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らく@創作企画TRPG
2017-08-02 18:52:57
1608文字
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【学戦】 うつくしい少年 【水越姉弟と月雪朧】
よびみず隊の隊長だったという女生徒のことを知っているか。
赤軍へと入り、少し経った頃、そう聞かれた。
名前を、水越淡といったらしい。
(水越
……
)
脳裏に過ったのは、眼鏡を掛けている意味がないように思える長く重たい前髪で、いつも目元を隠してしまっている同学年の少年の姿だった。
同じ名字だから、まさかなと思いながら問えば、淡隊長と水越ノブは姉弟だったのだと答えられる。
よびみず隊の隊長は、朧が入ったときにはもういなかった。
水越ノブの姉だったというその隊長は、佐久本曰く、美少女でノブとよく顔が似ていたらしい。
じゃあ、彼がいつも顔を隠しているのは、もしかしてお姉さんを思い出してしまって辛いからか?と言えば、噴き出された。
彼は、彼の姉が亡くなる前からそういう風で、別段、そんな理由で隠しているわけではないらしい。
美少女すぎて不都合だから隠してんだよと笑って返され、どういう顔をしていいかわからなくなった。
生前の隊長を知らなくとも特に何かあるわけではないが、水越ノブを見かける度に何となくその話を思い出す。
朧は、水越淡という女生徒のことはひとつも知らない。
それでも、誰かしらがたまにぽろり、ぽろりと零す話を聞くだけで、恐ろしく有能で、そして、誰からも信頼され、親愛を寄せられていたのだろうということは分かった。
そんな中で、水越ノブが一度も姉である隊長のことを口にするところは見たことがない。
水越淡のことも彼のこともまだよく知らない朧だったが、けれど、それが、ある一種の答えなのだろうと思って、無理に関わろうとはしなかった。
「何?」
視線を感じたらしく、無愛想に問われた。
たまたま水越ノブと二人になった今の状況は、かなり珍しいことだ。
朧は別にノブのことを避けようとしているわけではない。ただ機会がないだけで話したいとは思っていた。
どうしようかな。
話題を探しているうちに立ち去ってしまい兼ねない彼は、けれど意外にもそこに留まっている。誰かに呼ばれて待っているのだろうか。
手元を見るとスマホで何かやっていた。
あまりじろじろ見るのもよくないと思い、目を逸らそうとしたけれど、画面のゲームに思わず口を開いた。
「あ、それ」
弟が好きでやっているやつだった。勧められて朧も少し遊んだことがある。
「何? 知ってんの、これ。すげぇどマイナーなのに」
つっけんどんだが、いつもよりも明るい声が掛けられた。
ふ、と口元に微笑が浮かんでいる。
目元は相変わらず眼鏡と重い前髪で覆われていてよく見えないが、笑っているのはわかった。
「ああ、うん。弟が好きでハマってて最終章までクリアしたって」
「マジで? あんたの弟すげぇな。これ難しいんだぜ」
見た目と違い、口調は乱雑で小ざっぱりとしていて親しみやすい。
「知ってる。俺も勧められてやったんだけど、二面から手に負えなくなってさ」
「わかる。急に難しくなるよな」
あーだこーだとマイナー過ぎるゲームの話で盛り上がり、思いの外だらだらと喋ってしまった。
「そうそう、ラジバンダリがカバディやり出したときはさすがの俺もスマホを放り出して、天を仰いだね」
「まさかラジバンダリが、と思うもんな。あそこは」
だよなーとひとしきり笑ったノブは、邪魔そうに眼鏡を取って、笑い涙が溜まった目元を拭うと、そのまま前髪を掻きあげた。
隠れていた顔が、見える。
どこまでも青く透き通った瞳が、瞬きをしてこちらを向いた。
そして、にやと悪そうに目を細め、片手に持っていた眼鏡を指し示す。
「これ、伊達眼鏡」
俺、顔がいいからさと面白そうに笑う彼を見て、ああ、佐久本の言っていたことは本当の本当だったのだと思い知った。
見も知らぬ、かつてのよびみず隊の隊長である女生徒の面影を、確かに彼に見たのだ。
※こちらのテキストは妄言でもあり、フィクションでもあり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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