Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
らく@創作企画TRPG
2016-09-28 22:09:00
1254文字
Public
Clear cache
【学戦】朧の祖父と倉野纈
※佐久本もいるよ。
「信頼に足らんから、腕を取ったと言ったな」
白髪も、丸まった背も、年齢によるものだろうが、そこに立つ足はしっかりと揺らぎなく、眼鏡の奥の眼光は鋭かった。
草臥れた白衣のポケットに片手を突っ込んで、彼は月雪朧とよく似た雰囲気の目を眇めた。
「それなら、お前達の組織はみんな片腕か片足か」
「いいえ」
否定し、膨れ上がる怒気が裂ける前に倉野はまた口を開いた。
「私たちの元にきた学生たちは、もとより何も持っていないのです。何も持たない者から、それ以上を取ることはできません」
よびみず隊に下るものはその性質上、守るものが少ない者たちが多い。
仲間はネズミ算式に増えていくが、実質、隊の中枢を為す者たちは後がないものばかりだった。
「白から奪われた。あるいは黒から。すでにもう」
そうして赤に下っていく。彼らにはもう他がない。
「うちの朧は、何も奪われていなかったから奪ったと?」
低くしわがれた声が恫喝するように問いを投げる。
「白からも黒からも奪われたことがなかったから、お前さんたちの組織に入れるために、その痛みを恨みを味わわせたと、そういうのか? え?」
じゃりと地面を踏みしめ、倉野たちから逸らしていた体を正面へと向けた。
「とんだろくでもねぇ組織じゃねぇか」
「
……
っ!!」
隣で膨れ上がる怒気を察知して、倉野は名を呼んだ。
「鈴、下がれ」
冷たく感情のない声は、命令だ。
佐久本はぐっと一瞬だけ肩の力を込めたあと、何事もなかったように気の抜けた気配を晒した。
朧の祖父は、そんな佐久本を複雑な表情で見守り、倉野へと視線を移すと苦り切った顔になった。
がしがしと白髪の頭を掻き、「ちょいと煙草吸うぞ」と律儀に断わりを入れてから、しけもくを吸う。
「
……
お前さんたちの話を聞く限り、大層ご立派な思想をお持ちのようだが、やっていることはお前さんたちが厭う白黒と変わらねぇじゃぁねぇか」
薄暗い夜の中で、ちっぽけなしけもくの火だけがほのかに険しい表情を浮かび上がらせる。
「今の二つのお国があんたたちにやったことと、あんたたちがうちの孫にやったことは、変わりゃしねぇよ」
理不尽を強制し、不当を味わわせた。
しけもくを吸う度に、小さな火種がわずかに爆ぜる。
「だけど、あいつぁ、朧は、恨まねぇだろうな」
火傷を負う寸前のしけもくをうまく吸い終えると、「そういう奴だよ」と肺の底から白い煙を深々と吐き出した。
「今さら言ったって聞きゃしねぇんだ。お前さんを責めたって仕方がねぇこともわぁってる。いい年して八つ当たりだ。可愛い孫が片腕落とされて帰って来たんだ。小言の二つ三つ言いたくもならぁな」
目を合わすこともなく矢継ぎ早にそう言うと、彼はくるりと背を向けた。
「あいつはたまに底抜けに馬鹿なことをやらかすが、親から貰った体をわけのわからねぇ組織にやると言い出すほど馬鹿じゃあねぇんだ。困ったことにな」
「申し訳ありませんでした」
倉野はその背に向けて、深く深く頭を下げることしか出来なかった。
※こちらのテキストは妄言でもあり、フィクションでもあり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内