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むり川
2025-03-18 21:17:45
1774文字
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すいも、あまいも。
高校生沖田×社会人信長(FGO) 過去作サルベージ
煙草のはなし
【すいも、あまいも。】
よく晴れた夏の日の午後。
部活を終えて、下宿先のアパートへ、てくてく歩く。左手に下げた買い物袋が重たくて、何度か持ち直した。学校でシャワーを浴びたのに、もうシャツが汗で張り付いていて気持ちが悪い。夏は苦手だ。ムシムシするし、元気がなくなる。
なので、今日の夕飯はカレーにすることにした。同居人がなんと言おうと絶対にカレーだ。暑くてへとへとに疲れた日には、カレーがいちばん効くのだ。美味しいし、その後2日はカレーだけで凌げる。一日目は普通に食べて、二日目の昼はお惣菜のカツを入れてカツカレー、夜は出汁を入れてカレーうどんにするのだ。
「またそれかぁ」と言って顔を顰める同居人の顔がありありと脳裏に浮かんで、沖田の足取りが若干軽くなった。
おんぼろアパートの階段を上る。
日はもうだいぶ傾いていて、雲ひとつない空をオレンジ色に染め上げていた。
綺麗だなあ、なんて呑気に思いながら、ガチャガチャと鍵をひねる。
「戻りましたよ~っと」
返事はない。怪訝に見下ろした玄関先には、赤いスニーカーがひと揃え。
思い当たる節があって、沖田は静かに息を吐いた。また彼女の悪癖だ。
靴を揃えて廊下に上がり、買い物袋を台所の床上に放る。立て付けのあまり良くない襖を開けると、ひんやりと冷房が効いていた。部屋を挟んで向かい側に、狭いが外に出られるベランダがある。彼女はやっぱり、そこで煙草を吸っていた。
「もう、またタバコ」
「おう沖田、帰ったか」
ガラリとガラス戸を開けて声をかけると、ちょうど一本吸い終えたところだったのか、灰皿に燃えさしをぐりぐりしながら、信長は笑った。
煙たさに、沖田はあからさまに嫌そうな顔をした。それを見て、信長はますます愉快そうに笑う。
「身体に悪いって言ってるじゃないですか」
「なにを。好物をやせ我慢する方が身体に悪い」
「屁理屈ばっかり」
歳のわりに小さな身体を、部屋の中へ引っ張り込む。外はまだまだ暑かった。彼女の腕もじんわりと熱くて、すこし湿っぽい。
戸はすぐに閉めたけれど、やっぱり少しだけ、煙が屋内へ滑り込んでしまった。
「くっさい!もう!だから家で吸うの、やめてくださいって言ってるのに」
ぷりぷり怒りながら、再び台所へと戻る。廊下に放置していた袋から、カレーの材料を一つひとつ取り出して、狭い調理台の上に乗せてゆく。それを見て、今度は信長が顔を顰めた。
「おまえ、またカレーの三段活用か」
ふふん、と、沖田は得意げに鼻を鳴らした。文句があるなら食べなくていいですよ、と言いながら、早速野菜の解体に入る。
働かざるもの食うべからず。この世は常に、台所に立つものが最もえらいと決まっているのだ。制服の上にお気に入りのエプロンを掛けて、沖田は包丁とまな板、鍋、ボウルをガチャガチャ取り出すと、これらもぎっしり調理台に並べた。
「ノッブ、玉ねぎ剥いてください」
「え~」
「え~じゃなくて」
しぶしぶと、信長は沖田のとなりに並んだ。
取り分けられた玉ねぎを見て、手に取ろうとし、ちょっとだけ考えてから、その小さな手を引っこめる。そのまま沖田の手に握られていた包丁をやんわり退けてまな板の上に置き、反対の手で、彼女の制服の襟元を掴んだ。
「ノッブ?」
「その前に、口直し」
あ、と思った次の瞬間には、引き寄せられていた。やわらかくくちびるが合わさる。びっくりして固まる背中を、優しく手のひらが撫ぜた。そうしているうちに身体のちからが少し抜けて、自分のものじゃないような感覚になってくる。
息継ぎしたさに口を開けると、間髪入れずに、するりと舌が割り込んだ。
「
……
ふ」
やはりというか、煙草の苦味に眉を顰めた。逃げようとすると追いかけられて、無理やり表面を擦られる。
背中を撫でていた腕はいつの間にか頭の後ろを押さえていて、余計に身体が密着していた。
身体があつい。
唾液をのむ。
歯列をなぞり、歯茎を舐めて、最後にちゅ、と音を立てて舌を吸う。
そうして離れてゆくくちびるを、沖田は思わず追いかけた。柔らかくかたちのよい下唇を食み、つるつるした前歯を割って、舌を差し入れる。
ああ、今度はちょっとだけ、甘い。
そんなことを思いながら、ふたりは夢中になって、口を吸った。
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