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らく@創作企画TRPG
2016-10-16 21:59:38
866文字
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【学戦・和角綴】はじめての
彼女の手は差し伸べるためにあった。
銃は人を生かすことが難しいからあまり好きではないのだと、武芸の稽古では専ら刀にばかり力を入れていた。
技を磨けば、人を生かしながら戦えると刀の柄を握った。
彼女は、そうであることを慈しまれていた。
父と母の大きく温かな手を握る感触しか覚えていない。
幼い弟と妹の小さく柔らかな手と手を繋ぐ感触しか覚えていない。
武芸に励んではいたが、彼女の手は、無骨で野蛮な感触よりも柔く温かな愛しい感触しか記憶していなかった。
彼女は、そうであることを許されていた。
生かすために戦う志を哂うものはなく、慈しみ、また慈しまれることを邪魔するものもない。
彼女の手は温かく、清らかだった。
***
彼女が今、途方もなく寄る辺ないことをその場にいる誰もが知らなかった。
知るわけがなかった。
心臓が壊れてしまうのではないかというほど鳴っている。
顔色は青く、暑くもないのに汗が垂れ落ちていく。
大丈夫かと掛けられる声も耳に入らない。
『彼』に向けられる心配は、彼女を素通りしていった。
刀の、固く冷たい柄だけが、手の平の感触を支配し、いとも容易く彼女の思い出を塗り替えていく。
「無理をするな、和角」
部隊長から向けられる気遣いに、顔を上げた。
「お前はもう大事な部隊の仲間だ。失望なんてしない、戦えないことを恥じなくていい。命があってこそ、次があるんだ」
この男は何を言っているのだろう、と彼女は思った。
彼女は、この戦場での活躍を期待されている。
戦えないでは済まされない。戦わなくてはならない。戦い続けなければ、いけない。
初陣を放棄させることは、彼女という意義を取り上げることに等しく、次などない。
彼女に、次などないのだ。
ふつ、と湧き上がった怒りは震えを止めさせた。
――
何も、知らないくせに。
今、目の前で『部隊の仲間』と呼ばれているのは彼女じゃない。
そんなことすら、わかっていないくせに。
『彼』へ向けられる労わりは、全部、なにもかも、無意味だ。
すべて、斬って捨てる。
※こちらのテキストは妄言でもあり、フィクションでもあり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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