らく@創作企画TRPG
2015-09-24 23:12:47
1081文字
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【学戦】#好きな子に言われて嬉しい言葉は?

もしかしたらあるかもしれない未来いふ【朧綴】

「綴さん、言っといたからお兄ちゃんに」
朧の妹の風乃がしれっと報告してきたが主語がない。
何を、と聞けばニマリとあまり感じのよろしくない笑みを返されただけだった。
まぁ、大したことを話した覚えはないし、気にするほどのことではないだろうと思った。
このときは。


***


「こっちの荷物持って貰っていいか?」
二人で買い出しを終えたあと、珍しく朧がそんなことを言った。
いつもなら「俺が持つからいいよ」と手伝おうとしても持たせようとしないのに。
ボクはそこらの女のようにか弱くないのにといつも不満だったから、一も二もなく引き受けた。
「綴」
すると、ボクが荷物を持ったことで空いた朧の片手がすっと差し出された。
一瞬、意味が分からなくて朧の顔と手を見比べる。
「手ぇ、繋ぎたくなったから、荷物ふたりで分けたんだ」
……っ!!」
ぶわっと顔に熱が集まるのが分かった。どうして、コイツはそんなにストレートに……
言っても栓ないことをぐっと飲み込んで、おずおずと手を握れば嬉しそうに微笑まれたから悔しくなった。
「お前の手、少し冷たいぞ」
「綴の手は、すげぇあったかいな」
自分のではない体温がじんわりと指先から伝わって染みわたる。
ああ、そうか。
「朧」
「ん?」
視線がこちらに向いたのを分かっていたけれど、目を合わすことはできなくて。
ただ、繋いでいる手に少しだけ力を込めた。
「つ、次の買い出しのときも、ボクが荷物を半分持ちたい」
せいいっぱいの要望に、朧が蕩けるように笑った。


***


それから、ふと何かしら切欠があれば朧はよく『手を繋ぐ』ようになった。
買い出しのとき、一緒にテレビをみてるとき、何となく手が空いたとき、まるで癖みたいに。
「つづり」
夜、熱に浮かされたように名を呼ばれる、ときも。
前はどうだったかなんて思い出せない。
ただ繋がれる大きな手が愛しくて縋るように握り返した。


***


手を繋ぐことに何の抵抗もなくなるくらいになった頃、ニンマリと笑う風乃がまたもやボクの前に現れた。
「綴さん、改めて質問です」
……?」
「好きな人に言われて嬉しい言葉は?」
問われて、ボクは聞き覚えのある問いに、やっとこれまでの発端に思い至って、思わず両手で顔を覆って蹲った。

『言っといたからお兄ちゃんに』

なるほど、そうか。そういうことか。
かなり前、ボクは今と同じ質問をされて、こう答えたんだった。

……手を、繋いでくれるだけで、いい」

馬鹿か。馬鹿なのか、お前たちは。
このまま熱で溶けてしまいたい。





※こちらのテキストは妄言でもあり、フィクションでもあり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。