らく@創作企画TRPG
2018-05-08 22:40:16
698文字
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【学戦】かわいいと言わないで【朧綴】




 朧と綴がサイダーを片手にガードレールに腰掛けて他愛ない話をしていると、ついと綴の視線が何かを追うように動いた。
 一度だけではない。
 何かを見つけては追い掛ける。
 それでいて特に相槌が疎かになるということもなく、たぶん無意識なのだろう。
 何を追い掛けているのか気になって、話を止めずに朧は綴の視線の先を何気なさを装って盗み見る。
 最初は淡い色。次は花柄。その次はチェック。さらに次は水玉模様。
 同い年くらいの女の子達が着ていたのは、どれも柄は違えど膝丈のふわりとしたワンピースだった。
 追う視線の中のアメジストの感情は読み取れない。読み取れないが、雄弁ではあった。
 思わず朧は目を細めた。
「かわいいな」
 綴の視線の先を追いながら呟く。
 ああいうのが好きなんだろうか。確かに綴が着たら似合いそうだ。そんなことを考えていたら、わずかな弱い力で、きゅ、と朧のシャツの裾が引かれた。
 前に向けていた視線を綴に戻し、思わず目を見張る。
 怒っている、というより泣きそうだと思った。
 一体どうしたのか。
 いきなりのことに狼狽えていると、何度も口を開き掛けては閉じて視線を彷徨わせ言いよどむ綴が、とうとう完全に俯いてしまう。
 蚊の鳴くような声が絞り出される。
「かわいくない」
「え」
 言わないで。
「全然かわいくない!」
 他の子を見て、そんなこと言わないで。
 素直に言えたならどんなによかったろう。
「え? そう、か? でも、あのワンピース俺は可愛かったと思うよ。綴に似合いそうで」
 続いて言われた言葉に、綴はさっきとは違う感情で俯いた顔を上げられなくなった。


※こちらのテキストは妄言でもあり、フィクションでもあり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。