りっつぁ
2025-03-17 22:13:18
3864文字
Public ホーデュ
 

いいとこセフレだと思ってたホと最初からド本命だと思ってたデュのホーデュ

タイトルどおりの話です。
ED後、たまに会ってるうちに体の関係になっちゃった二人。
ぐだぐだホちゃんとよしよしデュくんです。私が大好きなやつです!!!
デュに「お前がいるのに」って言わせたかっただけの話でもある。

 意外とモテるのも知ってるし、良いところのお嬢さん方の花婿候補として目を付けられているのももちろん知ってる。そして、オレがそのあたりのことに口出ししたいんだったら慎重に、あくまで押し付けがましくなく、さり気なくやらないといけない。よくわかっているのに、今夜はそれがどうも飲み込みづらい。
「なーんか、ムカムカするんだよなぁ」
「んだよ、もたれてんのか? もっと飲むか?」
「その流れで飲まそうとすんのおかしいでしょ」
「あれだ、迎え酒」
「二日酔い限定の話じゃないのかそれ。それにさ、なんていうかなぁそういう即物的なことを言ってるわけじゃないんだよ」
「じゃあなんだってんだよ」
「なんでもなーい」
 差し向かいに座るデュランは、そのふざけた言動のわりにはグラスの中身の減りが遅い。きっと、彼もこの後のことに期待しているから。
 旅仲間じゃなくなってからもたまに会えるだけで上出来だった。我慢しきれず手を出してしまったときはさすがにもう終わったかと思ったけど、すごい剣幕で怒られただけで友達辞めるとまでは言われなかった。そして、今もこうしてオレの部屋にまで連れ込まれてくれている。こんな無防備な、多少の無茶だったら許してくれそうな顔をして。オレの願望による脚色も入っているとは思うけど、とにかく現状でも望外というか、これ以上何か望んだらバチが当たりそうなのに。人間っていうのは良くも悪くも慣れてしまうものだ。
……やっぱり、なんでもなくない」
「あ? 何が」
「さっきの、迎え酒の話」
「おー」
 わかっているのかいないのか、デュランは生返事をしながらオレのグラスに酒瓶を傾けた。注がれた酒を一息に呷る。
「もったいないことしたんじゃないか。昼間の、あのお嬢さん」
「昼間の……? 何で今だよ」
「すーごいきっぱり断ってたからさ」
「その気もねぇのに相手する方がまずいだろうが」
 ぼんやりと緩んでいた彼の目つきが、胡乱げに細まる。確かに理由になってない、どうして今になって蒸し返すのか。
 別に、取り立てて何かがあったわけではない。昼間、サルタンからナバールに向かう道中で、魔物に襲われていたキャラバンを助けた。たまたま同行していた商人達の長の娘が、デュランをいたく気に入ったというだけ。彼女が感謝の言葉と一緒にふんだんに振りまいた秋波もこの朴念仁には全く通用せず、礼をしたいからと家に招こうとしてもけんもほろろに袖にされ、さくっと立ち去ろうとする彼を名残惜しそうに見送っていたのは少しばかり可哀想だとすら思った。でもダメだ、ああいうのを見せつけられると、心がガサガサにささくれ立つような気がする。だって、オレが彼女達と同じ土俵に上がれることなんて、一生無いかもしれないんだから。
「羨ましいなぁ。その気もないのに向こうから言い寄られて困るとかさ、人生で一度は言ってみたいやつじゃん」
「言ってねぇし」
「見合い話も断りきれないくらいあるんだろ」
「そんな数ねぇよ。断ってもすげぇ粘ってくんのがいたってだけだ」
「そうだっけ? いたってことは解決したんだ?」
「ああ。オレ通り越しておばさんに話持ってこうとしてたのやめさせたら、もういいって逆ギレされた」
「本人に言ったの? そりゃきっついな」
「家同士で話するみたいになると時間もかかるしややこしいんだよ」
「ふーん……でもさぁ、キミが直接会っちゃうと変に希望持たせちゃったり勘違いされたりしそうじゃない? それに、上手くすれば玉の輿なのに」
 ああ、男にこの言い方はおかしいんだっけ。取り繕うように付け足してみたって、どうしても声が尖っている。やっぱりこんな話するんじゃなかった。余計なこと言わなけりゃ少なくともやることはやれただろうけど、それだけじゃもう嫌だなんてこんなにはっきり自覚したくなかった。笑ったつもりで引き攣っただけの口元に、グラスを近づける。
……なんだお前、拗ねてんのか」
「拗ねてない」
「なんもねぇし、なんかする気もねぇよ。お前がいんのに」
 呆れたような、泣いている子供を慰めるみたいな、柔らかい声。でも、何それどういうこと。言われたことを噛み砕いて舌の上で転がして、酒と一緒にごくんと飲み下した。
…………え?」
「は?」
 数秒間の空白。きょとんと見開かれていたデュランの目が、みるみるうちに翳っていく。
……なんだよ。その気はねーってことか」
「え、何、え、っと、ちょっと待って、」
「お前がそういうつもりじゃなかったんなら、オレだけ馬鹿みてぇじゃねーか」
 そういうつもりってどういうつもり、だからちょっと待ってってば。頭は空回りして、俯く彼を目の前にしてどんどん焦る。だってさっきはちょっと笑ってたのに、あんなに優しい顔してくれることなんて滅多にないのに。胸がぎゅーっと締め付けられるような感じがする。
「ごめん、オレさ、えっと、」
「遊びのつもりなら最初っからそう言っとけ」
「いや初手からその宣言しちゃうのはどうかな」
「やっぱりか」
「待って違う違う、だからさ、……
 言葉が喉でつっかえる。乾いた唇を舌で湿らせた。
……オレってそういう、理由になるんだ。見合い断ったりとか、そういうことの」
「別に口実にしてたわけじゃねぇよ」
「うん、でもさ……そんな、先のことまで考えてくれてると思わなかったから」
……あのな。お前がどうかは知らねーけどよ、オレは、……その場限りとか次までの繋ぎにとりあえずとか、そんなん出来るほど器用じゃねーんだよ」
「だろうね」
「しかもそれで、……ねーだろ。野郎に抱かれて黙ってるとか」
「あー、そのちょっと恥ずかしそうなのエロいから下向かないで」
……やっぱ今の言わなかったことにしていいか」
「ごめんって、茶化したいわけじゃないんだよ。ただちょっと……だってさ、オレだよ?」
「だったらなんだよ。他のヤツにはこんなこと言わねーし、好き勝手させたりしねぇよ」
 まともに目を合わせていられない。どうしよう、嬉しいかも、すごく。生まれも育ちも背負うものも全然違うから、いつか道を違えるもんだとごく当たり前に思っていた。彼の未来のほんの隅っこにでも居座って、たまに思い出してもらえればそれでいいなんて殊勝な心づもりをしていたのに、隅っこどころか隣にいてもいいんだって。緊張してどこかに吹っ飛んでいた酔いが、今になって戻ってきた。
……うん、わかった」
「なにニヤニヤしてんだよ」
「だって、……なんだろ。安心した、のかな」
……テメェはそれでいいかもしれねぇがなぁ、こっちはどうしてくれんだよ」
 え、怖い。いきなり管を巻いて絡まれたと思いきや、デュランもにやりと唇を歪める。
「まさかなぁ、ちょうどいい相手見つけたら捨てるようなヤツだと思われてたとはな」
「オレからフェードアウトするつもりではいたよ? 結果的に捨てる感じにはなったかもしれないけど」
「それで納得するクズ野郎だと思われてたのも気に食わねぇ」
「もー、オレが悪かったって」
「口先だけならなんとでも言えるわな」
「じゃあどうすりゃいいんだよ」
「自分で考えろよ。せいぜい機嫌とってみな」
 半分冗談みたいな掛け合いの中で、彼の目だけがぎらりと光る。出来るもんならやってみろって、そそのかすみたいに。立ち上がって、小さなテーブルの上に身を乗り出した。デュランの顎を指で掬い上げ、唇を合わせる。擦り付けるみたいに表面を触れ合わせて、軽く吸い上げた。ぷちゅ、と間抜けな音がする。
「こんなんでご機嫌取りになるとは思わないけど、したくなっちゃって」
……そうかよ」
 満更でもなさそう。もう一回キスしたら、今度は少しだけ口を開けてくれた。前言撤回、満更じゃないどころかすごい乗り気。舌を滑り込ませると、すぐに彼の舌が伸びてくる。混ざり合う唾液は、酒の味も混ざって少し苦い。上顎の窪みを舌先でくすぐると、鼻にかかった声を漏らして身じろぎをした。息継ぎのついでで唇が離れる。とろんとした瞳に見上げられて、腹の底からなんだかよくわからないものが込み上げた。苦しくてむず痒くて、なんかもう、堪らない。
「デュラン」
……ん」
「好き。好きすぎて頭おかしくなりそう。ねぇ、オレのになって」
 鼻先が触れ合いそうな近さで見つめ合って、ここで頷いてくれたらものすごく可愛いと思ったんだけど、コイツが相手だとそうもいかない。デュランはぽんとオレの肩を押し返し、いかにも意地が悪そうに片頬を上げた。
「ちげーだろ。お前がオレのもんなんだよ」
…………もう、何それ、もー! やだ!」
 どかっと椅子に腰を下ろすと、おかしくてしょうがないみたいな笑い声が追いかけてくる。
「嫌かよ」
「やじゃないよキミのでいいよ! ずるくない? なんでそんなかっこいいの?」
「だったらいいじゃねーか」
「いいよ大歓迎! でもちょっとくらいはかっこつけさせてくれてもいいんじゃない?」
「かっこつけりゃいいだろ、この後」
「えー、……多分もっと無理」
……じゃあ、しねぇのか?」
「するよ! ほんと、そういう顔すんのもずるい」
 すごく、すごくすごく負けた気がする。でもいいや、好きだから。どうやってベッドに引き摺り込むかとか、いろいろ考えてた気もするんだけど全部忘れた。手を引いたらちょっと恥ずかしそうに握り返してくれたから、もうなんだっていい。