三毛田
2025-03-20 21:41:56
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37 17. ぎゅっと抱きしめる

37日目
強請れば抱きしめてくれる

「たーんこ。ぎゅってして?」
……
 両手を広げ、おねだりするとぎゅっと優しく抱きしめてくれる。
 今ならスキップできるし、綺麗に鼻歌も歌えるだろう。
「はは。君たちは本当に仲がいいんだな」
 丹恒と別れて、ファイノンと二人で依頼された材料を採取しにクレムノスへ。
 その道中、ふいに声をかけられた。
「俺たちは親友で恋人だからな。いつもなら、もう少し粘らないとしてくれなかっただろうけど」
「それは出発の時間が押していたから、かな?」
「多分。それで?」
 腰に手を当てて白髪の友人を見上げると、彼は気まずそうに視線をそらす。
「まーたモーディスにちょっかいを出してたんだろ。昨日、市場で子供たちと『メデイモス王子様、明日も遊んでくれる?』『用事があるから、すぐに来れない。が、必ず来よう』『本当?!』『ああ』『指切り!』ってやり取りしていたのを聞いて、からかいにいったんじゃないのか? それで、トリビーに怒られた」
「惜しい。どうしてかアグライアとキャストリスさんもいたんだ」
 指をぱちんと鳴らし、惜しいと口にするが、この男反省してない様子だ。
「子供って、よく見てるよな。ああいう大人げないことをするとこにはめったに近寄らない」
「僕のどこが大人げないって?」
 煽ったのは俺だが、ここまであからさまに引っかかると色々心配になる。
 〝救世主〟と言われているけれど、まるで子供のようだ。
 まあ、俺が言えたもんじゃないけど。
 それでも、丹恒を始め列車のみんなのおかげで常識とか色々身に着いたけど。
「何か言いたいことでも?」
「ううん。常識って大切だなって思っただけ」
「どういう意味?」
 彼は本当にわかっていないようで、不思議そうに首を傾げている。
「まあまあ。さっさと終わらせて帰ろう。俺は帰ったら、丹恒にぎゅってしてもらうんだから」
「待ってくれる人がいるっていうのは」
「ん?」
「心持ちが、違うのかい?」
「違う。早く会いたいから、頑張ろうって思える。それに」
「それに?」
「なるべく怪我なく帰ろうって、思うんだ」
 採取したものを光に透かし、鮮度を確認する。ついでに虫がいたので、捕獲。
……
「ファイノン?」
 ちょっとだけ複雑そうな表情をしている。
「なるほど。うん。ありがとう」
「どういたしまして?」
 話が終わったので、素材を収集し終え足早にオクヘイマへ。
「丹恒~!」
「こら。飛びつくな」
 とは言いつつも、きちんと支えてくれるのが丹恒だ。
「ぎゅってしてくれる?」