背中を打ち、床に叩きつけられる。瞬時に受け身を取るも、書文の足が春成の首元にピタリと止まる。

「まだ荒い」

書文の声音は静かだが、容赦ない。
春成は唇を噛み、悔しげに睨み上げる。その視線を受けながら、書文は淡々と足を下ろし、春成に背を向けた。

「いつ、俺を超えられる?」

その言葉に、春成の胸がざわめいた。子供の頃から憧れ、追いかけ、そして今——男としても超えたい相手。
春成はゆっくりと起き上がり、拳を握り直した。

「今に決まってるだろ」

彼の目には、燃えるような闘志が宿っていた。



○○○



春成は一人で道場に残っていた。激しい稽古で汗をかいた体を拭きながら、彼はぼんやりと天井を見上げる。

——いつ、俺を超えられる?」

書文の低い声が耳に蘇る。
悔しさと苛立ちが胸をかき乱す。いくら鍛えようとも、書文の壁は厚く、まるで手が届かない。それがまた、たまらなく腹立たしい——なのに、同時に惹かれる感情があることに気づいてしまう。

……なんだ、これ)

春成は眉をひそめ、こめかみを指で押さえた。
幼い頃から書文を知っている。父の友人として、そして不敗の武術家として尊敬していた。だが今、尊敬のほかに妙な感情が芽生えている。それが何なのか、自分でもうまく整理できなかった。

……まだここにいたのか」

低く静かな声に振り返ると、書文が道場の入り口に立っていた。

「別に、帰る気にならなかっただけだ」

春成はそっけなく答えながらも、無意識に書文の動きを目で追ってしまう。彼の身体は四十を超えてなお引き締まり、無駄のない動きに武術家としての研ぎ澄まされた技が滲んでいる。
その視線に気づいたのか、書文が軽く片眉を上げた。

「何を睨んでいる?」

……別に」

春成は目を逸らし、乱暴にタオルを首に巻く。そして、そのまま書文の横を通り過ぎようとした——その瞬間、強い腕が春成の手首を掴んだ。

「!」

驚いて振り返ると、書文の指がしっかりと自分の肌を捉えている。春成の体温がじわりと上がるのを感じた。

……最近様子が変だな」

書文の黒い瞳がじっと春成を見つめている。その眼差しに、まるで心の奥を見透かされているようで、春成は無意識に喉を鳴らした。

(龍に、こんな風に見られるのは……

異様に意識してしまう自分が嫌で、春成は強引に手を振りほどく。

「気のせいだろ」

そう言って、足早に道場を後にした。
しかし、書文の指の感触がいつまでも消えず、春成は苛立ち混じりに拳を握りしめた。

(クソ……この気持ち……

戸惑いと焦燥。
書文に対する感情が、確実にこれまでとは違うものへと変わっていく。
春成は、それを認めつつあった。


○○○


「今日は随分と荒れてるな」

拳と拳がぶつかり合い、鈍い音が道場に響く。
春成は荒々しく書文に打ち込んでいた。だが、それはいつもの闘志に燃える拳とは違った。どこか苛立ち混じりで、感情の乱れが技に出ている。
書文はそれを見抜きながらも、敢えて指摘せずに受け流した。

……

打ち合いながらも、ふと春成の視線が気になった。
最近、やけに俺を見てくる。対峙する時の目つきが変わった。怒りとも焦燥ともつかない、言葉にしがたい何かが混じっている。

(まさか……

書文は無言のまま、春成の拳を捌き、体を翻して間合いを取った。

「今日はここまでだ」

「は? まだ——

「冷静じゃない。今のままじゃ何も掴めないぞ」

書文はそれだけ言い残し、春成を置いて道場を出ていった。
振り返らなかった。
春成の視線が背中を追いかけているのを感じながらも、あえて振り向かなかった。

……距離を置くべきだ)

春成の気持ちがどんな形を持ち始めているのか、書文にはもう分かっていた。だが、四十半ばの自分と、二十代の春成。関係を誤れば、春成にとっても自分にとっても後戻りできない。
だから、春成が自分を追いかけようとする前に——-この気配を断ち切るべきだった。



「クソッ……!」

道場の床を殴りつける。
納得できなかった。明らかに書文は自分を避けている。まるでこちらの気持ちに気づいたかのように、無言で突き放してくる。

(なんでだよ……

苛立ちが収まらない。
昔から書文には敵わなかった。技も、生き方も、何もかも。だが、唯一手に入れられるかもしれないものがあった。

(それなのに、逃げるのかよ)

気づいた時には、道場を飛び出していた。




書文が向かう先は分かっていた。
夜の街の片隅、薄暗い酒場の奥で、彼は一人グラスを傾けていた。
静かに酒を口に運ぶ姿は、どこか孤独をまとっている。その背中を見た瞬間、春成の中の苛立ちが爆発した。

「おい」

強引に席に座り、テーブルに手を突く。
書文は驚くこともなく、ちらりと春成を見た。

……何の用だ」

「逃げんのか?」

……?」

春成は真っ直ぐに書文を睨みつけた。

「俺が何を思ってるか、分かってるんだろ? だから、避けてんだよな」

書文はグラスを置き、ゆっくりと春成を見据えた。

「お前はまだ若い」

「年の話じゃねえよ!」

思わず声を荒げた。周囲の客がちらりとこちらを見たが、春成は気にしなかった。

「俺はもうガキじゃない。ただの憧れじゃない。超えたいとか、そういうことじゃないんだよ」

書文の目がわずかに揺れた。
春成は息を詰め、拳を握りしめたまま続ける。

……

静寂が落ちる。
書文はゆっくりと息を吐いた。

……後悔するぞ」

「後悔なんかするかよ。龍が逃げなきゃな」

春成の目は、迷いがなかった。
書文は短く息を吐き、再びグラスを持ち上げる。そして、まるで自分に言い聞かせるように、低く呟いた。

……馬鹿め」

書文は、グラスの酒を飲み干すと、静かに席を立った。
だが、その腕を春成が強く掴む。

「まだ話は終わってねえ」

「離せ、春成」

「やだね」

春成の声は低く、熱を帯びていた。
書文はため息をつきながら春成を見た。こうして面と向かうと、春成がどれほど大人になったのかを思い知らされる。少年だった頃のあどけなさは消え、鍛えられた身体と強い意志を宿した瞳——そこに映るのは、ただの弟子や後輩ではなく、一人の男としての欲望だった。

……何を勘違いしている」

「勘違いなんかしてねえよ」

春成はぐいと腕を引き、書文を強引に酒場の裏手へと引きずる。
人気のない路地裏。湿った空気の中、春成は書文を壁に押しつけた。

「春成——

「俺は本気だ」

春成の顔が近づく。
書文は腕を動かそうとしたが、それよりも早く春成がその手首を壁に押しつけた。

「離せ」

低く囁くように書文は言った。
だが、春成は怯まない。

「分かったんだ。俺は……ずっと、こんな風に見てたんだよ」

書文の眉がわずかに寄る。

「龍に勝ちたいと思ってた。でも、それだけじゃない。……認められたい、もっと俺を見てほしい……ずっとそう思ってた」

春成の手が強く書文の腕を掴む。その手の熱がじかに伝わってきた。
書文は静かに息を吐いた。

「やめろ、春成」

「何故?」

……俺は、お前をそういう目で見たことはない」

「嘘だ」

春成はまっすぐに書文を見つめる。

「俺の気持ちに気づいて、避けるようになったくせに」

鋭く指摘され、書文の目がわずかに揺れた。

……関係を壊したくないだけだ」

「壊したくないなら、どうして俺を避ける?」

春成はもう一歩踏み込み、書文の顔を覗き込む。

「俺が望んでるのは、そんな臆病な答えじゃねえ」

「春成……

書文の声が少しだけ掠れた。
春成は、その声の揺らぎを逃さなかった。

「龍だって、俺を意識してるんだろ?」

……

「だったら、認めろよ」

春成はもう一度、書文の手を強く握る。
書文の瞳は静かに揺れ続けていた。

だが——

「俺は、お前の想いには応えられない」

その言葉とともに、書文の手が春成の胸を強く突き放した。

「っ……!」

体勢を崩した春成は、数歩後ずさる。
書文の瞳には、確かに迷いがあった。だが、その奥には、固い拒絶の意思が宿っていた。

「春成、お前はまだ若い。いずれ後悔する」

……そんなの、龍が決めることじゃねえだろ」

「決めるのは俺だ」

静かに、しかし確固たる意志を持って書文は言った。
そのまま、彼は春成を置いて歩き出す。
春成は拳を握りしめた。

……本気で拒絶したつもりか?)

違う。あの目は、完全に拒んでいるものじゃなかった。

……そんな簡単に諦めねえからな」

春成の声は、夜の静寂に消えていった。



○○○



薄暗い路地裏に、男たちのうごめく気配があった。

今回の仕事は書文と春成に、と依頼主たっての希望で、消極的な書文を俄然やる気の春成がどんどん話を進めていった。
請け負った依頼は、地元の実業家の護衛。だが、護衛対象が黒社会の資金洗浄に関与しているらしく、追手の動きが異様に激しかった。

「包囲されてるな」

書文が低く呟く。
春成は舌打ちしながら、背中越しに敵の気配を探った。

「まったく、仕事が荒れすぎだろ」

周囲の影が動く。
次の瞬間、襲撃が始まった。


春成はすぐに相手に飛びかかり、一人を拳で沈めた。

「龍、そっちは任せる!」

「言われるまでもない」

書文も素早く敵を捌いていく。拳が交錯し、鈍い音が鳴り響く。
だが、敵は予想以上に多かった。


「クソ、キリがねえ……!」

そう言った瞬間だった。
乾いた銃声が響く。

——ッ!」

春成は反射的に動いた。
次の瞬間、衝撃が走る。

「春成!」

書文が叫ぶ。
春成は肩に銃弾を受け、その場に膝をついた。血がじわりと滲む。

「ち……大したことねえ」

無理に笑うが、肩の傷は深い。
敵がさらに詰め寄る。

その瞬間——書文の表情が一変した。
普段冷静な書文が、静かに怒りを滲ませる。
次の瞬間、彼の拳が敵を薙ぎ倒した。

書文の猛攻が始まる。
その迫力に、敵が恐れをなした。

——消えろ」

低く呟くような声とともに、最後の一人が沈んだ。
静寂が戻る。



「おい、春成……

書文が駆け寄る。
春成は壁に背を預け、荒い息をついていた。

「肩か……無理に動かさなければ、手当てでどうにかなる」

そう言いながら、書文は春成の顔を見つめた。
その視線の奥にあるもの——それを、春成は見逃さなかった。

……なんでそんな顔してんだよ」

……何の話だ」

「俺が撃たれたぐらいで、そんなに取り乱すなんてさ」

書文は息を詰めた。

……取り乱してなどいない」

「嘘つけ」

春成は笑う。

「龍、俺が死にそうになったらどうする?」

書文の瞳が揺れた。

「俺がここで倒れて、二度と目を覚まさなかったら……龍は、どうする?」

書文は答えなかった。
だが、その沈黙こそが答えだった。
春成は唇を舐め、痛む肩を押さえながら囁く。

「俺を突き放しても、もし俺が死んじまったら——後悔するんだろ?」

書文の拳が、かすかに震えた。
春成はゆっくりと書文の腕を掴み、血の滲む指先で強く握りしめた。

「だったら、認めろよ。俺を好きだって」

書文の呼吸が乱れる。

「春成……

その声は、掠れていた。
春成の指が、書文の顎を持ち上げる。

「俺は龍が欲しい。龍も……そうなんだろ?」

書文は目を閉じた。
そして、次の瞬間——

低く舌打ちをすると、書文は春成の襟を掴み、強引に引き寄せた。

唇が重なる。
荒々しく、そして迷いを振り払うように——
キスが終わった瞬間、書文はゆっくりと春成から離れた。
呼吸が乱れ、唇にはまだ春成の熱が残っている。

……これで満足か?」

低く問うたが、自分でもそれが負け惜しみのように聞こえた。
春成は口元をぬぐい、ニヤリと笑った。

「龍が拒めないってことは、分かった」

……調子に乗るな」

書文は春成の肩を掴む。

「撃たれたばかりだろう。少しは安静にしていろ」

「龍が抱きしめてくれるなら、すぐに治るかもな」

春成の茶化すような言葉に、書文は一瞬だけ言葉を詰まらせる。

……何を考えているんだ、俺は)

春成のことは昔から弟のように思っていた。
それなのに——

(俺は、春成を拒めなかった)

書文は深く息を吐いた。

……お前とは、こうなるつもりじゃなかった」

「へえ、じゃあどうする?…… 今さら『なかったこと』にはできねえぞ?」

春成がじりっと間合いを詰める。

「調子に乗るな」

「乗るさ。龍がもっと俺を欲しがるようになるまで……



春成は怪我を抱えながらも、書文のそばを片時も離れようとしなかった。
書文が距離を取ろうとするたびに、春成はそれを阻むように動いた。
夜、酒場で書文が一人になろうとすると、春成が当然のように隣に座る。

「春成、しつこいぞ。……まだ追ってくるのか」

「追ってくるも何も、龍のそばにいるのが当たり前だろ?」

……

書文は黙ってグラスを傾けた。
これまで、自分に執着する人間はいなかった。書文の世界は戦いと金、冷たい関係ばかりだった。

だが、春成は違った。

強引に踏み込んできて、俺が何を言おうと手を離そうとしない。
書文は自分の胸に芽生えた感情を振り払おうとするが、それが叶わないことを知っていた。



○○○



夜風が吹き抜ける屋上。
春成は手すりに肘をつき、夜景を眺めていた。
書文が背後に立ち、しばらく沈黙が続く。

「なあ、龍」

……なんだ」

春成が振り向く。

「もう俺から逃げるの、やめろよ」

書文は目を細めた。

「無理して突き放そうとするのは、もういいだろ」

……俺の何を知っている」

「知ってるさ。俺に甘い。
 ……俺が撃たれた時、龍は本気で怒った」

……

「命を懸けてでも守りたいって思ったんだろ?」

書文は息を詰めた。
春成が撃たれた時、胸が締めつけられた。もしも春成を失っていたら、自分は——

……俺は、春成を大事にしたいんだ」

低く、絞り出すような声だった。
春成の目が、わずかに見開かれる。

「だからこそ、お前の執着に流されるわけにはいかない」

「それ、もう遅えよ」

春成は一歩、書文に踏み込んだ。

「もう、俺を大事にしたいと思った時点で、終わってんだよ」

……っ」

春成の指が、書文の顎を持ち上げる。

「認めろよ、龍」

……

「俺を、手放したくないんだろ?」

書文は目を伏せた。


……ああ、そうだ」

次の瞬間、春成が書文を強く抱きしめた。

「もう、逃がさねえ……!」

書文は春成の背にゆっくり手を回し——
春成の腕の中に抱かれながら、書文は静かに目を閉じた。
もう抗えないことは分かっていた。


「本当にこれでいいのか」

低く問うと、春成は迷いのない声で答える。

「当たり前だろ。逃がさないって言っただろ?」

書文はふっと苦笑した。

「俺はもうガキじゃない。欲しがることを、ずっと抑えてたのはどっちだよ」

その瞳には、確かに熱が宿っていた。

……お前が望むなら、俺はもう拒まない」

書文がそう言った瞬間、春成は書文の唇を強く塞いだ。


○○○



部屋に入るなり、春成は書文を壁に押しつけた。

……そんなに焦るな」

書文が低く囁くが、春成は聞かない。

「ずっと我慢してたんだよ」

春成の手が書文の肌をなぞる。
戦いで鍛えられた肉体に触れるたび、昂ぶりが増していく。
書文はわずかに息を乱しながらも、春成の動きを受け入れていた。

……本当に俺でいいのか」

「俺が誰かに興味持ったこと、あったか?」

……ないな」

「そういうことだよ」

春成の指が書文のシャツのボタンを外していく。

……もう、俺のものだからな」

春成の囁きに、書文は薄く笑った。

「お前のもの、か……

春成はその言葉にむっとなり、書文の手首を掴む。

「違うのかよ?」

「いや……もう、そうなのかもしれんな」

そう言った瞬間、春成の理性が完全に切れた。



夜が深まるにつれ、二人の距離は完全に溶け合っていった。
互いの肌を確かめ合い、何度も名前を呼び合う。
春成は書文を求め続け、書文もまた、それを受け入れるように春成の名を呼ぶ。



……満足か?」

——夜が明ける頃、春成に抱きつかれた書文が呆れたように呟くと、春成は満足げに微笑んだ。

「足りねえよ」

「欲張りだな、お前は」

「当然だろ」

書文は何も言わなかった。
だが、その指が春成の腕をそっと握り返す。
それだけで、春成は満ち足りた気持ちになった。
これで、もう絶対に離さない。

書文を独占するという誓いを胸に、春成は静かに目を閉じた。



○○○



……最近やけに俺につきまとってないか?」

書文はそう言いながら、目の前の男をじっと見た。

朝起きれば隣にいて、仕事の打ち合わせに行けば当然のようについてきて、夜になれば「どこにも行かせねえ」と言わんばかりに腕を絡めてくる。

ここまで執着されるとは思っていなかった。

「当たり前だろ」

春成は当然のように答える。

「龍は俺のものなんだから」

書文は深くため息をついた。

……だからといって、四六時中張り付いていたら仕事に支障が出る」

「出さねえよ。むしろ俺が護衛してやる」

「護衛の必要があるのはお前の方だろう」

書文は春成の肩に軽く触れる。銃撃戦の時に負った傷は治りつつあったが、完全ではない。

……俺の心配より、お前自身の体を気にしろ」

「龍が側にいれば、なんの問題もねえよ」

春成の言葉に、書文は再びため息をついた。

……本当に俺から離れる気がないらしい)

認めたとはいえ、ここまで一方的に執着されるとは思っていなかった。
いや、それを言うなら——

(俺ももう、春成を突き放せないんだろうな)




それから数日後、書文は一人で取引の場に出向いていた。

春成を同行させると、感情的になりやすい。黒社会の交渉において、それは致命的だった。

だが——

「ずいぶん大胆な真似するじゃねえか、龍」

帰宅した瞬間、待ち構えていた春成が低く言った。

……なんの話だ」

「俺を置いて、勝手に仕事に行ったことだよ」

春成の目が細められる。その奥に、怒りと独占欲が渦巻いているのを、書文はすぐに察した。

(面倒なことになったな)

「俺がいなくても問題なかった」

「問題あったぞ」

……

「龍がいない間、俺はずっとイライラしてた」

書文は無言で春成を見つめた。

……お前、それは少し異常じゃないか?」

「異常でもなんでもいい」

春成は書文の肩を掴んで引き寄せた。

「俺の側にいない龍が悪い」

……

書文は目を伏せた。
これは単なる執着じゃない。もはや病的なほどの独占欲だ。
春成は本気で書文を離す気がない。

(どうする……?)

書文は答えを出せないまま、春成の腕の中に囚われるように抱きしめられた。

「もう、離さねえからな」

春成の囁きが、耳元に絡みついた。



○○○



「なあ、龍」

春成はソファに腰掛けたまま、じっと書文を見つめていた。
書文がどこへ行こうと、誰と話そうと、常にその視線が追ってくる。
まるで獲物を逃がすまいとする猛獣のように——

「最近、考えてたんだ」

「何を」

書文が書類をめくりながら答えると、春成はゆっくりと足を組んだ。

「龍が俺のことをどれだけ考えてるのか」

……

「俺は、龍の頭の中にちゃんといるか?」

……いるだろうな」

「じゃあ、俺無しで生きていけるか?」

その言葉に、書文の手が止まった。

「お前……

「俺はな、龍」

春成は立ち上がり、書文の前に立つと、その顎に指を添わせる。

「俺無しじゃいられなくなるくらい、もっと俺に溺れさせてやりたいんだよ」

書文の眉がわずかに寄る。

……本気で俺を縛る気だな)

春成の執着はもう異常な域に達していた。
だが、書文自身もまた、それを完全に拒むことができないことに気づいていた。

(俺にできることは……

書文は春成の手をそっと払い、ふっと微笑んだ。

「なら、ひとつ聞こう」

……なんだ?」

「本当に、俺を縛りたいなら……俺からの贈り物を受け取れるか?」

春成は目を細める。

「贈り物?」

書文は静かに立ち上がり、机の引き出しから小さな箱を取り出した。

黒いベルベットのケース。
春成は、それを見て目を瞬いた。

「開けてみろ」

書文が促すと、春成はゆっくりと蓋を開けた。
そこにあったのは——



銀細工の指輪だった。

決して派手ではない。だが、指にはめれば確実に「誰かのもの」であると主張する、一目で分かる証だった。

春成は指輪を見つめ、書文を見上げる。

……なんだよ、これ」

「気に入らなかったか?」

「いや、そうじゃねえ……

春成は指輪を手に取り、無言で書文を見た。

「お前が俺を縛りたいなら、俺もお前を縛る権利がある」

書文の声は低く、静かだった。

「お前だけが執着するのは、不公平だろう」

春成は、しばらく無言だった。
だが次の瞬間——

……ッ」

書文の胸ぐらを掴み、強引に唇を重ねた。
荒々しく、獲物を喰らうように——

……くそっ……!」

春成は書文の指に、自分とお揃いの指輪をはめる。

「もう、俺のものだからな」

「お前も、俺のものだ」

互いに支配し、支配される関係。
その夜、二人は再び溶け合った——今度こそ、完全に。



○○○



翌朝、春成はまだ寝ている書文の手をそっと握りしめた。
昨夜、互いの指に通した指輪は、確かにそこにある。

……これで、もう俺から逃げられない)

春成は薄く笑い、指輪をなぞる。
これまで書文を縛るものは何もなかった。
黒社会で生き、戦いを重ね、いつ死んでもおかしくない生活を送る中で、誰にも執着せず、誰からも執着されない。

だが今は違う。

……朝からそんな顔で見つめられると落ち着かん」

目を覚ました書文が、ぼんやりとした声で呟く。
春成はにやりと笑い、指を絡めたまま書文の手を引き寄せる。

「落ち着かなくていい。俺がそうさせてやる」

「お前は本当に……

書文は苦笑しながらも、春成の指をそっと握り返した。



その日から、春成はさらに堂々と書文を自分のものだと主張するようになった。

……お前、戦う時は指輪を外せ」

「なんでだよ」

「拳を握る時に邪魔だろうが」

「俺はこれを外さねえぞ」

……何?」

「これを外したら、龍が俺のだって証明できねえだろ」

……馬鹿か」

書文はため息をついたが、春成の独占欲はますます増していくばかりだった。
仕事の依頼先でも、書文のことになると過剰に反応する。

「最近ずいぶんと龍さんにべったりだな」

仕事仲間の男が茶化すと、春成は睨みつけた。

「当たり前だろ。龍は俺のだからな」

「は……?」

その堂々とした言葉に、相手は目を瞬かせるしかなかった。
書文はもう否定するつもりもなく、不思議と悪い気はしなかった。



○○○


夜。
書文が部屋で煙草をくゆらせていると、春成が隣に腰を下ろす。

「なあ、書文」

「ん?」

「俺たち、これからどうするんだろうな」

「どうするとは?」

……死ぬまで一緒にいるのか?」

書文は驚いたように春成を見た。
春成は煙草を奪い取り、指輪を弄びながら言う。

「龍がいなきゃ、俺はまともに生きていけねえと思うんだよ」

……

「だからさ、龍もそうなればいい」

書文は短く笑った。

「もう、そうなってるかもしれんぞ」

春成は驚いたように目を見開いた。

……マジかよ」

「お前に、俺はもう抗えない」

書文は春成の手を取り、ゆっくりと指輪をなぞった。

「だから……この指輪をつけた以上、最後までお前といるつもりだ」

春成の表情が、僅かに歪んだ。

……今、泣きそうになった」

「泣くな、馬鹿」

「嬉しすぎるんだよ」

春成は書文を強く抱きしめた。
指輪が光る。

——それは、二人だけの契り。

もう、どこにも逃がさない。
互いに縛られながら生きていく。

それが、彼らなりの愛の形だった。