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やまだ
2025-03-19 22:41:29
1815文字
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刀剣乱舞
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長義の練習〜と手合わせの練習
木刀で加減なくぶん殴られたこめかみが割れたらしかった。ぐるっ、と慣性に従って流れる視界に赤が散る。
意識が飛ぶ前に大きく踏みこんだ脚で上半身を支え、山姥切国広は歯を食いしばった。ばきんと鳴ったのが奥歯かこめかみの傷かわからない。考えるより早く、振り上げた木刀が追撃をかろうじて弾いた。
舌打ちの聞こえるほうへ体を回す。
山姥切長義が斬れるような目つきのまま間合いをとろうとしている。
「山姥切」
「
……
何かな? 偽物くん」
「いい手だった。真剣であれば折れていたかもしれないな」
道場の床に吐き捨てた唾には、血と白っぽいかけらが混じっていた。どうせ手合わせが終わればなかったことになる傷だ。折れさえしなければどうとでもなるし、山姥切国広の本科はそこを見誤るような刀ではない。
「偉そうに
……
少し修行をしたからと言って、まさかそれで俺より強くなれたとでも?」
「そんなことは思ってないさ。ただ
……
」
「なんだよ」
自分を、山姥切長義より弱いと思ったこともない。
逆袈裟で打ちかかった木刀を山姥切長義は当然のように前へ跳んで避けるが、二の太刀の残る相手の懐へ向かって飛びこむ決断力と胆力は誰もが持ちうるものではないのだ。研ぎ澄ましたはがねのような目のまま簡単にそれをやってのけるのが、山姥切国広の本科だ。
低い位置から伸びる手に利き手を掴まれそうになる。それを嫌がって歪んだ山姥切国広の太刀筋は、山姥切長義の前髪を掠めて過ぎた。ここからさらに手首を返すには体勢が悪い。すでに山姥切長義は山姥切国広の股下に一歩を踏みこんでいる。
「あまり俺を舐めるなよ」
足払いと同時に顔面を鷲掴んだ手が山姥切国広を床へ叩きつける。起き上がる前に山姥切長義の踵にみぞおちを踏まれた。込み上げてくる酸っぱいもので喉が焼かれる。
黙って山姥切長義を見上げていると顔の横に木刀が突き立った。
「さっきも今も綺麗に一撃もらったっていうのに、俺を誉めてる場合か? どうして偽物くんはそんなに余裕があるのかな?
……
俺は手合わせのためにここにいるんだ、時間を無駄にさせるな。少しは楽しませてみせろよ」
目を眇めて、忌々しげに、山姥切長義は山姥切国広を見下している。冷え冷えとした視線を、きっと以前の山姥切国広であれば正面から受け止められなかった。
だからこれは決して無駄などではなく、意味のある対峙だ。山姥切国広は自身の変化を実感できている。そうあれることにふかぶかとした充足があった。
「山姥切。俺はおまえの偽物じゃない」
「
……
うるさいな。俺は楽しませろと言っているのだけどね」
みぞおちにかかる重みが増す。逆流する胃液を口角から垂れ流しながら、山姥切国広は慎重に呼吸を整える。
無様な笑みを、彼の前に晒すわけにはいかない。
「
……
山姥切長義、俺をよく見ろ」
「
……
は?」
「俺は、山姥切国広は、おまえに全力で頭を殴り飛ばされたのにぴんぴんしているぞ。今も、いつおまえの足を掴んで投げ飛ばそうかと考えているぞ」
山姥切国広が左手で掴んだ足首は腱が起きて緊張していた。右手は使えない。木刀を握っている。
「なあ山姥切」
笑顔のまま山姥切国広は片頬をさらに引き上げた。
「
……
舐めているのはどちらのほうだ?」
山姥切長義の木刀に瞳を抉られるより早く、山姥切国広は腹の上の踵を右手の獲物で叩き壊した。
支えを失った体がよろめいて離れるあいだに起きあがり、木刀を両手で構えなおし、脇を締める。山姥切国広は斬り下ろすよりも横へ払うほうが好きなので、木刀は肩の高さで刃を寝かせている。
勝てるかどうかはわからない。だが負ける気もしない。
なぜなら山姥切国広は山姥切長義にとって、伯仲の出来と評されるほどの写しだからだ。
「仕切り直しといこう」
切先の向こうに山姥切長義がいる。彼は中段に構えてじっと山姥切国広を見据えている。先ほどまでの抜き身の刃じみた視線ではない、澄んだ沼の水底を覗きこむような目だ。どことなくいとけなさすら感じられる。
やがて彼はにこりと獰猛に微笑んだ。
「
……
ふうん」
山姥切長義は利き足の踵が砕けている。山姥切国広は頭蓋が割れている。だが両者とも、木刀を握る手になんら支障はないのだった。
「今度こそ俺をちゃんと楽しませろよ」
山姥切国広はにやっと笑って腰を落とした。
「
……
望むところだ」
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