どうやら今日は南蛮ではお世話になっている人にお菓子を贈る日ということで、今日の六年生の午後の授業は食堂を貸し切ってのお菓子作りだ。
今日の授業の教師である食堂のおばちゃんが授業で作るお菓子の作り方の紙を渡していく。
色んなお菓子があるみたいだけど…僕の不運が発動しないで上手く作れるお菓子はあるだろうか。僕がそんな事を悩んでいると、隣に座っている留三郎が話しかけてきた。
「伊作は何を作るか決めたか?」
「まだ決めてない…」
「俺はこれ作るんだが、いっしょに作らないか?生地混ぜて焼くだけだし」
留三郎はけーきと書かれた紙を見せて言う。
「これなら僕でも作れそうかも!僕も留三郎といっしょにけーき作ろうかな」
数時間後。
「「出来た!」」
僕が生地を混ぜて、留三郎が焼くという分担作業で、綺麗なけーきが完成した。
無事に丸評価をもらい、作ったけーきを見つめる。
「留三郎はたくさん作ったね」
「うちの委員会は力仕事が多いだろ…?いっぱい甘い物がいるかなと」
「なるほどね…」
せっかく作ったけーきだ。一人で食べるにはもったいない。他の皆も委員会の後輩や先生にあげようかなと話をしていたり、お互い作ったのを交換してたりと楽しそうだ。
「僕も委員会の子達と食べようかな」
「伊作、気をつけて運べよ」
「わかってるよ!」
わかってても転ける時は転けるんだよなーと思いつつ、食堂を出て医務室に向かう。
慎重に歩いて医務室に辿り着いた。けーきを落とさないように扉を開くと、そこには…
「やぁ、久しぶりだね」
「雑渡さん?!なんで此処に…ってうわっ?!」
雑渡さんが居た。びっくりした衝撃で足がもつれて前に転ける。
「…おっと、大丈夫?」
「すみません、助かりました」
雑渡さんが僕の体を受け止めてくれた。けーきも少し崩れたけど無事だ。
「相変わらずだね、君は」
「此処に来るまでは何もなかったので油断しました…」
「ところでこれは…」
雑渡さんがけーきを丁寧に床に置く。
「今日の午後の授業で作ったんです!委員会の子と食べようと思ってたんですけど…雑渡さんも食べます?」
「それなら頂こうかな」
お茶を淹れて二人でけーきを食べる。
「雑渡さんは今日はどうして此処に…」
「やっと戦が一息ついてね、久しぶりに顔を出そうと思って。それと…」
「それと?」
「伊作君が来る前に伏木蔵君が来てね」
「伏木蔵が?」
「私が医務室の前に居たら…」
「あーこなもんさんだ。お久しぶりです。医務室に何かご用ですか?」
「久しぶりに皆の顔を見たいと思ってね」
「なるほどーこなもんさん、今お時間あります?」
「あるけど、どうしたの?」
「実は今から補習授業があって…今日の当番は僕と伊作先輩なんですけど…先輩が来るまで此処でお留守番してくれませんか?ついでに僕が補習に行ったことを伝えて下さい」
「…って感じで伝言されたらから医務室の中に居たんだよ」
「伏木蔵~!雑渡さんになんてことを…」
「でもまぁ、伏木蔵君には感謝かな。こうして伊作君と二人きりで過ごせて、美味しい甘味を食べることが出来たし」
雑渡さんはそう言うと僕にもたれる。
「~っ!」
急に距離が近くなったのでビックリする。
「ねぇ、これ全部食べていい?」
「別に良いですけど…」
「今日は南蛮ではお世話になってる人に贈り物をする日じゃない。それで部下達が私に贈り物をひっきりなしに持ってきてね。みんな家族に渡せば良いのに…毎年貰うの申し訳ないから逃げてきたの」
「相変わらず慕われているんですね」
「お返しする側ことを考えて欲しいよ、全く…」
僕、雑渡さんにけーき食べませんかって言ってしまったけど、迷惑だったんじゃ…
「伊作君、余計なことをしたって考えてるでしょ。迷惑じゃないから安心して」
「雑渡さん……」
「ただ、ね」
雑渡さんは少し笑って、僕の耳元で囁いた。
「贈り物を貰ったら返すのが礼儀でしょ?私からのお返し期待してていいよ?」
「……えっ?あっ……」
言葉の意味を理解した僕は顔が真っ赤になる。そんな僕の様子を見て雑渡さんが笑った。
「ふふっ。伊作君、顔が真っ赤だねぇ」
「……もうっ!からかわないで下さいよ!」
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