2025-03-20 03:03:18
1239文字
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お見舞い / 龍+劍

龍宿が大怪我をして寝込んでいる劍子のお見舞いをする小話。

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古塵と話す龍を見てみたいし、劍子を看病する龍も見たいし、吾が劍子の一番な龍も見たいし、モテモテの劍子も見たいしetc…と、見てみたいもの詰め込みました。

調べが甘いところがあるかもしれません…目を細めて見てください🙏

 それは、枯葉が舞う寒い日のことだった。
 客をもてなす卓上を木枯らしが撫で、傍を通った華麗な風が卓上の枯葉をさらった。
 どこでもらったのか、大怪我をして自宅の寝台に張り付いている劍子仙跡のもとに、好友の疏樓龍宿が訪ねた。
「やれやれ。汝も心配が尽きぬな」
 龍宿は寝台の傍に立掛けられた古塵に声をかけた。
 かたかたと揺れて返事をしてみせた古塵の向こうに、気の抜けた主人の顔が見えた。
 外傷はだいぶ治ったらしく、あとは安静にするだけと寝台に張り付かせたのは、この男に恋情を抱く者だった。
 その者は買い出しに出掛けたのだろう。龍宿が訪ねた時には不在のようだった。
 龍宿は愛用の団扇を一つ仰ぎ、口から漏れる軽いため息をそれで受け止めた。
「劍子。そのまま冬を越したらどうか。吾も静かに過ごせる」
「いやだ」
 劍子は頭を左右に大きく動かした後、子犬が甘えるような目を好友に向けた。
「散歩くらいは良いだろう?」
「ただの散歩ならな。汝は猫を拾ってくる」
 そう言うと龍宿は寝台に腰掛け、布団と彼の背中の間に腕を通し、上体を起こしてやった。龍宿の柔らかく絹のようなもみあげが劍子の頬に当たり、くすぐったそうだった。
 
 寝台脇の卓上には、客家擂茶はっかれいちゃが入った器が用意されていた。煎じたのはこの疏樓龍宿だった。頃合いを見て飲ませようと用意していたのだ。
 龍宿はまだ身体に力の入らない劍子を支えながら、空いた手で器を持ち上げた。
「俺が猫になるか」
 病人の舌にはまだ熱い茶に息を吹きかけて冷ます龍宿の首元で、劍子がそうぼやいた。
「ほう。吾の茶の相手は猫になるか」
「あつっ」
 口を開いたならついでに飲めと言わんばかりに、龍宿は器を劍子の下唇に少し強めに押し当てた後、少しずつ飲ませた。力強く喉仏が上下していた。あと数日すれば、この男はまた古塵を背負い、武林の地に繰り出すのだろう。
 嚥下する音を微かに肩に感じながら、訪ねた折に古塵に放った言葉を龍宿は思い返していた。
 
 劍子が飲み切ったのを確認した龍宿は器を卓上に戻し、ゆっくりと上体を寝かせ、仕上げに掛け布団を顎が隠れるところまで掛けてやった。
 空いた器を片手に立ち上がった龍宿に向かって、劍子が慌てて枕元から呼び止めた。
「龍宿、冗談だよ。猫の姿になったら茶が飲めん。」
「はっ、残念だ。鼠を連れてきたら、ツケは考えておこうと思っていたのに」
「それは勿体無いことをしたな」
「ははは!」
 おかしかった。龍宿は久しぶりに聞く好友の冗談に、とうとう笑い声が出てしまった。
 この男の心配が尽きないのは龍宿も同じだった。
「汝の散歩の道が宮燈幃ならば、ツケは考えておこう」
「一番に行くよ」
 
 龍宿は劍子に背中を向け、出口へゆっくりと足を運ぶ。機嫌良く団扇を仰ぎながら句を詠みあげた頃には、龍宿の姿は部屋から消えていた。
 寝台の上で、劍子は龍宿のそれに応えるように句を詠み、目を瞑った。