らく@創作企画TRPG
2017-05-21 21:36:05
1888文字
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【刀宿奇譚】 花筐ノ城 【おまけ・人物紹介】

本編を読んだ後に読んでね。ちょっと雰囲気があやしい。

【秘色の君と燕】
 温かな香り、触れずとも胸いっぱいに満たされる。
 絡まる視線は解けることを知らず、背筋を痺れが駆けてゆく。堪らずにふるりとひとつ身を震わせれば、甘やかな呼気が耳朶をしっとりと湿らせた。
「よく眠れ、私の燕」
 上質な着物の上から感じる温かな柔らかさに頭を預けても、お姫さまは無防備に何の抵抗もなく微笑むばかり。
 世の人は生殺しと言うけれど捕らわれの燕は、ただ蕩けるように微笑んで目を瞑った。


【 お姫さまと鼠】
 城に戻ると、主に添い寝を言い渡された。
 どんな命も受けて答えるしか出来ない鼠は、生真面目な顔で横に転がり、同じように傍に寝転がった主はいたく満足そうだ。
 そのまま寝入るのを待っていたが気配はなく、じいと見入る視線に応えて目を開ける。
「甘そうな色」
 何のことだと思えば、髪に触れられる。
「べっこう飴みたい」
 白く花のように、たまらなく甘い指が、鼠の髪を一、二度、触れて撫ぜた。


【 鼠と燕】
 ときおり、鼠は燕の名を呼ぶ。もう己が名ではない名前を。
 秘色の君に呼ばれる名が名前であり、それ以外の名などすでに用を為さず、意味もない。
 それなのに鼠は燕の名を呼ぶ。
 柔らかな熱の這うあいまに、夜陰の刻に、まだ起きぬ朝日を目覚めさせるように、お姫さまも知らぬ名を鼠は呼ぶ。
 上ずる声に混ぜ「なぜ」と問えば、鼠はいつもは頑迷なまでに情を覗かせぬ薄墨の瞳を細め、ただ、けぶるように微笑んだ。





――――――――――――
人物紹介という名の解説

【お姫さま】
本人の自覚が全くもってない、囚われのお姫様。
お姫さまの世界は燕と鼠によって、彼らの手の中で完結させられている。
赤ちゃんは神仏に祈ると授かると信じており、そういった方面に関する知識が不自然なほど抜け落ちている。鼠の歪な執着心によって故意に形成されたものであり、燕はそこの辺りは関知していないが、お姫さまが望まない限り手を出すこともない。そして、何も知らないお姫さまが望むことはない。
聞いたものをそのまま信じて疑うことの知らない、生粋の箱入り純粋培養。
自分の目で現実を見ても、言葉で容易く歪められてしまう環境にある。
燕と鼠の本当の名前を知らず、本当の名前があるとすら思っていない。
燕も鼠も、お姫さまに呼ばれる名以外は塵屑同然だと思っているので、本名など心の底からどうでもいいと思っている。
お姫さまは鳥かごの鳥。

【燕】
『腰に刻まれた燕の紋から、打刀を抜いて戦う刀宿。紅の瞳と朱鷺色の髪を持ち、城内で生活している。どこかに行きたい。鼠の紋を持つ者は幼馴染みである。』

幼い頃より、どこかに行きたいと思っていたが、それはお姫さまのところなのだったと思っている。鼠とともに拾われた。
戦狂いだが、お姫さまのそばにいるとただの怠惰な男になる。
甘い女人のような外見に似合わず、言動は粗野。
鼠の存在は鬱陶しいと思っているが、自分がお姫さまの傍を離れないでいるためには、いないと困るので容認している。
お姫さまの虜。お姫さまの手元に置かれるためなら何でもする。
そこに罪の意識はなく、縄張りを守るような本能だけがある。

【鼠】
『左胸に刻まれた鼠の紋から、槍を抜いて戦う刀宿。薄墨色の瞳と琥珀色の髪を持ち、主に使えて生活している。穏やかで優しい。雛罌粟の紋を持つ者は飲み友達である。』

真面目で堅物。お姫さまに対しては常に穏やかで優しい。燕には冷たい。
戦いは好きでも嫌いでもない。お姫さまのそばにいたいのは山々だが、いろいろと外の情報を収集しないことには現状を維持できないので仕方なくやっている。
お姫さまの知らないところで、燕を燕の本名で呼ぶのはちょっとした嫌がらせである。
お姫さまの虜。お姫さまを手元に置いておくためなら何でもする。
わずかに罪悪感を持っているが、燕で発散させている節がある。
拗らせている感があり、少々、歪な執着心が育つ。

【お父さま】
やられちまったなぁと言ってやりたい。愛妻家と名高く、けれど、その妻には早く先立たれ、忘れ形見であるお姫さまを花よ蝶よと育てていた。
城下の外れで手酷く扱われていた刀宿を拾い、ついでに愛娘を守るための要員に育てて手に職も付けばお前たちもあんな酷い暮らしをしなくて済むね、とまで考えて保護したのに、最悪に裏切られた。
よき城主であり、よき父だった。
なので、鼠は罪悪感を拗らせてちょっと歪んだ。燕は自分の欲しいもの以外どうでもいい性分。
燕の心は刀に近く、鼠の心は人に近い。




※こちらのテキストは妄言でもあり、フィクションでもあり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。