やごろく
2025-03-17 09:02:00
1736文字
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交換しない交換日記(仮)

レカペで出せたらいいな〜〜〜と思っている信洛の冒頭です!!!絶賛引っ越し作業中なので、間に合うように応援してください!!!

◇◇◇

 日記なんてものを書くのは初めてだから、緊張する。しかもペンを持ってるのが魚蛋妹だと思うと、尚更だ。でもこれが魚蛋妹の文字の勉強の役に立つなら、俺は嬉しいよ。───もっとゆっくり?もしかして、今俺が言ったことも全部書いてるのか?……魚蛋妹は真面目だな。

 さて、何を書けばいいやら……とりあえず、今日あったことでも書いておこうか。今日は朝から水運びをして、昼からは弁当の配達、夕方になった頃にガスボンベを運んで、今は日記をつけてる。それだけだな。……魚蛋妹、そんな目で俺を見ないでくれ。悪かった。これじゃあ、文字の勉強にはならないよな。でも、本当にそれだけなんだ。今日は一日中ずっと仕事ばかりしてた。
 昼飯?昼飯は信一と食べたな。……魚蛋妹、人にペン先を向けると危ないぞ。でも、なるほど。確かに魚蛋妹の言う通りだな。咄嗟に出てこないだけで、案外色々やってるもんだ。そうそう、水の配達の後に、信一と一緒に馬仔を食べたんだ。
 馬仔は配達先の爺さんから貰った。少し多いなと思ってる所に、信一が来たんだ。ほら、前に俺が凧を揚げてた場所があるだろ?俺が城砦に戻った晩に、魚蛋妹とばったり会った所だ。あの場所が丁度近くにあったんだ。風通しも見晴らしもいいし、折角だからそこで食べようって二人で話して、柵にもたれかかりながら食べた。

 ……信一と?そうだな、最近はよく会ってる。城砦を取り戻してから、信一は前よりもずっと忙しくなっただろ?特に最初の一年なんか、寝る時間も碌に取れない有様だった。あんまりずっと働くもんだから、俺が無理矢理寝かしつけてた頃も───ああ、すまない。話が逸れたな。
 そんな信一を一人にしておくのは、どうにも不安だったんだ。勿論、信一には舎弟だって沢山いるし、城砦の皆も信一の味方だ。みんな信一を頼りにしてる。頼りにしてもらえるってのは幸せなことだ。……でも、それが辛くなる時だってある。龍兄貴がコツコツ積み重ねてきた信頼を、ある日突然背負うことになったんだ。
 部屋の模様替えから新しく引く水道管のことまで、昔ならまず龍兄貴に相談してただろ?あれは龍兄貴が賃料を回収する大家だから、ってだけじゃない。龍兄貴は城砦の全てに関わって、管理してた。住民の訴えを聞いて、城砦で起こる問題に対応してた。賃料に見合う仕事をしてたから、皆に信頼されてたんだ。……勿論、おっかない黒社会だから、ってのも大いにある。魚蛋妹、お前が知ってる黒社会がどんなに善い奴に見えても、そこだけは忘れちゃ駄目だ。城砦の綺麗な金も汚れた金も全部、最後は龍兄貴の所に集まる仕組みになってた。金に変わるんだ、何もかも……すまない。そんなこと、魚蛋妹は身に染みて分かってるよな。嫌な話をして悪かった。

 で、……龍兄貴が死んで、その地位は信一に受け継がれた。それで、龍兄貴がやったのと同じように、信一も一つずつ信頼を積んでいったんだ。最初の頃は反発する住人もいたが、今は皆信一に相談するようになった。でもな、何かを決断するってのは、どんなに小さなことでも体力がいるもんだ。城砦中の決断が信一を待ってるんだから、そりゃ疲れるに決まってる。
 しかも、あの信一だぞ?……ふふ、魚蛋妹。「ちゃらんぽらん」は言い過ぎだ。でも、元々の信一は格好つけで、酒癖が悪くて、もっと身軽な奴だろ?今は相当無理をしてる。俺は、信一は黒社会のボスじゃなくて、それこそカラオケ屋の店主なんかになった方が楽しく生きられるんじゃないかと思ってるんだけどな。まぁ……あれで情に厚い奴だから、とてもそんなことはできないんだろう。
 だから、俺は信一がどんなに忙しそうでも、何日かおきには必ず会いに行くようにしてるんだ。弁当を持って行ったり、預かった家賃を届けたり、色々と口実をつけてな。あまり頻繁に会いに行くのも迷惑かとは思うんだが……まぁ、それでもアイツが倒れた時は、すぐに見つけてやりたいからな。

 一日分の日記としては、このくらいで充分じゃないか?何、まだ?あともう一つ?魚蛋妹は厳しいな。あと一つ絞り出すとすれば、そうだな……あぁ、そういえば。
 
 ───配達先で薔薇の花を貰ったな。一輪ほど。