昼間の酷暑を忘れるように、日が暮れてからの風が冷たい。秋の気配が迫りつつあることを感じながら、秋服を探して衣裳箱を目立つところに引っ張り出しておいた。しまいっぱなしにしておいたから、使う前に陰干ししないとクローゼットの匂いが染み付いている。
防虫剤も取り替えた方が良さそうだった。
きっと明日のなったら昼間の暑さにかまけて、肌寒さを感じていたことなど忘れてしまうだろうし、本当に寒くなってから慌てて用意する羽目になるのだ。
夜の秋くらいの頃に、支度をしておくのが良い。
朝、目を覚ます頃にはとっくに日が登り、地面をジリジリと照らしている。昼間と遜色ないくらい暑く思えるが、こんなものはまだ序の口で、昼になったら更に灼熱になることが約束されている。
朝の間に、外で体を動かす仕事を済ませてしまわないといけなかった。夏場の日差しで勢いを増し伸び放題になっていた樹勢を整えるのだ。切り取った枝は乾かしてから、庭の隅で燃やしてしまおう。
庭に鎌を並べた。
杖を手に取して、指揮者のように構える。並べた鎌が浮かび上がる。くるくると回転しながら、枝葉を切り整えていった。
一通り作業が終わり、鎌を慎重に地面に下ろすと後ろからパチパチと拍手の音が聞こえた。
「起きてたの」
「起きてたし、陰干しもしておいたよ」
使っていない座敷に、昨日干そうと思っていた衣類が一通りかかっている。
「ありがとう。とってもとっても助かった」
気だるげに柱にもたれたまま、感謝の言葉があまり響いていなさそうだった。
「君の魔法、久しぶりに見た」
「たまには魔女らしいところも見せないとね。面倒な仕事は早く終わらせてしまいたいし」
こんな炎天下で外で作業していたら、日に焼けて顔が真っ黒になってしまう。例えば風を扱う魔法だったら庭の掃除が簡単だし、洗濯物も早く乾くかもしれない。
火だったら、料理のときに便利だし、今でた剪定のゴミだって直ぐに燃やせてしまう。
しかし刃物の魔法というのは困りもので、日常生活ではなかなか使い所がない。みじん切りが簡単になるくらいだ。得意料理はミートソース。
使ってあげないとしまいっぱなしの鎌と同じくらい魔法の腕前だって錆びついてしまう。
これでも戦場では大活躍だったのだけど、世の中が平和になって刃物の魔女は少しだけ寂しかった。
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