雪洞
2025-03-21 00:53:46
2210文字
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ジュエルグリムのパソスト1話ネタ

付き合いたてマレ監♀のマレに振り回される3年生たち。ギャグです。


 会心の出来――そう言わんばかりのクルーウェルの表情に、三年生一同も揃って同じ笑みを返した。皆の眼前にあるのは、ブレイジング・ジュエルの共通衣装を纏ったトルソー、それもレディースと特注サイズの小さなもの。完成したばかりのこの服は、ライブの開催に伴い監督役を担った一人と一匹へのサプライズプレゼントだ。
 輝くビジューは白と黒で学園を表しつつシックに。バックには黒のシフォンリボンをあしらいクールな中にもキュートな印象を。さらに監督生には黒いシャツにリボンを結び、その中央にアクセントとしてグリムの魔法石と同じ色のブローチを付けてある。ボトムは刺繍入りのミニスカート、そして同じ模様の入った黒地のタイツで揃えた。
 デザイン、縫製、刺繍、ビジュー縫い付け等々、各々の担当箇所は異なるが、皆確信している。監督生とグリムはきっと喜んでくれると。
「手伝いご苦労、仔犬たち。これはお前たちから採寸の日にでも渡してやってくれ」
「了解でーす!」
 早速写真撮影に勤しむケイトの声に見送られ、クルーウェルは先に被服室を出る。そのすぐ後だ。「で……」どうやって渡す? トレイが話題を出そうとした矢先
「衣装は僕が着せる」
マレウスがあまりにも堂々と言い切ったのは。
「出、出〜〜公私混同奴〜〜」
 そんなイデアのツッコミに耳を貸さず、マレウスは「異論はないな」と皆を一瞥する。殆どが「異論も何もお前の中ではもう決定してんだろ」と言わんばかりの表情を浮かべていることなど全く意に介さず、沈黙を肯定と受け取ったようだ。
「まあ、魔法で着せる一択だけど……
「イチャつきてえなら他所でやりやがれ」
 呆れ顔のヴィルに続き、レオナは心底うざったそうにごちる。監督生とマレウスがそういう仲だとはとっくに知れているものの、何と言うかまあ、堂々とそんな様を見せられるのは癪に障るというもので。
「ふふふ、竜の君。愛しのトリックスターを自らの手で着飾らせたいのだね」
「すまんのう、マレウスに春が来てしもうて〜」
 ちっとも謝罪の空気を感じないどころかリリア氏のそれはもはや息子に彼女ができてあらやだうふふモードと化した親――とイデアは直感したが黙っておいた。
「そういえばデザイン決めるのにもめーっちゃ口出してたよねえ」
「縫い付けのときも圧を感じたよ……
 苦笑いのトランプ兵の横で、マレウスはじっと出来上がった衣装を見つめる。
 嗚呼、着せてやる日が待ち遠しい。
 そんな愛おしさに溢れた眼差しを見て、ヴィルは密かにため息ひとつ。
「採寸の日、きちんと集まれればいいけどね……

――案の定だった。


 マレウスが魔法を発動させた次の瞬間、ビジュー輝くブレイジング・ジュエルの衣装を纏った監督生とグリムは、驚きながらも溢れんばかりの笑顔を見せた。
 肝心のマレウスが集合時間に現れず中庭をほっつき歩いていた時はどうなるかと思ったが、ともかく無事に全員で被服室を訪れることができてよかったと、三年生一同は胸を撫で下ろす。いないからと勝手に監督生を着飾らせた日にゃ、あのドラゴンは何をするか分かったもんじゃない。
「にゃははっ! カッケーんだゾ! オレ様たちの衣装〜!」
「うん! ツノ太郎、先輩たち、本当にありがとうございます!」
 何はともあれ、予想以上の喜びようを見せてくれて作った甲斐があるというもの。被服室がほんわかと満足感に包まれたそのとき、「待て」と他でもないマレウスの声が場の空気を変えた。
 今度は一体何だ? そう皆が思うさなか、マレウスは監督生へそっと「手を」と告げた。
「手? どうし……
 言われるがまま差し出された監督生の両手をそっと取ると、マレウスは再び魔法をかける。周囲が小さく光ったかと思えば、どこからともなく複数の小瓶が現れ、あっと監督生が声を零す間に下地を整えるや、その桜色の爪を漆黒に彩っていく。そして仕上げのトップコートがきらりと光る頃、彼女の両の手は上品な黒で見事に艶めいていた。
「僕らのメイクプランでは寮ごとの色のマニキュアを塗ることになっているんだが、ならばお前にも施さなくてと思ってな」
「わあ……ありがとう、ツノ太郎」
 普段はマニキュアに馴染みのない暮らしを送る彼女は、手を翳したりじっと見つめたりと、嬉しそうに微笑みを浮かべる。
 そして、その笑顔の中にただ単にマニキュアを塗ってもらった以外の喜びが隠れていることに、気付かない一同ではない。
「ふふっ……ツノ太郎と同じ色だ」
「ああ。お前にもよく似合っているぞ」
 お揃いだ、と手を差し出し、互いにその指先を触れ合わせる。その様の仲睦まじいことといったら。差し込む日差しに光るビジューがまるで二人にきらめきを添えているよう――

「はあ、マレウスったら……
「マーキングがお上手なこって……
「すまんの〜そういう年頃なんじゃ〜」
「拙者もう二重の意味で帰りたい」
「なあなあ、爪はいいからオレ様を褒めるんだゾ〜!」
「ふふ、ムシュー・毛むくじゃらもトレビアンだよ!」
 呆れと微笑みとツッコミと。あれやこれやに取り巻かれながらも竜が恋人に向ける眼差しはなおも甘く。
「トレイくん、この空気塗り替えらんない?」
「うーん。無茶だな」
 トランプ兵たちは、監督生が話を採寸に戻してくれることを切に願うばかりであった。