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望月 鏡翠
2025-03-19 12:02:59
952文字
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日課
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#1663 「同等」「木の香」「遥か」
#毎日最低800文字のSSを書く/三題噺
香辛料は同等の金と交換することができる。
そういうとものすごくロマンがあって金持ちになれたような気持ちになる。
実際流通や商売の話はそこまで単純ではないのだが、夢がある話だ。袋いっぱいの胡椒をつかんで戻ってくれば、金持ちになることができるかもしれないと、この言葉を聞いてそんな風に夢を見ているのだろう。
そこまで考えて、俺は唇に皮肉な笑みを浮かべた。
考えが甘い。袋いっぱいの金貨では暮らしていけないし、金は重く胡椒は軽い。同等も重さは同等の量ではない。大体、香辛料をとりにいくまでの遥かな道のりにかかる経費の問題を考えていない。
その場で拵えた木箱からは、まだ真新しい木の香が漂っている。いっぱいの胡椒も、果たして重さに換算したらどのくらいの量になるのやら。
塩水に浸かって台無しになってしまわないように、木箱の中身は更に帆布で巻き、油紙で包んである。それでも嵐に会えば、品物が駄目になってしまうことはある。値が下がった胡椒は貧乏人に売り、何とか赤字にならないようにする。
船倉に積み上げられた荷物が、一年の収入になる。売れた金から、船の代金や溜まっているツケ、知り合いからの借金を返し、残った金が自分の財産だ。
馬車馬のように働く必要はなくとも、せめて三年に一度は危険を犯して旅にでなければ暮らしていけない。
命の危険が伴うし、きつい仕事だ。
一年の半分は船の上にいるから、陸地に登ると足元がおぼつかなくなる。
おそらく船を何艘も所持して、交易を途切れず続けて流通を安定させるくらいの財力がないとの仕事は向いていないのだ。そして、そういう連中が流通量を増やして価格を崩す。きっともう直ぐ今ほどは稼げないようになる。
だから、この仕事は今回限りでおしまいにすることにしていた。収入を元手に新しい商売を始める。
胡椒の価格がまだ値下がりしていないことを願うばかりだ。
そして次の商売の元手を手にいれるためには、必要なことがある。まだ見えぬ港を探す。取り分を増やすためには、乗組員と彼らに払う給料を少しでも減らしておきたいのだ。
何人か減らし、残りは陸に降りてから減らそう。
銃の火薬もまた、水に濡れてしまわないように大切に懐に仕舞い込んであるものだった。
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